表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/219

勝負で肝心なのは、やっぱり勝つこと。――4

 俺が牙を()くように笑うと、ミスティ先輩は眼差しを真剣なものにして、身構える。


 俺はユーに指示を出した。


「『ベンジャーレイス』!」

『ムゥ……!』


 パージでも、リバーサルストライクでも、エクスディフェンスでもない、初披露(はつひろう)のスキル。


 ミスティ先輩が、アメシストの瞳を真ん丸にする。


「バーサクリバストではないのですか!?」

「ええ。嘘をつきました」


 試合開始直後、俺はこう言い放った。




 ――いつも通りいくぞ! バーサクだ!




 この言葉はブラフだ。


『これまでの試合通り、相手はバーサクリバストを用いてくる』――ミスティ先輩に、()()()()()()()()()()()言い放ったんだ。


 ミスティ先輩は、ユーのスキル構成がバーサクリバスト型だと思い込み、対バーサクリバスト用の試合運びをした。


 俺の狙い通りに。


「く……っ」とミスティ先輩が(うめ)く。


 悔しがるミスティ先輩に構わず、ユーがスキルの準備をはじめた。


 自分の正中線(せいちゅうせん)に平行させるように、ユーがロングソードを構える。


 ティアが用いたチェインライトニングのチャージタイムは5秒。対し、ユーのベンジャーレイスは3秒。


 先にスキルを発動させるのはユーだ。


 緊張からか、ミスティ先輩の頬を汗が伝う。


 きっかり3秒後、ユーがベンジャーレイスを発動させた。


『ムゥッ!』


 ユーがロングソードを掲げると、何体もの小さな幽霊が、周りに現れる。


 鎧やロングソードで武装した、ユーと瓜二つの幽霊たちは、現れた(そば)から姿を消した。


「いまのは……?」


 ベンジャーレイスの効果を把握していないのか、ミスティ先輩が眉をひそめる。


 時間は止まらない。


 チャージタイムが終了し、ティアのチェインライトニングが発動した。


『ララー!』


 ティアの両手から電流が(ほとばし)り、空中でみっつの雷球を形成する。


 そのうちのひとつが、ユーに襲いかかってきた。


「エクスディフェンス!」

『ムゥ!』


 俺はユーに『防御態勢』をとらせる。


 ユーが盾のように構えたロングソードに、雷球がはじかれた。


 俺は、ニィ、と笑う。


「さあ、反撃開始だ!」


 俺が宣言すると同時、ティアの周りに、先ほど姿を消した、ユーと瓜二つの幽霊たちが現れる。


 小さな幽霊たちは、ロングソードを高々と掲げ、


『『『『『『ムゥ――ッ!』』』』』』


 次々にティアに斬りかかった。


『ラー……ッ!』


 幽霊たちに滅多斬(めったぎ)りにされて、ティアが苦しそうに鳴く。


 攻撃を終えた幽霊たちが再び姿を消したとき、ティアのHPは3/8削られていた。


「なっ!?」


 ミスティ先輩が目を剥いた。


 ユーが用いたベンジャーレイスは、『攻撃を受けた際、自動で反撃(物理攻撃)を行う幽霊たちを生み出す』魔法スキル。一言で(あらわ)すと『報復攻撃(ほうふくこうげき)』スキルだ。


『報復攻撃』の威力はほかの攻撃スキルに比べて低いが、バーサクによって、ユーのSTRは200%上昇している。


『報復攻撃』は物理攻撃なので、STR依存(いそん)。そのため、バーサクの恩恵により威力が3倍になる。


 その威力は、並の攻撃スキル以上だ。


 しかも、エクスディフェンスで『防御態勢』をとっているため、ユーがダメージを受けることはない。


 バーサクでSTRを激増させ、エクスディフェンスで無敵状態になり、ベンジャーレイスによって一方的にダメージを与える。


 ゴーストナイトの代表的スキル構成のひとつ、『ジャーレス型(ベンジャーレイス型の略称)』だ。


 本来は、エクスディフェンスの前に、相手を『怒り』状態にする魔法スキル『アンガーブリング』を使用する。


『怒り』は、『30秒間、攻撃スキルしか扱えず、勝手に相手を攻撃してしまう』状態異常(バッドステータス)


『ジャーレス型』では、ベンジャーレイスの『報復攻撃』を恐れる相手に、『怒り』を利用して、強制的に攻撃させるわけだ。


 今回は、都合のいいことに、ミスティ先輩が、ティアにチェインライトニングを使わせてくれた。


 時間差攻撃であるチェインライトニングは、発動させたら自動的に相手を攻撃する。


 時間差攻撃、自動攻撃はチェインライトニングの売りだが、現状ではデメリットでしかない。


 なにしろ、ティアはあと2回、勝手にユーを攻撃してしまうのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ