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地球歴2XX5年6月27日

地球歴2XX5年6月27日


今日は初めてこの星のものを口にした。

科学者の俺が人体実験の被験者だ。なぜかというと、くじ引きで引き当てたからだ。

今のところまだ生きている。未知の毒はなかったようだ。副作用も起こってない。

明日の朝になったら、もしかしたらイモムシか何かに変身してるかもしれないが、まあ、多分大丈夫だろう。これまでさんざんすり潰しては解析器にかけて調べてきたのだ。人体に有害な物質は含まれていなかった。

なににしても、美味しかった。重畳である。不味いよりは美味しい方がいい。

海からとったから、海藻と言うのがふさわしいかもしれないが、外見はまるっきりスイカだった。味はマンゴーに近い。

本当に、おまえたちに食べさせたかったよ。驚いて、笑いだすのが目に浮かんだよ。

口の中でするりと溶けるんだ。食べ残りは放っておくと、約七時間で白く変色して溶けていく。だからとっておけない。その昔、神が天から降らせて与えたマナのように。

この星に神はいるのだろうか。

いずれにしても、母船を呼ぶときには、ここも、こんなもぎたての不思議はなくなってしまうんだろう。

すべての現象を解析し尽くした後、危険をあらゆる方法で取り除き、欲しいものだけを欲しいときに欲しいだけ手に入れられるようにする。

俺はそのためにいる。

おまえたちは、俺を叱るかもしれないけれど。

俺は




これが、俺がおまえたちに本当に見せたかった世界だよ。


       (添付動画)


  夢の続きを見ている。そんな風景。

  リボンのようにたなびく雲。

  刻一刻と姿を変える大地。それはまるで海が波打っているようで。

  なのに彼は、沈みもせずにそこに立っている。

  足下の青い塊は水らしい。彼はそこに無造作に手を突っ込んだ。

  ゼリーに手首が飲み込まれて、そこだけが窪む。底は見えない。

  握った手が引き抜かれると、滴の一つも落ちずに、

  黄色い果実に似たものが取り出された。夏みかんにそっくりだ。

  力を入れて指を立てると、その中から初めて水と呼べるものがほとばしった。

  さらに左右に引き裂く。

  と、キラキラ光るものが跳ねた。下にボタボタ落ちる。

  青い塊に飲み込まれていく。

  魚だろうか。

  いや、羽がある。銀色の鳥だ。

  『鳥の隠れ家だ。こいつらはエラで呼吸するんだ』

  掌の中に残った一羽を、カメラによく見せようと持ち替えたとたん、

  銀の鳥は、ギラギラともがいて、指の間からこぼれ落ちた。

  『あっ』

  まぬけな声が響く。

  彼が気まずそうな顔でカメラに手を伸ばし、画像が途切れた。

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