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明智さんちの旦那さんたちR  作者: 明智 颯茄
リレーするキスのパズルピース
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魔法と結婚/5

 今は二十三歳だが、実際は八歳のお子さま。ひまわり色の髪はあきれ気味にかき上げられて、独健は意見しようとした。


「こう言うことって、強要されて言うことなのか? 俺は違う気がするんだが……」


 その刹那、ビーム光線にもなる、鋭利なスミレ色の瞳がこっちへ向いた。


「…………」


 独健は何とも耐え難い苦悩の表情を浮かべる。


「あぁ〜、その刺し殺すような目で見られると、にらみで強行突破になるんだよな」


 返事を待っているのに全然返してこない相手を前にして、蓮は無理やり両手で口を動かしてでも言わせようと、独健に近づくような雰囲気を醸し出した。


「っ」


 危険を察知した独健は、数歩後ろへ下がって、強制送還されるしか道がない人のような面持おももちになる。


「あぁ〜、その殴りかかりそうな勢いの姿勢も、絶対服従みたいにさせられるんだよな」


 ゴーイングマイウェイで押し切られてしまった独健は、両手のひらを相手に向ける仕草をした。


「わかった。観念して言う……」


 恥ずかしがり屋の独健のターン。


 頭文字で千鳥足も真っ青なほどもつれにもつれまくりだった。


「あ……あ……あ……!」


 途中で悪寒おかんが背中に走り、こっちもこっちで声を荒げた。


「って、お前、よく恥ずかしくもなく言うよな!」


 劣勢になりたくない蓮のターン。


 奥行きがあり少し低めの声が火山噴火を起こして、天へスカーンと向けるように爆発した。独健に人差し指を勢いよく突きつけて。


「光に言わされた俺の身にもなれ!」


 情にもろい独健は視線をあちこちに向け、唇を噛みしめたりしながら、納得の声を上げた。


「ま、まぁ、そうだよな。罠を仕掛けられたのは、確かに気の毒だ。それも考慮して、今度こそ、言うぞっ!」


 気合いを入れて、再び、恥ずかしがり屋の独健のターン。


「あ……あ……あ……」


 前に行きたいのに、服が釘に引っかかっていることに気づかず、それでも前へ行こうとして、また引っかかるようにリピート。


 いつまで経っても、目の前の男の要求に応えられずにいたが、独健、ここでいいことを思いついた。右手をパッと上げる。


「ちょっと待ってくれ!」

「何だ?」


 黒のショートブーツはさっきからクロスされて、完璧です的に立っている。その前で、落ち着きなくレイピアの銀の線をさまよわせている男。蓮と独健は対照的な性格だった。


 恥ずかしやがり屋の独健のターンはまだ続いている。少し――いやかな〜り言いづらそうに、若草色の瞳の持ち主は言葉を紡いだ。


「あぁ〜っと、『あ』で始まる方が今はちょっと恥ずかしすぎて言えないから、『す』の方でいいか?」


 ゴーイングマイウェイという、ある種のボケを持っている蓮に、こんな言葉が伝わるはずもなく、


「す? お前、何のことを言っている?」


 不思議そうに聞き返されてしまった。独健は苦笑いをして、ひまわり色の頭をぽりぽりとかいた。


「いや、そこで、マジボケされると俺も困るんだが……」


 蓮の後ろに連なる煌びやかなステージ衣装が目に入り、心優しい独健は落ち着きを少し取り戻した。


「お前を待たせるのもいけない。コンサートの開演時刻に間に合わなくなるからな。みんなも楽しみにして待ってる……」


 バンジージャンプをする人が決心するように、独健は気合いを入れ、


「だからっ!」


 地面を蹴り、あとは落ちてゆくだけの運命。恐怖で思わず目をつぶった。そして、男ふたりに青い春――青春がやってくる。


「す、す……す…………す………………す……………………きだ」


 単語の間を開けることで、恥ずかしさを軽減するという策、いや裏技だった。ご立腹するかと思いきや、蓮は鋭利なスミレ色の瞳のまま、態度デカデカで言う。


「いい、それで許してやる」


 独健はさっと瞳を開けて、両手を自分の前で左右に大きく振る。


「いやいや! 許可は求めてない! そういうところって、陛下に――!」


 独健は何かに気づき、はたと途中で言葉に急ブレーキをかけた。


 目の前にいる男の出生は知っている。陛下から分身したのだと。だが、もう何の関係もない。家族でも何でもないだと。


 分身した人物は他にもふたりいた。しかし、それは陛下の過去世のひとつ。当然、そこには、親や兄弟がいた。


 けれども、蓮にはそういう歴史がないのだ。世界という時の流れの中で、突如生まれた存在。真の孤独――


 独健の心の内など知らず、蓮は気にした様子もなく、首を傾け、針のような銀の輝きの髪を少しだけ揺らした。


「ん?」


 独健のはつらつとした少し鼻にかかる声は、珍しく元気をなくし、トーンが下がった。


「いや、いいんだ。お前が傷つくような話はしない――」


 蓮も感覚ではなく感性であって、理論派。多少の情報をつなぎ合わせて、相手が何をしているのか、何を思ってるのかぐらいわかる。


「言っていい」 今は二十三歳だが、実際は八歳のお子さま。ひまわり色の髪はあきれ気味にかき上げられて、独健は意見しようとした。


「こう言うことって、強要されて言うことなのか? 俺は違う気がするんだが……」


 その刹那、ビーム光線にもなる、鋭利なスミレ色の瞳がこっちへ向いた。


「…………」


 独健は何とも耐え難い苦悩の表情を浮かべる。


「あぁ〜、その刺し殺すような目で見られると、にらみで強行突破になるんだよな」


 返事を待っているのに全然返してこない相手を前にして、蓮は無理やり両手で口を動かしてでも言わせようと、独健に近づくような雰囲気を醸し出した。


「っ」


 危険を察知した独健は、数歩後ろへ下がって、強制送還されるしか道がない人のような面持おももちになる。


「あぁ〜、その殴りかかりそうな勢いの姿勢も、絶対服従みたいにさせられるんだよな」


 ゴーイングマイウェイで押し切られてしまった独健は、両手のひらを相手に向ける仕草をした。


「わかった。観念して言う……」


 恥ずかしがり屋の独健のターン。


 頭文字で千鳥足も真っ青なほどもつれにもつれまくりだった。


「あ……あ……あ……!」


 途中で悪寒おかんが背中に走り、こっちもこっちで声を荒げた。


「って、お前、よく恥ずかしくもなく言うよな!」


 劣勢になりたくない蓮のターン。


 奥行きがあり少し低めの声が火山噴火を起こして、天へスカーンと向けるように爆発した。独健に人差し指を勢いよく突きつけて。


「光に言わされた俺の身にもなれ!」


 情にもろい独健は視線をあちこちに向け、唇を噛みしめたりしながら、納得の声を上げた。


「ま、まぁ、そうだよな。罠を仕掛けられたのは、確かに気の毒だ。それも考慮して、今度こそ、言うぞっ!」


 気合いを入れて、再び、恥ずかしがり屋の独健のターン。


「あ……あ……あ……」


 前に行きたいのに、服が釘に引っかかっていることに気づかず、それでも前へ行こうとして、また引っかかるようにリピート。


 いつまで経っても、目の前の男の要求に応えられずにいたが、独健、ここでいいことを思いついた。右手をパッと上げる。


「ちょっと待ってくれ!」

「何だ?」


 黒のショートブーツはさっきからクロスされて、完璧です的に立っている。その前で、落ち着きなくレイピアの銀の線をさまよわせている男。蓮と独健は対照的な性格だった。


 恥ずかしやがり屋の独健のターンはまだ続いている。少し――いやかな〜り言いづらそうに、若草色の瞳の持ち主は言葉を紡いだ。


「あぁ〜っと、『あ』で始まる方が今はちょっと恥ずかしすぎて言えないから、『す』の方でいいか?」


 ゴーイングマイウェイという、ある種のボケを持っている蓮に、こんな言葉が伝わるはずもなく、


「す? お前、何のことを言っている?」


 不思議そうに聞き返されてしまった。独健は苦笑いをして、ひまわり色の頭をぽりぽりとかいた。


「いや、そこで、マジボケされると俺も困るんだが……」


 蓮の後ろに連なる煌びやかなステージ衣装が目に入り、心優しい独健は落ち着きを少し取り戻した。


「お前を待たせるのもいけない。コンサートの開演時刻に間に合わなくなるからな。みんなも楽しみにして待ってる……」


 バンジージャンプをする人が決心するように、独健は気合いを入れ、


「だからっ!」


 地面を蹴り、あとは落ちてゆくだけの運命。恐怖で思わず目をつぶった。そして、男ふたりに青い春――青春がやってくる。


「す、す……す…………す………………す……………………きだ」


 単語の間を開けることで、恥ずかしさを軽減するという策、いや裏技だった。ご立腹するかと思いきや、蓮は鋭利なスミレ色の瞳のまま、態度デカデカで言う。


「いい、それで許してやる」


 独健はさっと瞳を開けて、両手を自分の前で左右に大きく振る。


「いやいや! 許可は求めてない! そういうところって、陛下に――!」


 独健は何かに気づき、はたと途中で言葉に急ブレーキをかけた。


 目の前にいる男の出生は知っている。陛下から分身したのだと。だが、もう何の関係もない。家族でも何でもないだと。


 分身した人物は他にもふたりいた。しかし、それは陛下の過去世のひとつ。当然、そこには、親や兄弟がいた。


 けれども、蓮にはそういう歴史がないのだ。世界という時の流れの中で、突如生まれた存在。真の孤独――


 独健の心の内など知らず、蓮は気にした様子もなく、首を傾け、針のような銀の輝きの髪を少しだけ揺らした。


「ん?」


 独健のはつらつとした少し鼻にかかる声は、珍しく元気をなくし、トーンが下がった。


「いや、いいんだ。お前が傷つくような話はしない――」


 蓮も感覚ではなく感性であって、理論派。多少の情報をつなぎ合わせて、相手が何をしているのか、何を思ってるのかぐらいわかる。


「言っていい」

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