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結局のところ、やる気があるやつは応援したくなるのが人情。――18

「本当にありがとうございます!」


 放課後の校庭。


 俺を呼び出したレイシーが、ペコリと頭を下げた。


「今日の模擬戦で勝てたのは、全部全部ロッドくんのおかげです! 『魔法のスクロール』やピートをいただいたうえに、戦い方まで教えてもらって、何度お礼を言っても足りません!」

「いや、エイシス遺跡の攻略では俺にも(えき)があったし、戦い方を教えたって言っても方法だけ。俺の教えをかたちにしたのはレイシーだ」

「ロッドくん……」

「今日の勝利は、レイシーの努力の賜物(たまもの)(まぎ)れもなくレイシーの実力だよ」


 俺が事実を伝えると、レイシーは照れたようにはにかんだ。


「それで、用事ってなんだ?」


 レイシーが俺を呼び出したのは、用事があるかららしい。


 尋ねると、レイシーは顔をうつむける。


「その……リーリーの育成を手伝っていただいたとき、『必ずお礼をする』と約束しましたよね?」

「ああ。けど、わざわざお礼をしてくれなくても――」

「いえ! 是非(ぜひ)! 是非(ぜひ)させてください!」

「おおうっ!? そ、そうか」


 ガバッと顔を跳ね上げて、レイシーが身を乗り出してきた。


 その勢いに、俺は狼狽(うろた)える。


 なにを必死になっているんだろう? そこまで俺にお礼がしたいのか? 律儀(りちぎ)だなあ、レイシーは。


「じゃあ、どんなお礼をしてくれるんだ?」

「えっと……ですね……」


 苦笑しながら()くと、レイシーが口ごもった。


 頬を桜色にして、口元を波打たせ、逡巡(しゅんじゅん)するように視線をさまよわせ、


「ロッドくん!」


 目をバッテンにしながら、告げる。




「よ、よろしければ、一緒にお出かけしませんか!?」

「へ?」




 レイシーの発言に、俺の思考が一瞬止まった。


 のろのろと動き出した頭で、俺はレイシーの言葉を反芻(はんすう)する。


 一緒にお出かけしませんか? レイシーと一緒にお出かけ?


 もしかして、それってデー……


「お礼に、ご飯をご馳走(ちそう)させていただきたいのです!」

「ああ、ご馳走! ご馳走ね!」


 レイシーが付け足して、俺は冷や汗をかいた。


 あっぶねぇ、勘違いするとこだった! 「それってデートか?」って尋ねなくて、マジでよかったぜ!


「そういうことなら、喜んでご馳走になるよ」

「はい!」




     ⦿  ⦿  ⦿




 失態をおかさずに済んで安堵(あんど)しているロッドは、気付けなかった。


 レイシーが、『恋する乙女』そのものの顔をしていることに。

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