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明智さんちの旦那さんたちR  作者: 明智 颯茄
リレーするキスのパズルピース
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発展途上の完成品/3

 当然、同じ物事を見ても、光命と全然違う解釈をしている颯茄。自分と同じように落ち着きのない彼女の言動を、しっかりと冷静な頭脳に彼はしまった。


「どのような意味ですか?」

「私はもともと同性愛者に対して偏見を持っていました。どうしても笑ってしまうんです。おかしいと言って。でも、長い年月が過ぎて、それも普通なんだなって思えるようになったんです。だから、光さんたちを理解するために、十四年間が必要だったんです。だから、光さんが私に懺悔する必要はないんです」


 十四年前に会ったとしても、颯茄は今みたいに接することはできなかったのだ。意味があって、十四年が存在していたのだ。物事はそういう風にできている。今は悲劇や苦痛色で染まっていても、ある日突然風が吹いて、至福や歓喜に変わる日がくるのだ。


 光命は机に腰をもたれ掛けさせ、颯茄を斜め前から見る形になった。


「そうですか。意義のある十四年間だったのですね」

「はい……」颯茄は少し鼻の奥が痛くなって、感慨深くため息をついた。「私はずっと、光さんのことが好きでした。でも、他の人――蓮と結婚しました。それは惰性だせいとか身代わりとかそういうのじゃなくて、本当に、真実の愛で結婚したんです。だけど、光さんへの想いは消えませんでした。でも、今考えれば、こうなる未来があったから、好きという気持ちは生まれて、ずっと消えなかったのかもしれませんね。神様が導いてくださったから……全てが真実の愛だったんです。十四年経って、ようやく答えが出ました」

「えぇ」


 細く神経質な指先が、紺の後れ毛を耳にかける。途切れた会話。それでも、このふたりには幸せな時間。


 颯茄はジュースをグビッと飲んで、夫婦十人を思い浮かべ、彼女らしい前向きさを大披露する。


「それから、たぶん同性愛というものを広めたいのかもしれないですね? 神さまはきっと……」


 颯茄は今の複数婚がどうなるのか、前向きに捉えてみた。


「同性愛のえある一号となったんです。世界に広めるために」

「陛下がそのような命令を下されましたよ」

「やっぱりそうだったんですね」


 運命という大きな歯車のひとつひとつが自分たち。それをよくわかっている妻がここにいて、そばで笑っている。光命はある衝動にふと駆られた。


「それでは、あなたを抱きしめる時間です」


 素直ではない光命。颯茄は気にせず、照れたように前髪を何度もいじった。


「ありがとうございます」


 白いカットソーの細い両腕は伸びてゆき、甘くスパイシーな香水の香りをまき散らしながら、最愛の妻をそっと抱きしめる。


(あなたは私を愛し続けてくれた。絶望がやってきて、傀儡くぐつのような日々になったとしても、あなたは信じ続け、愛し続けた。あなたはとても強い人だ)


 颯茄は目を閉じて、身をゆったりと委ねる。触れたくても触れられなかった十四年間が嘘のように、愛する夫の温もりを全身で感じる。


(私の十四年間は何も間違ってなかった。迷ったり、あきらめようとしたけど……。可能性がゼロじゃない限り、やっぱりあきらめちゃいけないんだ)


 未来という軌跡は何本も引かれている。選択肢でいくらでも変わる。あきらめたらそこで終わり。光命と夕霧命が結婚することもなく、ふたりの悲劇も続いてしまったかもしれない。ひたすら生きてきたからこそ、今がある。素晴らしい話だったが、颯茄がムンクの叫びみたいな顔で破壊した。 


「って、シリアスシーンだけど……。幸せすぎるので、このまま気絶してもしいいですか〜〜〜!!!!」


 夫の腕の中で、颯茄はとうとう壊れた。光命は瞬発力抜群ですというようにパッと手を離し、サファイアブルーの宝石がついた指輪は、中性的な唇に口づけされ、くすくすという笑い声を間近で聞かされることになった。


「おかしな人ですね、あなたは」 

「しょうがないじゃないですか。いつまでも色褪せない恋があることを知ってしまったんですから」


 なんて幸せなのだろう。あのすれ違うどころか、まったく別の人生を歩んでいた日々が嘘のようだ。手を伸ばせばそこにいて、声をかければ返事が返ってくるのだから。


 その時、ドアがノックされ、独健の鼻声がドアの向こうから聞こえてきた。


「いいか? そろそろ、俺たちにも、颯茄を愛したいんだが……」


 ふたりが振り返ると、ひまわり色の髪とはつらつとした若草色の瞳を持つ独健が入ってきた。それに続いて、カーキ色のくせ毛で、優しさの満ちあふれたブラウンの瞳の貴増参がボケをかまして登場。


「もめてるのでしたら、僕が法律違反ということで、陛下の元へ歌わせちゃいます!」


 聖輝隊の制服から着替えた夫の背中を、太いシルバーリングのついた手で、バシッと叩きながら、藤色の剛毛とアッシュグレーの鋭い眼光を持つ明引呼が突っ込みつつ部屋へ入ってきた。


「ボケてくんじゃねぇよ。そこは、しょっぴくだろがよ」

「あれ? みんなもきたんですか」


 まるで女をナンパするような軽薄的なまだら模様の声で、焉貴はひとりメンバーが抜けていることを伝えた。


「孔明はいないよ。第六十宇宙で講演会のパーティーだって」


 あの天才軍師の策略のお陰で、颯茄も大騒ぎで結婚をした、孔明とは。


「あぁ、やっぱり忙しいですね。孔明さん」


 家族がいない。わかっていても、颯茄は寂しいと思う。乗馬を楽しむ貴族みたいな出で立ちの人が入ってきた、邪悪という含み笑いをしながら。


「僕たちが気を遣っていると知っていて、光はわざと話を伸ばしたんでないんですか〜?」


 マゼンダ色の長い髪と、今はしっかり姿を現しているヴァイオレットの瞳。月命が他の策士の罠を暴いたのである。

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