結局のところ、やる気があるやつは応援したくなるのが人情。――3
放課後、俺とレイシーは食堂にやってきた。
セントリア従魔士学校の食堂は、カフェとしても利用できる。
手伝ってもらうお礼にと、レイシーが奢ってくれたケーキをつつきながら、俺はリーリーの育成プランを伝えた。
「現状、ただレベル上げしても、リーリーが役に立つことはない」
「そ、そう、なん、ですか……」
見るからにションボリするレイシーに、「けど」と俺は続ける。
「それは『普通に育てた場合』の話だ。条件を満たせば、リーリーは真価を発揮できる」
「本当ですか!」
一転して顔を輝かせるレイシーに、「ああ」と頷き、俺は真剣な表情を向けた。
「ただし、その条件を満たすには、『エイシス遺跡』を攻略しないといけない」
「ダ、ダンジョンに潜るのですか!?」
目を丸くするレイシーに、俺はもう一度頷く。
『ダンジョン』とは、ヴァーロンの各地にあるモンスターの巣窟であり、『ロードモンスター』の支配領域だ。
ダンジョンの主である『ロードモンスター』は、従魔士の力をもってしても使役することができないモンスターで、ステータスが高く、HPバーも複数ある。
俺が言った『エイシス遺跡』は、セントリア北西にあるダンジョンだ。
「で、ですが、エイシス遺跡は、20レベルの従魔を使役する、従魔士の、タッグで攻略するのが推奨されているのですよね?」
レイシーが不安げな顔をする。
レイシーが心配するのも当然だろう。
従魔士が同時に戦闘で扱える従魔は、最大で3体。
タッグが推奨されているということは、エイシス遺跡の攻略には、20レベルの従魔が6体。少なくとも4体は必要になるということだ。
しかし、俺たちの従魔は、クロ(20レベル)とリーリー(1レベル)の2体だけ。エイシス遺跡を攻略するにはあまりにも心許ない。
まあ、なにも知らなければの話だが。
「やってやれないことはないぞ? ダンジョン内の構造も、出現するモンスターも、把握しているからな」
「ふわぁ……ロッドくんは博識ですね!」
レイシーが口を丸くして、感嘆の息をつく。
そう。俺にはゲーム知識があるから、エイシス遺跡に出現するモンスターの種類・属性・レベル・スキル構成や、エイシス遺跡の内部構造・モンスターの生息域・手に入るアイテムは、既に知っている。
ゲーム知識を駆使すれば、現時点でもエイシス遺跡の攻略は可能だ――唯一の障害を打破できれば。
「ただ、ひとつだけ懸念がある」
「懸念?」と、レイシーがコテンと首をかしげた。
「ロードモンスターである『メタルゴーレム』の固有アビリティだ」