第三百九章 菊子、人質になる
ある日菊子がアイドルスターとしてサイン会を行っていると、銀行強盗団が警察に追われてサイン会場に逃げ込んで来ました。
ファンの中には小さな子供も大勢いて、犯人はアイドルスターも人質としては効果がある為に、子供一人と菊子を人質としてその場に残し、その他のファンやスタッフを会場から追い出して、立て篭もりました。
菊子は子供も人質になっていた為に、犯人の出方を伺っていました。
菊子の事を知っている安藤刑事は、自分が丸腰で交渉に行けば、犯人は自分に気をとられて菊子の事はそんなに気にしないと判断して、その間に菊子が犯人を取り押さえてくれるかもしれないと期待して、丸腰で両手を挙げて、乗り込んで行きました。
安藤刑事は、「要求は何だ!」などと犯人と交渉していると、犯人が安藤刑事に注意を引かれて子供から離れた一瞬のスキに菊子が犯人全員倒しました。
犯人が立て篭もったのはサイン会場で、テレビカメラもセットされていた為に、刑事達はその時の映像を見ていました。
ある刑事が、「お前、このアイドルスターが犯人と争っている時に、助けようともせずに子供を保護しているのは何故だ?人質は子供だけじゃなく、アイドルスターも人質だと忘れてないか?」と安藤刑事の行動が理解できない様子でした。
安藤刑事は、「説明しても信じて貰えないと思うからから、それは想像力豊かな、お前の想像に任せるよ。」と返答しました。
その刑事は、「信用するかどうか言ってみろよ。」とその理由に興味がある様子でした。
上司が、「何か理由があったのかね?そうでなければ、一般市民に危険な事をさせたと避難されるぞ。それも相手は人気アイドルスターだから、ファンから苦情の電話が殺到する事が予想されます。何故君はこのような行動を取ったのだね?」と今後の事を心配していました。
安藤刑事は止むを得ず、「私が下手に加勢すると、足手纏いになると思ったからです。あの人気アイドルスターは、反則を売り物にしている全戦連勝の謎の覆面女子レスラーです。良く映像を見て下さい。彼女が使っているのは覆面女子レスラーの得意技ばかりでしょう。五人の男性、それも体のがっちりした男性を簡単に打ち負かし、息切れもしていない事から、余裕で打ち負かしたと考えられます。どうですか?この説明を信用して頂けますか?」と信じて貰えないと思いつつも、上司からの指示でしたので説明しました。
上司も半信半疑でしたが、彼の説明も納得できる内容でしたので、否定も肯定もしませんでした。
上司は暫く考えて、「世間を納得させる為に記者会見の準備をしておかなければ、この映像を公開すれば、マスコミからの問い合わせが殺到すると予想されます。君の言っている事が真実であるかどうかは別にして、人気アイドルスターが悪役レスラーだったなんて事を発表すれば、それこそファンを怒らせて連日苦情の電話が殺到する可能性があります。何か別の内容を検討した方が良いと思います。」と指示しました。
安藤刑事は、「彼女と相談しますので、少し時間を下さい。」と返答しました。
安藤刑事は、相談すると言っても人気アイドルスターの連絡先は公開されていない為に、どうしようかと迷い、警察手帳を使うのも気が引けました。
色々と考えていると、淑子の事を思い出して、“そう言えば、あの子は最初から覆面女子レスラーの正体を知っていたが、知り合いなのかな?連絡先も知っているのかな?”と期待して淑子に確認しました。
淑子は、「私は知らないわよ。確か芹沢外科医院の院長先生と親しくしています。芹沢先生でしたら何か知っているかもしれないので聞いてみたら?」と返答しました。
安藤刑事は芹沢外科医院に渚を訪ねて、先日の事を説明し、「どうしようかと困っています。菊子さんと相談したいので、連絡先を教えて頂けませんか?」と依頼しました。
渚は、「連絡先は個人情報ですので、菊子さんの了解がないと刑事さんに教える事はできません。今、連絡しますから一寸待って下さい。」と返答して、菊子の携帯に電話すると、電源が入っていないか電波の届かない場所にいる事を伝えるメッセージが流れてきました。
渚は意思波で菊子と連絡を取り、恰も携帯で電話しているかのようにしました。
「菊子さん、あなた先日のサイン会場での事件の時、あの場所にテレビカメラがあった事を知っていたのでしょう?あなたが強盗団を撃退していたから、刑事さんが子供を保護する役目に回り、マスコミからアイドルスターに危険な事をさせたと避難されそうで困っているわよ。刑事さんが菊子さんと相談したいと言っているわよ。どうするの?」と何か考えがあるのか期待していました。
菊子は、「ドラマのロケで使う特撮の事で、成美ちゃんに聞きたい事があるので、今夜あなた方の家へ行きます。刑事さんにも家に来て貰って。」と直接会って話をしようとしていました。
渚は安藤刑事に、「菊子さんは今晩、私の家に来ますので、刑事さんも私の家に来て下さい。」とあとは菊子に任そうとしていました。
安藤刑事は、「それでは、今晩お伺いします。」と安心して帰って行きました。
安藤刑事が帰った後に渚は再び菊子に意思波で、「菊子さん、携帯の電源入っていないわよ。所で特撮の事で成美ちゃんに聞きたい事ってキングコブラの事なの?成美ちゃんがキングコブラを家に連れて来たらどうするのよ。刑事さん、腰を抜かすわよ。」と心配していました。
菊子は、「キングコブラではなく、ニシキヘビの事よ。まさかあんな大きなヘビは連れて帰らないでしょう。」と安心させました。
渚は、「相手は成美ちゃんよ。少しでもヘビと一緒にいたいから、仕事だとか何とか理由をつけて、トラックを借りてでも連れて来るわよ。」と油断しないように忠告しました。
菊子は、「社長はヘビが苦手なマーガレットよ。社長として許可しないわよ。」と安易に考えていました。
その夜、菊子や成美より安藤刑事が先に来ました。
渚が、「菊子はまだ来ていないけれど、もうすぐ来ると思います。」と雑談していると菊子が来ました。
菊子は、「成美ちゃんは、まだ帰っていないの?」と成美を捜していました。
安藤刑事は、「菊子さんは、その成美さんという人に用事があるのですか?」とどんな用事なのか興味がある様子でした。
菊子は、「成美ちゃんは芹沢先生の妹で、特撮会社のヘビ専門の常務です。ドラマのロケで成美ちゃんの会社にヘビの特撮をお願いしたから、ヘビと接する時の注意点など、色々と話を聞こうと思ったのよ。」等と雑談していました。
やがて成美が帰って来て菊子が、「ほら、渚、ニシキヘビは連れて来てないじゃないの。あんな小さなカバンにニシキヘビは入らないわよ。」と安心していました。
成美が、「ニシキヘビは入らなくてもキングコブラなら入るわよ。」とキングコブラをカバンから出して成美の腕に巻き着かせました。
菊子は驚いて、「一寸成美ちゃん、今回のロケはニシキヘビじゃなかったの?」と焦っていました。
成美が、「先程監督から連絡があり、キングコブラに変更するらしいわよ。」と嬉しそうでした。
菊子は、「成美ちゃん、まさか監督を説得したの?キングコブラに噛まれると絶対に助からないんでしょう?近くに来ないで!私、明日事務所に事情を説明して今回のドラマ降りるわ。」とキングコブラと聞いて逃げようとしていました。
成美は、「何故?こんなに可愛いのに。」とキングコブラの頭を軽く数回叩いていました。
渚が慌てて、「一寸、成美ちゃん、そんな事しても大丈夫なの?キングコブラが興奮して暴れない?」と焦っていました。
成美は、「何を心配しているのよ。全然問題ないわよ。」と冷静でした。
安藤刑事が、「菊子さんもドラマを降りると言っている為に、そのキングコブラは今夜出番がないですよね。カバンか檻か何か適当な物に入れて絶対に出さないで下さい。キングコブラは非常に危険な生き物ですよ。あなた本当に解っていますか?」とキングコブラを甘く見ているようでしたので警告しました。
成美は、「キングコブラの事は良く知っていて私には何でも解るわよ。」と知らないから怖いのだろうと感じました。
渚が、「成美ちゃんがヘビ、特にキングコブラに詳しい事は知っていますが、今、刑事さんが言ったように絶対出さないでよ。菊子さんは帰るから良いけれども、私は一晩キングコブラと同じ屋根の下で寝るのよ。それとこの事は社長のマーガレットは知っているの?」と不思議そうでした。
成美は、「社長決済ではなく、常務決済でキングコブラを連れて来たからマーガレットは知らないわよ。」と返答しました。
渚は、「マーガレットには内緒にしないと、またダウンするわよ。」と警告しました。
安藤刑事は、「以前何かあったのですか?」と昔何があったのか知りたそうでした。
渚は、「以前、この家で成美ちゃんがニシキヘビを飼っていて、それも家の中で放し飼いだったので、マーガレットが精神のバランスを崩し、暫く別の場所で休養していた事があったのよ。」と簡単に説明しました。
安藤刑事は、「そうでしたか。私は、毒蛇にでも噛まれたのかと思い驚きました。そのマーガレットさんは大丈夫でしたか?」と心配していました。
渚は、「今は大丈夫ですが、以前そのような事があった為に、この家にヘビがいると知っただけで精神のバランスを崩す可能性があります。」と内緒にする理由を説明しました。
成美がキングコブラを通気性の良いヘビ運搬用のカバンに入れて隠しました。
やがてマーガレットが帰って来ると、マーガレットは、「お客さん?菊子も来ていたの?」と何をしていたのか知りたそうでした。
菊子は、「先日のサイン会場での事件の事で、刑事さんが相談があると言うものだから、ここで話を聞く事にしたのよ。ね、刑事さん。困っている事って何ですか?」とキングコブラの話題から離れました。
安藤刑事は、今、困っている事を説明して、「菊子さん、どうすれば良いか困っています。何か良い方法はありませんか?」とやっと本題に戻ったと安心して相談しました。
次回投稿予定日は、10月31日です。




