ダンジョン攻略は、予備知識で決まる。――5
『クワァッ!』
ガーガーも加勢する。フリージングウインドを発動させ、エイシュゴーストに冷気を放った。
氷属性も木属性と同じく火属性に弱い。そのため、与えたダメージは微々たるものだったが、
『モ……!』
追加効果が現れた。
冷気を浴びせられたエイシュゴーストが、ブルルッ、と震え、DEXが減少する。
「次はサイクロンショット!」
『クワァッ!』
さらに、風属性魔法攻撃スキルの準備。
ガーガーが翼をはためかせ、大気をうねらせる。
『ワウッ!』
チャージタイムを終え、ピートのフレイムキャノンが発動した。
蓄えていた紅蓮の炎を、砲弾として吐き出す。
『モ……!』
着弾。
爆発。
レイシーがメニュー画面を見て、ふぅ、と息をつく。
「ようやく半分まで削れました」
「ガンガン行こう、レイシー!」
「はい! シャープファングです!」
『ワゥッ!』
ケイトに答え、レイシーが続いての攻撃指示を出した。
『モ!』
『ゲロッ!』
エイシュゴーストとケロの攻撃スキルが、同時に発動する。
抱えていた石片から伸びた闇の触手がケロに、地面から生えた無数の荊がエイシュゴーストに、絡みついた。
ケロとエイシュゴーストが、互いにHPを吸収し合う。
『ゲロ……ッ!』
『モ!』
より多くHPを吸収したのはエイシュゴーストだった。苦しむケロに対し、エイシュゴーストは余裕そうだ。
仕方ないだろう。ケロのドレインソニアは木属性で、このエイシュゴーストは火属性。火属性は木属性に強く、半分のダメージしか入らないのだから。
『モ……!』
エイシュゴーストが、再び石片を掲げた。
ついに来たか!
そのモーションからエイシュゴーストが使おうとしているスキルを見抜き、俺はレイシーとケイトに忠告する。
「レイシー! ケイト! エイシュゴーストはハイヒールを使うつもりだぞ!」
「「ええっ!?」」
レイシーとケイトが目を剥いた。
それもそうだろう。なぜなら――
「やっと半分まで削ったのに、振り出しに戻っちゃうんですか!?」
ハイヒールは『最大HPの50%分、HPを回復する』スキルなのだから。
「阻止するには、チャージタイムの5秒以内にエイシュゴーストを仕留めないといけないな」
「無理無理無理! こんな硬いやつ、5秒以内に倒すなんて無理だよ!」
ケイトが血相を変えた。
慌てふためくふたりを眺め、俺は苦笑する。
盾役との戦い方は、まだまだ未熟だな。
リーリーのギフトダンスによる支援でなんとか勝利を収めたが、ふたりがエイシュゴーストを倒すまでに、20分もかかってしまった。