表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/219

見ている分には羨ましいだろうけど、ハーレムって結構大変。――5

「やってくれたな……」


 俺は感心(かんしん)交じりに呟く。


 シェルバーストこそが、俺が懸念(けねん)していたスキルだ。


 物理スキルでは数少ない範囲攻撃。


 チャージタイムが0秒なうえ、尋常じゃない威力を有するが、その代償として、最大HPの3/4、HPを消費する。


 (ざん)HP1のルードは、当然ながら戦闘不能だ。


『ルォォ……』


 悲しげな断末魔(だんまつま)とともに、ルードが魔石と化す。


 俺は拍手を贈りたい気分だった。


 なにしろ、いまの選択は、エッジがとれるなかで最良の一手と呼べるのだから。


 ルードは『強固』を持っているが、サクリファイスボム2連発には、どう足掻(あが)いても耐えられない。


 だからエッジは発想を変えた。


 どうやっても耐えられないのなら、クロに一矢(いっし)報いるため、ルードを犠牲にしようと考えたんだ。


 すなわち、痛み分け。


 非情な選択に思えるが、戦術的には見事としか言えない。実際、クロを脱落させることに成功したのだから。


 俺は笑みを(こら)えられなかった。


 強敵との戦いは、これだからやめられない。


「よくやった、クロ! 交代だ!」

『ピッ!』


 俺がクロを呼び戻すと、エッジはフゥ、と一息ついて、パン! パン! と気合いを入れ直すように頬を叩いた。


「決めるぞ、ユー!」

「頼むぞ、ジャック!」


 俺は2番手を、エッジは最後の従魔を呼び出す。


『ムゥ!』

『OOOOOOHH!』


 俺が選んだのはユー。エッジが望みを(たく)したのは、目と口のような(うろ)と、腕のような枝を持つ、巨木だった。


 俺にとって、ある意味、因縁(いんねん)の敵と言えるモンスターだ。




 フレンジートレント:92レベル




 姿(すがた)通り、属性は木。ステータス的には、STR、VIT、MNDが高く、AGI、DEXが低い。


 固有アビリティは、『攻撃スキルを用いた際、相手に与えたダメージの1/8分、HPが回復する』効果を発揮する『吸収(きゅうしゅう)』。


 この世界に転生した俺が、最初に遭遇し、殺されかけたモンスターだ。


「なんの因果か知らねぇが、あのときの俺とは違うって証明してやるよ」


 俺は意気込み、フレンジートレントのジャックを見据(みす)える。


 そんな俺とは対照的に、


「なんだ、ゴーストナイトか」


 エッジは見るからに気の抜けた様子だった。


 肩の力を抜くエッジに、俺は落胆する。


 さっき、不遇モンスター(クロ)に苦戦したことを忘れたのか? 学ばねぇやつだなあ。


「『ネイルピック』だ、ジャック!」

『OOOOHH……!』


 俺が溜息をついていると、エッジが指示を出した。


 ジャックが、鉤爪の生えた腕を引き絞る。物理攻撃スキル『ネイルピック』の構え。


 ネイルピックのチャージタイムは5秒。それだけあれば、ユーには充分(じゅうぶん)過ぎる。


「よし! 舐めてかかるんなら、わからせてやるか」


 気を取り直し、俺はユーに指示した。


「バーサク!」

『ムゥゥゥッ!』


 即発動したバーサクに、エッジが警戒の表情を見せる。


「パージ!」

『ムゥッ!』


 ユーのHPが1になり、エッジが怪訝(けげん)そうに顔をしかめる。


「リバーサルストライク!」

『ムゥ――――ッ!!』


 流星の如く飛び出したユーに、


「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?」


 エッジが仰天(ぎょうてん)した。


 キュドォオオオオオオンンンンッ!!


『OOOOOOOOOOHHHH!!』


 一撃必殺。


 ()(すべ)なく(つらぬ)かれ、ジャックのHPが0になる。


 ジャックが魔石になる(さま)を、エッジは呆然と眺めていた。


 静まり返る競技場。


『しょ、勝者、ロッド・マサラニア!』


 審判の声が、無音の競技場に響いた。


「そ、そんな、バカな……」


 エッジの膝が、ガクリと崩れる。


 項垂(うなだ)れるエッジに、俺はニカッと笑った。


「な? 痛い目を見るって言ったろ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ