表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明智さんちの旦那さんたちR  作者: 明智 颯茄
最後の恋は神さまとでした
360/962

お前の女に会わせて/2

 コンピュータ制御が主流の神界で、サブの世界である地球に、用のある神さまなどそうそういない。そうなると、今もそばにいるであろう、蓮の友達ということになる。が、彼女の理論だった。


 人間としてではなく、大人として、一応妻として、男性神に改めて頭を下げた。


「いつも蓮がお世話になってます」

「いいえ、こちらこそお世話になっています」


 次々に、倫礼に直感が降りてきて、言ってもいないことを当て始めた。


「もしかして、名前は焉貴さんですか?」

「えぇ。なぜわかるのですか?」

「前にこんなことがあったんです」

「えぇ」


 霊感とはこういうこともあるのだと、倫礼は常日頃思っていた。


「自分が書いてる小説の登場人物の名前を思いつくと、それが……」


 しかし、感覚というものは、他の存在に伝えるのは少々難しく、彼女は口ごもってしまった。


「どうかしたのですか?」

「え〜っと、前は違う人がこの肉体には入ってたんです」

「えぇ」


 江が入っていた時の話をしようとしたが、焉貴から別の質問がきた。


「その方とはどのような関係だったのですか?」

「今は特に関係がありません」

「そうですか」


 焉貴はうなずいて、先を促した。


「私の名前がなぜわかったのか教えてください」


 倫礼は「はい」と素直にうなずくと、自作の小説に登場させた人物名の話へ戻した。


「その人の姉妹が別の宇宙であとから見つかって、その名前だったんです」


 説明をしたが、心の世界照準で話してしまい、意味がよくわからない内容になっていた。


 しかし、今日会ったばかりの焉貴でも、彼女の本当に伝えたい意味はすぐに変換できた。


(言葉だけだと不十分だけど、別の『次元』の宇宙から降りてきたってことね。そう感じるから、その意味)


 陛下が上へ上へと開拓している途中で、一番下の世界へ降りて、心をさらに磨こうとする神々はたくさんいて、その中のひとりだったということだ。


 おまけの倫礼の霊感の話はそれだけにとどまらず、


「それだけではなくて、その彼氏の苗字とその姉妹の名前になってたんです」


 彼女は知らなかったのだ。もしかしてと思い、コウに聞くと、その姉妹は降りた次元で男と運命の出会いをして、女子高校生として神世で暮らしていたのだ。


 焉貴は話を要約した。


「結婚後の名前を、会う前に予測していた、ということですか?」

「はい」


 蓮で例えれば、最初に会う前に、明智 蓮という名前を、小説の登場人物にしていたという話だ。


 おまけの倫礼はよくわかっていた。人間だけで生み出せるものなど何もないのだと。神が手を加えているのだ。だからこそ、日々の感謝は必要なのだと。


 それが一回きりなら偶然と過ごすこともできたのだろうが、彼女のまわりでは多発していた。


「こんなことがよくあって、焉貴さんの名前も、以前書いた小説に出てくる人物だったんです」

「えぇ」

「その時、何かを感じたんですけど、結局該当する人は誰も浮かばなかったんです。しかも、ずっとそんなことは忘れてました。今思い出したので、もしかしたらそうなのではと思ったんです」


 心の世界とはいつでも必然だった。思い浮かべた人の話が、グッドタイミングでもたらされる。


 話したいと相手が願えば、気になるようにできている。それが心でつながっているということなのだろう。肉体が間に入ると、途端に難しくなるようだが。


 木々の木漏れ日が、焉貴の黄緑色をした瞳に差し込み、変幻自在な乱反射を生み出す。


「そうですか。モデルの方はいたのですか?」


 ふたりの脇を、犬を連れて散歩してゆく人がすれ違ってゆく。


「はい、いました。焉貴さんが知ってるかはわからないんですけど、月主命さんっていう人です」

「そうですか」


 決めつけるのはよくないが、焉貴の脳裏にカエルを被って、ニコニコと微笑みながら生徒に大人気の教師が浮かんだ。


「その方はどのようなご職業をされていらっしゃいますか?」

「小学校の歴史の先生です」

「そうですか」


 焉貴はナルシスト的な笑みでうなずくと、一旦後ろを歩いていた蓮のそばへ寄った。


「勘いいね。俺もすごいけどさ。お前の女もすごいね」

「俺に会う前から、あぁだった」

「そう」


 盛り上がっているように見えたが、焉貴と蓮のやりとりはとても冷めたものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ