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明智さんちの旦那さんたちR  作者: 明智 颯茄
リレーするキスのパズルピース
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武術と三百億年/10

 自分がいつも職場で晒されている、プレゼントと冷やかし攻撃を、武道家に放った。夕霧命から敵を合気で倒したように、真っ直ぐ艶やかにツッコミ。


「意味がわからん」

「きゃあきゃあっていえば、あれとあれの結婚式すごかったよね」


 焉貴の話は一気に思い出話へと飛んだ。夕霧命は今までの話流れとは違ったが、いつものことだと思い、気にせず返事をした。


「すごかった、身動きとれんかった」

「俺は何とかなったけどね」

「焉貴はどこにいた?」

「俺は招待された側が、夕霧と逆でしょ? だから、教会の入り口の左側にいたけど、お前、どこ?」

「俺は従兄弟いとこだから、教会の中から出られんかった。前がつまっていて」

「それは、テレビカメラとかがたくさん来ちゃったからでしょ?」


 滅多にため息をつかない、夕霧命と焉貴は順番に、苦悩の吐息をもらした。


「はぁ〜、毎回そうだ」

「そう、俺も毎回、巻き込まれちゃってんの」


 ただの結婚式でないのが、武道家と高校教師には憂鬱の種だった。


 しかし、そんなことはお構いなしに、ハイテンションで焉貴はパッと右手を上げた。


「スパッと、武術の話に戻しちゃいます!」


 筋が通っていない話す順番を前にして、夕霧命は握った拳を唇に近づけて、珍しく声に出して、噛みしめるように笑った。


「くくく……また無意識の直感だ」


 ナンパするみたいに、ナルシスト的に微笑んで、数学の教師で、可能性の数値をきっちり計ってくる、理論派の山吹色のボブ髪を持つ男は、直感だと認めた上で、首を傾げる。


「そう。俺、いつ変えたんだろう? 考え。まぁ、これも神様のお導きってことで」


 自分の言動が疑問形。月命が言っていた通り、破天荒すぎた、焉貴は。遠くの雲から降る雨が、真っ赤な空に染められ、キラキラとルビーのような輝きを放って大地にマグマに降り注ぐ。


 白と紺の袴を着て、艶やかにひび割れた大地に立ち、絶対不動でさっきから一歩も動いていない武術の達人に、ハイテンション数学教師が提案する。


「その合気と無住心剣流のこと説明して、孔明に聞いたら? 作戦をさ」


 漆黒の結い上げた腰までの長い髪。瑠璃紺色の聡明な瞳を思い浮かべて、夕霧命は首を横に振る。


「あれは頭がよ過ぎて、俺がついていけん」

「じゃあ、貴とアッキーは?」


 意外だというように、夕霧命は不思議な顔をする。


「あのふたりは武術はせん。なぜ、出てきた?」


 焉貴の理由は知っている人でないと、知らない単語が混じっていた。


「護法童子、生まれさせて、悪と本当に戦ってたんでしょ? あの二人って」

「それは、直接、人間に手を貸すことができんから、子供の化身けしんを作って守護していた話だ。本人は戦い方を知らん」


 マゼンダ色のリボンで結わかれた腰までの長い髪。まぶたの裏に隠されているが、姿を現すと人々を震え上がらせるほど邪悪なヴァイオレットの瞳。


「じゃあ、月は?」

「あれは頭がいいが、失敗するもの、負けるものを好んで選ぶ」


 誰もが却下されてゆく。


「独健は?」


 二人の頭の中に浮かぶ。元気さの象徴のようなひまわり色の短髪。はつらつとした若草色の瞳。


「あれは父親が武術をするが、本人はせん」


 誰もからも、夕霧命の手助けにはなれなかった。


 そして、焉貴名探偵は、犯人はこの人です的に、最後にある人をわざと持ってきた。紺の長い髪を持ち冷静な水色の瞳の男。


「じゃあ、あれに聞けば?」

「さっき聞いた」


 夕霧命は珍しく目を細めて、彼なりの笑みを作った。今まであんなに否定ばかりだったのに、即行肯定。


「あいつ、本当に瞬発力あるよね〜。で、どうやって聞いたの?」

「いや、感じた」


 意味ありげな発言が地鳴りのような低い声で告げらると、焉貴はやっていられない的に山吹色の髪を大きくかき上げた。


「また〜? もう、俺、それ一日に何度も見るんだけど……。どんだけ仲いいの?」


 相手の反応など、日本刀で敵を斬るみたいにバッサリ切り捨て、夕霧命は真面目な顔で短く言った。


「普通だ」


 どこかいってしまっている黄緑色の瞳は、首を傾げたため斜めになった。


「そう? やっぱり若いよね。俺、三百億年生きてるけど、そんな話聞いたことないよ?」

「そうとは知らんかった」


 袴の裾が艶やかに揺れ動く、その人はどこからどう見ても、焉貴と歳の頃は同じに見えたが、まだら模様の声が意味不明なことを言ってくる。


「二人は十四年ぐらいでしょ? 生まれてから。ノーリアクションのあれは、八年。それで、大人になっちゃったから、若いんだよね、この三人はさ。で、お前、いくつ?」

「なぜ、それを聞く?」

 

 夕霧命にとっては当たり前のことで、今更言う必要などないと思っていた。甘さダラダの声で、焉貴はおねだりする。


「え〜? 聞かせて〜?」

「二十三だ」

「計算おかしいけど、あっちゃってんの、この世界ではさ。ちなみに、俺も二十三歳だから」


 夕霧命は目を閉じて、あきれたため息をついた。


「わかっていることをさっきから話している。何をしにきた?」

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