表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/219

大事な大会には、最高の状態で挑むべき。――2

 次の休み。


 俺とレイシーは飛鳳船(ひほうせん)でオルボス山の(ふもと)を訪れ、登山をはじめた。


 オルボス山を登ること約30分。俺たちの目に、目的地が映った。


 白い、石造りの神殿だ。


 ギリシャのパルテノン神殿に似た造りで、(たい)らな床に、等間隔で太い円柱が並んでいる。


「ここがジェア神殿ですか」


 コツコツと(かかと)を鳴らしながら、レイシーが固い声を出した。


 辺りを警戒するレイシーは見るからに緊張している。


「そんなに気を張らなくてもいいぞ? ジェア神殿の1階層に、モンスターは出現しないからな」

「そうなのですか?」

「ああ。モンスターが出現するのは2階層からだ」


「そうですか」と、レイシーが肩の力を抜く。


「まあ、2階層に進むには、あいつらを倒さないといけないんだけどな」


 俺は神殿の奥を指差す。


 そこにあるのは、地下へと続く階段と、階段を挟むように立つ2体のモンスターだった。


 モンスターは2体とも、鳥の頭と翼を持つ、体長3メートルほどの巨人だ。


 右に立つほうは緑色で、左手に三叉槍(トライデント)を、左に立つほうは黄色で、右手に三叉槍を持っている。


 その(さま)は、まるで阿吽(あうん)金剛力士像(こんごうりきしぞう)だ。




 ゲイルガルーダ:80レベル


 サンダーガルーダ:80レベル




「ひゃうっ!!」


 ゲイルガルーダとサンダーガルーダを目にして、レイシーがサッと柱の陰に隠れた。


「ロッドくんも早く! 見つかってしまいます!」

「大丈夫だ、レイシー。あいつらはジェア神殿への侵入者を(はば)む門番で、こっちから仕掛けない限り襲ってこないんだよ」


 柱の陰から早く早くと手招きするレイシーに、プッと吹き出しながら俺は説明する。


 実際、堂々と姿を(さら)しているにもかかわらず、ゲイルガルーダとサンダーガルーダが、俺に襲いかかってくる気配はない。


 ただ、鋭い目付きをしながら、階段の(かたわ)らに立っている。


 余計な心配だったと気付いたのか、レイシーの顔がカアッと赤くなった。


「も、もう~~~~っ! そういう大事なことは先に言ってください!」


 プクゥっと頬を膨らませるレイシーは、少しだけ涙目だ。


「悪い悪い」と謝りながらも、恥ずかしがるレイシーも可愛いんだな、と思ってしまった。


「どちらにしろ、あいつらとの戦闘は避けられねぇよ。俺が欲しいものはジェア神殿のなかにあるんだからな」


 牙を()くように笑い、俺はふたつの魔石(ませき)を放る。


「行くぞ、クロ! ユー!」

『ピィッ!』

『ムゥ!』


 魔石が輝き、クロとユーが元気な鳴き声とともに現れた。


「レイシーはここにいてくれ」

「え? で、ですが……」

「あいつらはレイシーの手に負える相手じゃない」


 俺はレイシーの言葉を(さえぎ)る。


 タイラントドラゴンとの戦いを経て、リーリーのレベルは38に上がり、レイシーの育成によって、ピートは14レベルに上がっている。


 しかし、ゲイルガルーダとサンダーガルーダには遠く及ばない。戦闘に参加させるのは(こく)というものだろう。


 レイシーはグッと唇を噛み、悔しそうな表情で「わかりました……」と頷いた。


 レイシーの(そば)を離れ、俺はクロとユーをつれて階段へと向かう。


 ゲイルガルーダとサンダーガルーダが、俺たちに三叉槍の尖端を向けた。


 どうやら、俺たちを侵入者と見なしたらしい。


 刺し貫くような視線を真っ向から受け止め、俺は、ニィッと口端(くちはし)をつり上げる。


「行くぞ、門番ども。阻めるもんなら阻んでみやがれ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ