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弱小モンスターが大器晩成型なのは、育成ゲームではよくある話。――12

「続けて行くぜ! 『アブソーブウィスプ』だ!」


 1秒の間も置かずに指示を飛ばし、クロが再び力を溜めた。


 遅れてカイザーのエレキチャージが発動。


 カイザーの体がバチバチと帯電する。これで、カイザーの雷属性攻撃は、威力が1.5倍になった。


 しかし、カールの顔付きに余裕はない。後手に回っていると理解しているからだろう。


 チッ、と舌打ちして、カールが手を振った。


「『ライトニングショック』!」

『ガウッ!』


 カイザーが()える。


 カイザーの頭上に電気が集い、球体を()した。


 雷属性の魔法攻撃スキル、『ライトニングショック』。


 それよりわずかに先に、クロのスキルが発動する。


『ピィッ!』


 クロの体から、紫色の火の玉が浮かび上がり、カイザーにまとわりついた。


 10秒間に一度、最大HPの1%を相手から奪う魔法スキル、『アブソーブウィスプ』だ。


「小細工だけは得意なようだが、1%奪われたところで痛くも(かゆ)くもない! こちらにはそれ以上の火力があるのだからな!」


 カールが強気に言い放った直後、カイザーのライトニングショックが発動する。


 雷球が射出された。


 さーて、当たるか外れるか。外れるならそれでよし。当たるようなら、こちらも一手(いって)打たないとな。


 カイザーは『目眩』状態になっているため、50%の確率で雷球は外れる。


 俺は雷球の軌道を注視し、推測する。


 ――これは外れるな。


 明らかにズレている。雷球の軌道の先にクロはいない。


 俺の推測どおり、雷球はクロの右斜め後ろに着弾した。


 よしよし! いい流れ、いい流れ!


「クソッ! ()()ましい!」


 俺がグッと拳を握る一方、カールは地団駄(じだんだ)を踏んだ。


 クールタイムが6秒あるため、そのあいだカイザーは、ライトニングショックを使えない。


 カールが苛立たしげに親指の爪を噛む。


 そして6秒が経ち、


「もう一度『ライトニングショック』だ!」


 怒鳴るようにカールが指示を出し、再び、カイザーが雷球を作りはじめる。


 しかし、そのときには(すで)に、アブソーブウィスプの発動から10秒が経過していた。


 HP吸収が発動する。


 カイザーの体から光の粒子が発生し、フヨフヨと宙を漂う紫色の火の玉に吸い込まれる。


 俺は牙を()くように笑った。


「さあ、とくと見やがれ! これがクロの真骨頂だ!」

『ピィィィ……ッ!』


 カイザーのHPを吸収したクロの体がウニョウニョと(うごめ)き、ムクムクと膨張して――




『ピッ!』

『ピィッ!』

 鳴き声とともに、クロの体から()()()()()()()が飛び出した。




「「「「「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?」」」」」


 俺とカールの勝負を観戦していたクラスメイトたちが、驚愕(きょうがく)の声を上げる。


「ななななんだ、それは!」


 カールもわけがわからないと言いたげな顔付きで、二体に増えたクロを指差した。


「『固有アビリティ』だよ」


 俺はピン、と人差し指を立てて説明する。


「お前も知ってるだろ? モンスターが種族ごとに、『固有アビリティ』っていう特性を持っていること」

「当たり前だ! 僕のカイザーも、物理攻撃を受けたときに5%の確率で反撃する『放電(ほうでん)』を持っているしな!」


 だが、


「分身を生み出す固有アビリティなんて、見たことも聞いたこともないぞ!」

「あれ? 知らないのか? ブラックスライムの固有アビリティなんだけど」


 ブラックスライムの固有アビリティは『分裂(ぶんれつ)』。


 HPが3/4以上残っている状態でHPを回復した際、本体と同じステータスとスキルを持った分身を生み出すアビリティだ。


 ちなみに、分身の残HPは、本体が得たHPと同量となる。


「知るわけがあるか! そんな弱小モンスターの固有アビリティなんて、気にするまでもないだろう!」


 わめき散らすカールに、俺は溜め息をついた。


「気にするまでもない、か。そんな慢心(まんしん)があるから、お前は三流なんだよ」

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