離れていても力になれるって、案外本当。――6
ゲルド・アヴェンディの従魔2体を前にして、わたし――エリーゼ・ガブリエルとクレイド先輩は、打ち合わせしていた。
「土属性のファブニルは雷属性のボルトバーサーカーに強い。ファブニルはボルトバーサーカーに当てましょう」
「わたくしのティターンは氷属性、ティアは水・光属性。ティターンはスリーアイズフォックス。ティアはボルトバーサーカーと相性が悪いですね」
「鋼・光属性のゲオルギウスも、ボルトバーサーカーと相性が悪い。ティアとゲオルギウスは、ボルトバーサーカーの相手をしないほうがいいでしょう」
「では、ティターンとファブニルさんをボルトバーサーカー。ティアとゲオルギウスさん、そしてチェシャをスリーアイズフォックスに当てましょう」
「了解です」
打ち合わせを終えたわたしたちは、背後にいるレイシーとアーディーくんに声をかける。
「レイシー、アーディーくん。きみたちは、今回の戦いに参加しないほうがいいだろう」
「わたくしもエリーゼさんと同意見です」
思いも寄らない発言だったのか、レイシーとアーディーくんが目を丸くした。
「ど、どうして!?」
「わたしたちも力になりたいです!」
食い下がるレイシーとアーディーくんに、クレイド先輩が静かに説く。
「レイシーさんとケイトさんの従魔は、ゲルドさんの従魔と戦うにはレベル不足。手も足も出ずに敗れることでしょう」
クレイド先輩の指摘に、レイシーとアーディーくんは「う……っ」と怯んだ。
それでもふたりは、瞳に火を灯して訴える。
「け、けど、黙って見ているなんて無理です!」
「わたしたちに、なにかできることはないのでしょうか?」
ふたりの意をくみ、わたしたちは提案した。
「では、ポーション供給のお手伝いをしていただけないでしょうか? わたくしたちは、ゲルドさんの相手に集中しますので」
「ゲルド・アヴェンディは強敵だ。一瞬たりとも気は抜けないだろう。ポーション供給をきみたちに担当してもらえれば助かる」
「……わかりました!」
「ポーション供給はわたしたちに任せてください!」
グッと拳を握って、アーディーくんとレイシーが請け負った。
ボルトバーサーカーとスリーアイズフォックスが、ジリジリと近づいてくる。
わたしとクレイド先輩は、それぞれの従魔に指示を出した。
「ファブニルはボルトバーサーカー! ゲオルギウスはスリーアイズフォックスを倒してくれ!」
「ティターンもボルトバーサーカーの相手を! チェシャとティアはスリーアイズフォックスをお願いします!」
『GOOOOOOHH!』
(コクリ)
『OOOOOOHHHH!!』
『ミャオ!』
『ラー!』
それぞれの従魔が配置につき、わたしたちは戦いをはじめた。
「チェシャ、『ヒーリングフィールド』! そのあとヴァーティゴです!」
『ミャア!』
『アートフルキャット』のチェシャは、『攻撃スキルのチャージタイムが2倍になるが、それ以外のスキルのチャージタイムが0秒になる』固有アビリティ『狡猾』を持っている。
ヒーリングフィールドもヴァーティゴも攻撃スキルではないので、即座に発動可能だ。
チェシャの鳴き声が響くとともに、わたしたちの従魔の周囲が、淡い緑色の光に包まれた。『10秒毎に、味方のHPを最大値の1/12回復させるフィールドを、1分間展開する』魔法スキル『ヒーリングフィールド』だ。
『ミャオッ!』
チェシャは続いて、相手を『目眩』状態にするヴァーティゴを用い、スリーアイズフォックスの視界を歪ませる。
『キュオ!?』
スリーアイズフォックスが、ふらふらと頭を揺らしはじめた。『目眩』に陥ったのだ。