大事な大会には、最高の状態で挑むべき。――3
ゲイルガルーダは風属性で、STR、INT、AGIが高く、HP、MNDが低い。
一方、サンダーガルーダは雷属性で、STR、INT、DEXが高く、HP、VITが低い。
ステータスは似ているが、片方はAGIが高くてMNDが低い。もう片方はDEXが高くてVITが低いと、対称的なモンスターだ。
その固有アビリティも対称的の一言に尽きる。
『QWAAAAAAAAHH!!』
ゲイルガルーダがいななくと、辺りに強風が吹き荒び、
『QWOOOOOOOOHH!!』
サンダーガルーダがいななくと、辺りに雷光が迸った。
ゲイルガルーダの固有アビリティ『強風呼び』と、サンダーガルーダの固有アビリティ『雷光呼び』。
『強風呼び』には、相手モンスターのAGIを、『雷光呼び』には、相手モンスターのDEXを10%下げる効果がある。
つまり、ゲイルガルーダとサンダーガルーダとの戦闘は、AGIとDEXが下がった状態からはじめないといけないわけだ。
まあ、クロとユーの戦法には、さほど支障はないけれど。
『QWAAAA……!』
『QWOOOO……!』
続いて、ゲイルガルーダが右の手のひらを突き出し、サンダーガルーダが三叉槍を引き絞った。
風属性の魔法攻撃スキル『サイクロンショット』と、物理攻撃スキル『チャージピアス』の構えだ。
サイクロンショットはチャージタイムが5秒で、チャージピアスは3秒。どちらも高威力の攻撃スキルだ。
「じゃあ、先にゲイルガルーダから仕留めるか」
迷いなく俺は決断する。
本来ならば、チャージタイムが短いほうから仕留めるべきだが、サイクロンショットは魔法攻撃スキルで、チャージピアスは物理攻撃スキル。
俺たちにとって――いや、ユーにとって、物理攻撃スキルは脅威じゃないからな。
「『バーサク』だ、ユー!」
『ムゥゥゥッ!』
俺の指示を受け、ユーが力こぶを作るようなポーズを取る。
『疾風の腕輪』の『先制効果』により、バーサクが即発動。
ユーが真紅のオーラに包まれ、HPが1/4になり、STRが200%上昇する。
「『パージ』!」
『ムゥ!』
続いてユーの鎧がはじけ飛んで『霊体状態』となり、HPが1になった。
「『リバーサルストライク』!」
ユーがロングソードを引き絞り、剣身が黒いオーラをまとい、
『ムゥ――――ッ!!』
流星の如く飛び出した。
もはやお約束となった、ユーの必殺技『バーサクリバスト』。
一撃特化の大ダメージがゲイルガルーダを襲う。
キュドォオオオオオオンンンンッ!!
『QWAAAAAAAAAAHHHH!!』
ユーのロングソードに貫かれ、ゲイルガルーダが断末魔を上げた。
一瞬でHPを0にされ、ゲイルガルーダが魔石に変わる。
『QWOOOOOOOOOOHHHH!!』
相方を倒されて、サンダーガルーダが怒りの咆哮を上げた。
サンダーガルーダのターゲットがユーに定められる。原因はヘイトを稼いだからだが、もしかしたら仇討ちの意味合いもあるのかもしれない。
『QWOOOOHH!!』
チャージピアス発動。
ユーの型を真似るように、サンダーガルーダが三叉槍を突き出しながら突進してくる。
三叉槍がユーに迫り、
スカッ
そのまま素通りした。
『ムゥ?』
『QWOO!?』
ユーが「なにしてるの?」とばかりに首をかしげ、サンダーガルーダが「そ、そんなバカな!!」と言いたげに瞠目する。
「HP調整のために使ってばかりで忘れられがちだけどな? パージはもともと物理スキルを無効化するためのスキルなんだよ」
俺はニヤリとほくそ笑む。
パージで『霊体状態』になったモンスターには、すべての物理スキルが通じない。
これがバカにできない。いまの状況がまさしくそうだ。
バーサクリバスト直後はHPが1になっているため、1発でも攻撃を受ければ戦闘不能になる。
しかし、『霊体状態』ならば、物理攻撃を受けても問題ない。バーサクリバストの弱点を、上手くカバーしてくれるんだ。