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明智さんちの旦那さんたちR  作者: 明智 颯茄
水色桔梗ラジオ ゲスト:明引呼
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倒れるまで

 軽快なリズムの曲が流れてくると、女の声が乗った。


「みなさん、ご機嫌よう。水色桔梗ラジオ三回目。今回はみんなの兄貴、明引呼さんです」

「おう、何かやらかすと呼ばれるって聞いたぜ」


 明引呼のしゃがれた声が聞こえてきた。


「というか、何かやらかさないとネタにならないんです」

「色々てめえも大変だな」

「ま、それは置いておいて、それではさっそくお便りを読みましょう」


 オープニングテーマが消えて、颯茄が原稿を読み出す。


「ペンネーム、あなたの奥さん、さんからいただきました」

「ペンネームじゃねえだろ。自作自演だろ」


 明引呼からさっそく突っ込みがやってきてしまった。颯茄は咳払いをする。


「いいから、いきますよ。兄貴こと、明引呼さんの仕事を教えてください」

「ああ? こんなんじゃ話すぐ終わっちまうだろ」


 番組の心配をした明引呼だったが、颯茄は気にせず先に進む。


「終わりませんよ。明引呼さんというか、あき

「いきなり呼び捨てに変えやがって、ドキッとすんだろ」


 颯茄はやってやったぜ的に微笑んだ。


「時限爆弾ケーキのところで少し出たんですが、正確に言うとどんな仕事ですか?」

「食用の肉を生産する農家だ」

「豚や牛も私たちと同じように生活してるんで、食べたら殺人になってしまうので、食用の肉が別にあって、木に実としてるんですよね?」

「おう。それを収穫して、出荷してんぜ」

「その出荷先が、デパートなわけです」

「おう。話終わっちまったじゃねえか」

 

 明引呼はこう言って、口の端でニヤリとした。妻はプルプルと頭を振る。


「いやいや、終わらせませんよ。休みっていつなんでしたっけ?」

「毎週水曜だ」

「それって、あれですよね? 姫ノ館の休みとかに大きく関係してるんですよね」

「ガキがいっぱいいるからよ。どうしたって、ガキ中心に世の中動いでんだよ。からよ、ガキどもの学校が始まる初日が休みってことだ」

「兄貴、こんな口調でしゃべってますけど、結構働き者なんですよね?」

「そっちに持ってくってか」


 明引呼は何の話をするのかピンときた。颯茄はしっかりとうなずく。


「持っていきます」

「まあな。古 くせえけどよ、がむしゃらに働くっつうのが割と嫌いじゃねえんだよな」

「孔明さんが経営に介入するまでは、実は休みもバラバラだったんです。で、そんなある日……」


 明引呼は何も言わず苦笑した。


「私の寝室で明が昼寝をしてたわけです。休みの日に。疲れてるのかなあなんて思ってたら、起き上がってきたんですよ。私の執筆してる部屋までやってきて、でも様子がおかしいんです。話もしないし、と思ったら、その場で倒れたんです」

「覚えてねえぜ、その時のことはよ」

「そりゃ、倒れるくらいですからね」


 颯茄は相づちを打って、ぶっ倒れた事件を語り続ける。


「何があったのかと思って、みんなに話聞いたら、結婚したら、バイセクシャルの複数婚ブームがお客さんに巻き起こって、商品が飛ぶように売れて、休むことが半年間まったくできないで働いてたらしいです。そりゃ、倒れますよね」

「だな」

「まあ、これを機に、孔明さんとPCに強い蓮の力を借りて、在宅勤務に業務改革したわけです」


 こうして、今の業務体系になった。日常は様々な変化の連続。颯茄は明引呼の顔を少しのぞき込む。


「その時の明の言葉を今でも覚えてます。何て言ったんでしたっけ?」

「俺って働きモンだったんだな、だ」

「倒れるまで働くんですから、そりゃそうだ。で、その後も、懲りずに休みなしで働いてたりするんです。仕事好きなんですか?」

「だろ。でなきゃ、やれねえだろ。どんな仕事でも」


 颯茄は少しだけ苦笑いする。


「で、いつも孔明さんに叱られるわけです。社長が休まないと、部下も休まないから、休めって。で、業務時間をきっちり決められて、夫の監督の元に今は働いてるわけです」

「守らねえと、あれは結構言うからよ。クールな顔して、心は熱いから怒らせっと大変だぜ」

「そりゃ、そうですよ。明を含めて、部下の人たちみんなの幸せな生活がかかってるわけですからね」

「だな。上に立つっつうのは、結構骨の折れることだ」

「でも、それをこなしてるわけだから、すごいなって思います。私は職業柄、上も下もないので、尊敬するばかりです」

「ま、これに懲りて、仕事人間にはならねえって決めたぜ」

「それならいいんです。よかった。また倒れると、私たちはいいんですけど、子供たちが心配するのでね」

「そりゃ、やっちゃいけねえことだな」

「ということで、これからもボチボチで働いてください」

「おう」


 エンディングテーマが流れ始めた。


「さて、お時間になりました」

「今日話したこれよ。本編に入れた方がよかったんじゃねえか」

「それよりも、入れたいものあるんです」

「何だってか?」

「実は、みんなの馴れ初めを書こうかななんて思ってます」

「そうなっと、あれが俺と一緒に出てくるってか」

「そうです。あの人が出てきます」


 颯茄はしみじみと語る。


「複数婚って、最初は一対一から始まるんですよ。だから、その部分を書こうかと思ってますので、みなさん楽しみにしてくださいね」

「面白おかしく書くってか」

「ただ、そのままだと物語として面白くないので、ちょっと盛ろうかなと思ってます」

「どうしやがるんだ?」

「悪が倒されてからを書こうと思ってます」


 明引呼はずいぶん長い話だと、あきれた顔をした。


「そっから書くってか」

「そうじゃないと、明と貴増参さんは、結婚してもいないのに、女性と交わってもいないのに、子供がいるっていう不自然なことが起きてしまうのでね」

「だな」

「それでは、また次回お会いしましょう」


 無事に終わりそうだったが、明引呼のしゃがれた声が入ってきた。


「最後まで丁寧語だったな。いつもは違えのによ」

「マイクまだ入ってる、明」


 颯茄の笑い声をマイクが拾うと、エンディングテーマは小さくなっていき、静寂がやってきた。

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