大事な大会には、最高の状態で挑むべき。――8
ロードモンスターの部屋には、1階層と同じく、等間隔で円柱が並んでいた。
広い長方形の空間。
その中央に、ロードモンスターはいた。
2メートルほどの背丈を持つ、白いローブをまとった人型のモンスターだ。
その頭はライオンのもので、光り輝く杖を握っている。
ライオンヘッドプリースト:91レベル
ライオンヘッドプリーストは光属性。INT、MND、VITが高く、STR、AGIが低い、魔法攻撃と耐久性に優れたモンスターだ。
固有アビリティは、『相手のスキルによってステータスを下げられることがない』効果を発揮する、『守護神の祝福』。
HPバーは4本だ。
「レイシー、行けるか?」
ライオンヘッドプリーストの部屋の前で、俺はレイシーに確認する。
レイシーは静かにまぶたを閉じ、深呼吸をひとつした。
「行けます」
目を開けたレイシーが、毅然とした態度で言う。
レイシーに頷きを返し、
「よし。頼んだぞ」
「はい!」
俺たちはライオンヘッドプリーストの部屋に踏みこんだ。
『GLLLLLOOOOOOOOHH!!』
俺とレイシーの侵入を視認し、ライオンヘッドプリーストが咆える。
「来い、クロ! ユー!」
「行きますよ、リーリー!」
『ピィッ!』
『ムゥ!』
『リィ!』
大気を震わせる咆哮に憶することなく、俺とレイシーは魔石を放り投げ、それぞれの従魔を呼び出した。
そのなかにピートはいない。どうやらレイシーは、リーリーだけを投入することにしたようだ。
いい判断だ。リーリーは支援役として活躍できるが、ピートは火力として、あまりにも心許ないからな。
『GLLLL……!』
ライオンヘッドプリーストが、クロに杖の先端を向けた。
杖が放つ光が一層強くなり、球体を形成していく。
光属性の魔法攻撃スキル『フォトンレイ』。エリーゼ先輩のゲオルギウスがよく用いるスキルだ。
対し、レイシーの初手は、
「『ミスティックエール』です、リーリー!」
『リィ!』
リーリーが指を組み、祈るようなポーズをとる。
レイシーの選択に、俺は笑みを浮かべずにいられなかった。
なにしろその選択は、現在のリーリーがとれるなかで、最高の一手なのだから。
この一手だけでレイシーの成長がうかがえる。頼もしい限りだ。
「俺も負けてられないな」
喜びに口端を上げたまま、俺はユーに指示を送る。
「バーサク!」
『ムゥゥゥッ!』
「パージ!」
『ムゥ!』
「リバーサルストライク!」
『ムゥ――――ッ!!』
ユーの伝統芸『開幕バーサクリバスト』だ。
キュドォオオオオオオンンンンッ!!
『GLOOOOOOOOOOHHHH!!』
ロングソードの直撃を受け、ライオンヘッドプリーストが苦悶の叫びを上げる。
ライオンヘッドプリーストのHPバーがギュイン! と減少し、一気に2本が消滅。残りは1本と3/4になった。
『GLLLLLLL……!!』
双眸を怒りに染めながら、ライオンヘッドプリーストがユーを睨む。
ヘイトを稼いだことにより、クロからユーにターゲットが移ったんだ。
ライオンヘッドプリーストが杖の先端をユーに向ける。
フォトンレイの発動まで、残り3秒。
「ヴァーティゴだ、クロ!」
『ピィ……ッ!』
当然、俺は対策を打つ。
ヴァーティゴの準備として、クロが力を溜めた。
ライオンヘッドプリーストが作り出した光球が、キィィィ……! といななきだす。
光球が槍となって放たれる、その寸前。
『ピィッ!』
クロがヴァーティゴを発動させた。
周りの景色を歪められ、ライオンヘッドプリーストが『目眩』状態になる。
『GLOOOOOOOOHH!!』
頭をフラフラと揺らしながらも、ライオンヘッドプリーストはフォトンレイを放った。
残念ながら、今回は直撃コースだ。
それでも問題ない。
「エクスディフェンス!」
『ムゥ!』
俺は即座に指示を出し、ユーに『防御態勢』を取らせる。
ユーが盾にしたロングソードに弾かれ、フォトンレイが霧散した。




