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大事な大会には、最高の状態で挑むべき。――4

「さあ、次はクロの出番だ! 『アブソーブウィスプ』!」

『ピィ……ッ!』


 クロが体をたわめ、ぐぐっと力を溜める。


 ブラックスライムの必須スキル。HP吸収効果のあるアブソーブウィスプの準備態勢だ。


『QWOOOO……!』


 負けじと、サンダーガルーダも攻撃スキルの準備をする。


 ゲイルガルーダと左右対称に、左の手のひらを突き出すモーション。雷属性の魔法攻撃スキル『サンダーボルト』の構え。


 チャージピアスをやり過ごしたユーだが、いまだにHPは1。


 そして、サンダーボルトは魔法スキルだから、『霊体状態』のユーにも通用する。


 ユーに勝てると踏んだのだろう。サンダーガルーダが口端をつり上げた。


『ピィッ!』


 サンダーボルトより早く、アブソーブウィスプが発動した。


 クロの体から、紫色の火の玉が浮かび上がり、サンダーガルーダにまとわりつく。


 サンダーガルーダは意に介さない。余裕の表情で、ユーに左手を向け続ける。


 サンダーガルーダの左手が、バチバチと放電をはじめた。


 稲光(いなびかり)は徐々に輝きを増し、破裂音は音量を上げていく。


 そして、チャージタイムの5秒が経過し、


『QWOOOOOOHH!!』


 サンダーボルトが発動した。


 稲光が放たれ、雷の槍と化す。


 雷槍は狙い(たが)わずユーへと襲いかかった。


 直撃コース。


 このままでは、ユーが戦闘不能になってしまう。


「いや、そんなこと百も承知なんだ。対策を施さないわけねぇだろ」


 焦りひとつなく、俺は指示を出す。


「『エクスディフェンス』!」

『ムゥ!』


 ユーがロングソードを盾のように構えた。


 直後、雷槍がユーを突く。


 だが、


『ムゥッ!』


 ユーのロングソードに触れた瞬間、バチンッ! と音を立てて(はじ)かれた。


『QWOO!?』


 余裕ぶっていたサンダーガルーダの顔が強張(こわば)る。


 勝利を確信していたようだから仕方ないだろう。


 ユーが用いたエクスディフェンスは、先制効果を持つ、防御用の物理スキル。その効果は、『どんな攻撃を受けてもHPが減らない、防御態勢となる』だ。


『防御態勢』は、30秒経過するか、なんらかの行動をとると解除される。


 要するに時間稼ぎ用のスキルなんだが、ユーの戦法とは相性バッチリだ。


 なにしろ、バーサクリバスト直後に倒されるところを、30秒も耐えさせてくれるのだから。


 そして30秒あれば、クロがケリをつけてくれる。


『QWOOOO……!』


 動揺から立ち直ったサンダーガルーダが、次なるスキルの準備に入った。


 両腕を広げたサンダーガルーダの体を、電流が駆けめぐる。


 雷属性の範囲攻撃スキル『エレクトリックディスチャージ』のモーションだ。


 サンダーガルーダがまとう電流が、時間とともに勢いを増していく。


 だが、俺には毛ほどの恐れもなかった。


「残念だが、一手遅かったな」


 エレクトリックディスチャージのチャージタイムは10秒。


 10秒あれば充分すぎる。クロのほうが早い。


 アブソーブウィスプのHP吸収が発生。


 サンダーガルーダの体から光の粒子が浮かび上がり、宙を漂う紫色の火の玉に吸い込まれ、


『ピッ!』

『ピィッ!』


 固有アビリティ『分裂(ぶんれつ)』により、クロの体から分身が飛び出した。


 エレクトリックディスチャージの発動まで、あと2秒。されど2秒。


「ぶちかませ! 『サクリファイスボム』!」

『ピィィィィ……』


 クロの分身が、(まばゆ)い光を放ちながら、ピョンコピョンコとサンダーガルーダに向かっていく。


 サンダーガルーダのまとう電流が、放たれようとするその間際(まぎわ)


『ピィ――――――ッ!!』


 轟音(ごうおん)を響かせて、クロの分身が爆発した。


『QWOOOOOOOOOOHHHH!!』


 分身の自爆攻撃をまともに食らい、サンダーガルーダが絶叫する。


 爆発の余波により、モウモウと砂煙が立ち込めるなか、


『QWOOOO……!!』


 ガクリとサンダーガルーダが膝を折り、魔石へと姿を変えた。


「よし! クロもユーもよくやったぞ!」

『ピィッ!』

『ムゥ!』


 クロとユーが、満面の笑顔で俺のもとに戻ってくる。


 クロはスリスリと俺の脚に体をすり寄せ、ユーは両手を挙げてクルクルと回っていた。まったくもって可愛いやつらだ。


 クロとユーが喜ぶ様子に癒やされながら、俺はメニュー画面を開く。




 クロ:81レベル


 ユー:78レベル




 よっし! レベルも上がった! 順調、順調!


流石(さすが)はロッドくんです! 快勝でしたね!」

「おう! ありがとな、レイシー!」


 駆けよってきたレイシーが、尊敬の眼差しで俺を見上げる。


 俺はレイシーにニカッと笑いかけ、地下へと続く階段を指差した。


「さあ、ダンジョン探索と行こうぜ!」

「おお――っ!」


 レイシーが意欲満々といった様子で拳を突き上げた。

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