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結局のところ、やる気があるやつは応援したくなるのが人情。――14

「――はじめ!」


 リサ先生の手が振り下ろされた瞬間、レイシーが指示を出す。


「『スピードタックル』です、ピート! リーリーは『ビルドアップ』!」

『ワウッ!』

『リィ!』


 指示を受けたピートが弾丸の(ごと)く飛びだし、リーリーはグッと力を溜める。


『スピードタックル』は先制効果を持つ直接攻撃スキル。『ビルドアップ』は、自身のSTRを30%上昇させる強化スキルだ。


 ジェルフロッグ――ケロに猛スピードで突っ込んできたピートに、「いいっ!?」とケイトが目を()く。


『ゲロッ!』


 ピートのスピードタックルを受けて、ケロが苦悶(くもん)の鳴き声を上げた。


「バイト!」


 一拍(いっぱく)の間も置かずにレイシーが命じ、ピートが『ガウッ!』とケロに噛みつく。


 いいぞ、レイシー。先制効果を持つスピードタックルで急接近して、直接攻撃のバイトに繋げたか。


 バイトは直接攻撃だから、接近するまでに時間がかかる。その時間を、スピードタックルで0にした。実質的な連続攻撃だ。


 初手としては申し分ない。レイシーの努力が垣間見(かいまみ)える手だな。


「『ジャンプ』だよ、ケロちゃん! ガーちゃんは『飛翔』して!」

『グワッ!』

『クワァッ!』


 一手遅れて、ケイトが指示を出す。


 ケロが大きくジャンプしてピートと距離をとり、スカイホークのガーが翼をはためかせ、飛び立った。


 本来、『ジャンプ』は『相手からの直接攻撃を一度回避する』スキルだが、ゲームと違い、接近された状態から逃れるという使い方もできるらしい。


 そして『飛翔』は、スカイホークの固有アビリティ。その効力は、『直接攻撃を受けない』という強力なものだ。


 固有アビリティが強力な分、スカイホークのステータス平均は、ピートより下回っているが。


「追って、ピート!」

『ワンッ!』


 逃げるケロを追いかけようと走りだすピート。


「ガーちゃん、ウインド!」

『クワァッ!』


 それを阻止(そし)するガーの、風属性魔法スキル。


 距離をとることに成功したケロを眺め、レイシーが(しぶ)い顔をした。


『リリィ!』


 一連の攻防のあいだに、リーリーのビルドアップが発動していた。


 続けてレイシーが指示を出す。


「『コンセントレーション』!」

『リィ!』


 リーリーが祈るように指を組む。


 ビルドアップと同じ、自己強化スキル『コンセントレーション』。こちらはINTを30%上昇させるものだ。


 レイシーの指示に、ケイトが小首を(かし)げる。


「その子のSTRやINTを上げたところで、戦力にはならないよ?」

「それはどうでしょう? 戦力になるかどうかは、試してみないとわかりませんよ?」


 緊迫感からか頬に汗をかきながら、それでもレイシーは笑ってみせた。


「よくわからないけど、あたしは負けるつもりないからねっ」


 負けじとケイトが、むん! と薄い胸を張る。


「ケロちゃん、『ウォーターショット』!」

『グワッ!』


 ケロがプクゥ、と頬を膨らませた。


 レイシーの顔に緊張が走る。


『ウォーターショット』は水属性の魔法攻撃スキル。ピートの弱点だからだ。


「『ファイアボール』!」

『ワンッ!』


 とは言え、攻めの手をゆるめるのは悪手(あくしゅ)だ。


 レイシーはピートに攻撃を指示した。


『リィ!』


 リーリーのコンセントレーションが発動した直後、


『グワッ!』

『ワウッ!』


 ケロとピートの攻撃スキルが、ほぼ同時に発動した。


 放射状に放たれた水流と、バスケットボール大の火球が、空中で交差する。


 ピートが水流に、ケロが火球に襲われた。


『キャウンッ!』

『ケロロッ』


 しかし、反応は対照的だ。


 見るからに苦しそうなピートに対し、ケロは余裕とばかりにピョインピョインと跳ねている。


 やはり相性の悪さは大きい。おそらく、ピートがHPのほぼ半分を削られたのに対し、ケロが削られたのは1/8以下だ。

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