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明智さんちの旦那さんたちR  作者: 明智 颯茄
水色桔梗ラジオ: ゲスト 月命
19/962

カエルと呼ばれて

 気分が高揚するような、華々しいファンファーレみたいな音楽が鳴り、女の声が聞こえてきた。


「ご機嫌よう、みなさん。水色桔梗ラジオ、第一回が始まりました。パーソナリティーは妻の颯茄です」


 一呼吸置いて、颯茄がまたしゃべり出す。


「そして、生えある最初のゲストは、月命さんです」

「呼んでいただいて、ありがとうございます」

「我が家の邪悪担当ですからね」

「いいえ、それは少々言い過ぎなんです〜」


 月命の反論を受けて、颯茄は少しだけ笑った。


「まあ、そうですね。邪悪な感じはしないです。ただ失敗するのは大好きってところは変わらないです」

「うふふふっ」

「前置きはこれくらいにして、本題に入りましょうか?」


 颯茄が仕切り直すと、月命が困った顔をした。


「おや、僕は何かやらかしたんでしょうか〜?」

「ご名答です!」

「何ですか〜?」

「時限爆弾ケーキを回している時にですね、職業を答えたじゃないですか」

「えぇ」

「あそこで、最初『カエル女装』と言って、そのまま説明しないで話が進んでしまったんですね」

「そうですか〜」

「そうしたら、読者の方から質問が来たんです」

「何とですか?」

「どういう経緯でああなったのか、と」

「君が急いでいたから、説明を抜かしたんですよ」

「はい、重々承知してます」


 しょんぼりした颯茄だったが、気持ちを入れ替えて先に進めた。


「今日はその話をしようかと思って、ゲストに呼んだんです」

「そういうことでしたか〜」

「で、本題なんですけど、カエルの話は知ってる人は知ってるんですよね?」

「えぇ、そうです〜」

「大人ではなくて、子供の方が知ってるかもしれないです」

「僕の職場での話ですからね」

「月命さんは、姫ノかんという学園の初等部で教師をしています。そこでの話ですね」

「えぇ」

「何があったんでしたっけ?」

「僕がカエルの被り物をして、学校へ行ったんです」

「大胆なことしますよね。でも、それって訳があってしたんですよね?」

「えぇ、僕をモデルにしたキャラクターがカエル族だったんです。だから、カエルを被って学校へ行ったんです」

「生徒たちの反応はどうでしたか?」

「みんな喜んでくれて、僕は大変満足してます」

「こう聞くと、月命さんは笑いを取るのが好きみたいに聞こえるんですが、実は違うんですよね?」

「僕は生徒たちが笑顔になるためなら、何でもしますよ〜?」

「そう。教師のかがみみたいな人なんです。妻は惚れ直したわけです」

「うふふふっ」

「カエル先生と今でも呼ばれたりするんですか?」

「えぇ、時々、かぶって行く時がありますからね」

「あと、女装はどうしてですか?」

「そちらは君がいけないんです〜」

「私のせいですね。ごもっとも」


 妻は咳払いをして、話を続けた。


「別の作品でですね、月命さんをモデルにしたキャラクターが、女装をして金品を騙し取るという話があったんです」

「えぇ、ですから、僕はそちらを参考にして、オーダーメイドで女性用の服を作ったんです」

「校長先生に叱られませんか?」

「いいえ、子供たちのためならば、構わないというお考えでいらっしゃいますからね」

「先生も伸び伸びと働けるいい職場ですね」

「僕はとても幸せ者です」

「おっとっと、忘れるところだった」

「君はいつもおっちょこちょいです〜」

「女装の後日談があるんですが、本編で取り上げてもいいかなって思いますので、皆さん楽しみにしていてくださいね」


 颯茄は一呼吸置くと、エンディングテーマが小さく流れ始めた。


「それでは、そろそろお時間となりましたが、月命さん、どうでしたか?」

「僕はさっきから気になっていることがあるんです〜」

「何をですか?」

「君が僕の名前にみことをつけて呼んでいるんです〜。距離を置かれているような感じがするんです」

「すみません。ラジオってことで、ちゃんと命をつけてしまいました。これって、尊称みたいなものらしいんですよね。だから、光命さんや夕霧命さんも、私たちの間では命をつけないで呼んでます」

「人前でも、僕の名前は月と呼んでください。そうでないと、僕は君を許しません」

「怒らせると大変なので、きちんと呼びます」


 颯茄が頭を下げると、月命はにっこり微笑んで、手を振り始めた。


「それでは、みなさん、さようなら」

「あれ? 月さん、私が仕切るところですよ!」


 テーマ曲が大きくなり、やがて静寂がやってきた。

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