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能力でぬか喜びされる人の身にもなってほしい

目を開けると、異世界だった。


「死んだ覚えはないんだけど……」


魔法陣の真ん中にあぐらをかいて座っている俺。

目の前に女性が見える。装飾まみれの黒ローブをしている。

目をこすった。夢ではなさそうだ。


「おめでとう、未来のチャンピオン。集合世界(ヨーテル)へようこそ」


「俺は転生したんですか」


「そういうことだ」


「俺はどうやって死んだんですか」


「それは……追い追い説明しよう。大事なのは、君がここで何をできるか、だ」


話題を逸らされた。


「利き手は?」と魔女。


「右利きですけど」


「この水盆に右手の人差し指で触れてごらん。水面のまんなかをね」


水に触れる。なにも起こらない。


「妙だね。失敗かな」


「さらっと言わないでくださいよ」


異世界に来たら異能に目覚める、と思っていたけど


「がっかりするなよ、少年。水盆は便利だが万能じゃない。何かあるはずだから」


女は棚をガサガサと漁ると黒いリコーダーのようなものを渡してきた。


「これを握ってしばらく目を閉じていたまえ。私は他の試料(テスター)を探してくるよ」


彼女はバタバタと部屋を出て行った。

俺は言われた通りに右手で握り、目を閉じて待った。


「……なにも起こらないな」


楽器がひとりでに音楽を奏でるでもなく、火花を散らすでもなく、植物が芽吹くような気配もない。


魔女が戻ってくる靴音がした。


診断笛(ダイアグノーラ)はどうした? 握っていろと言ったが」


「どうしたって、握ってますけど」


「ないじゃないか!」と女は叫んだ!


「エッ、だってほら……あれ?」


俺は自分の右手を見た……何も持ってない!


「消えたのか? 本当に握っていただけなんだな?」


魔女は興奮気味に叫ぶと、俺の両手を握った。


「やったぞ! 虚無系(インヴォイド)だ! キミと私なら天下を取れる! はれるーや!」


「あの、虚無系って何ですか?」


「触れたものを消す能力だよ! あらゆる魔法のカウンターになりうる! 訓練すれば最強だ!」


魔女はさっきの水盆をまた引っ張りだしてきた。


「こんどは触れるだけじゃなく、指を中までつっこんでごらん」


言われた通りにすると、水かさが減った。


「間違いない!」


魔女は小躍りした。


「キミ、名前は何だい?」


「俺、(ゆう)っていいます。右島優(みぎしまゆう)


「改めておめでとう、優!」


落ち着かず、部屋を往ったり来たりしている。


「さて、私のもとに虚無系が舞い込むなんて何年ぶりだろう。育成プランをまとめないと……」


ゴトッ

魔女が何かを蹴った音だ。


見ると、さっきの黒いリコーダー。


「ア……?」

俺の口から間抜けな音が漏れた。


「キミ……まさか診断笛(ダイアグノーラ)を落としただけ、なんて言うんじゃないだろね……?」




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