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少女side 甘酸っぱい日常

この小説は小説『牢獄都市』のスピンオフ、もとい番外編です。キャラの性格が原型を止めていません。

 脳裏にノイズが走った。だんだんノイズは広がって、次第に思考を埋め尽くす。頭痛がしてきて顔をしかめる。だんだん夢と現実の境が曖昧になる。何だか全てが鬱陶しくなる。無意味に叫びたくなる。そうして少女は、思考を手放した。

 何だか悪夢を見ていたみたい。少女は目覚めてすぐにそんなことを考えた。リビングに行くと朝食が用意されていて、いただきますの挨拶をして食べはじめる。朝食を摂りながら、他愛ないことを考える。長い間、とんでもない悪夢に囚われていたのかな。まだふわふわした感じが残っている。両親は共働きで家に居るのはもう少女だけ。支度を手早く済ませ、鍵を持って家を出た。

 登校の途中、またどうでもいいことを考える。昨日見た夢、楽しかったような気もする。でもそれ以上に、退屈だった。それだけは確信できる。そんな些末な問題は棚に上げて埃がつくまで放置していればいいけれど。目下の問題はそんなものじゃなかった。同じクラスの平凡だけど、どこか魅了のある男の子。その子が気になって仕方ない。普段あまり喋らないから、急に話しかけたら避けられるようになるかもしれない。ことは単純で、けれども深刻だった。

 教室に着いて、あまり大きくない声で挨拶する。最初にこんな習慣を作ったのは誰なんだろう。不特定多数の人に挨拶する意義が見いだせないし、教室にいない人には挨拶しないというのも間違っている気がする。そもそも、発表する時とか、演説する時とか以外に大勢に挨拶する必要は無いんじゃないかな。挨拶するなら個別にすればいい。不満を思考に反映しつつ、教室に素早く目を走らせて見る。あの男の子はいなかった。残念だけど、いないのはしょうがない。あの子は遅刻や欠席は滅多にしないし、待っていれば来るだろう。席に着きながら、私はそんなことを考えた。

 根暗で内気、さらにはオタク。それがクラスの中での私の印象だ。交友関係も狭ければ、休み時間には読書ばかりしているから、仕方ないといえば仕方ないのだろうけど。それでも陰口を叩かれるのは気になる。そもそも陰口とは本人には聞こえない場所で話すから陰口なのであって、見た目ヒソヒソ話していても、こうも大きな声で話していれば、聞こえてしまうだろう。そんな簡単なことがわからないのだろうか。それとも、わかっていてやっているのだろうか。どちらにせよ、あまりいい気分はしない。黙れよ、と思いながら小説を読んでいると、あの男の子が教室に入ってきた。その瞬間、教室が灰色でつまらない世界だったのが、途端に色を取り戻し、面白いことを面白いと認識できるようになる。

 そんな概念は小説でしか見たことがないが、これが恋という感情なのだろうか。なにぶん、恋愛小説はまだ今のイメージが根付いていなかった頃に散々読ませられたチープで一辺倒な作品のため、古典文学などの面白さが保証されているものしか読まなかった。だから、この感情に相応しい名前がわからない。でも、昨日見た夢の中にもあの男の子は出ていた気がするし、運命を感じるにはそれなりに材料が揃っていた。暇になるとつい溢れ出す無意味な思考の奔流に呑まれながらあの男の子を見ていると、目があった。軽い会釈と共に挨拶される。ぎこちないながらも、何とかそれに挨拶を返すことができた。彼が友達に呼ばれてこちらから目を逸らすと、私は顔を両手で覆い隠した。嬉しいという感情が、激しく自己主張する。鏡が無いのでわからないが、今の私の顔は真っ赤になっているに違いない。それでも、会話できただけだいぶ進歩したんじゃないだろうか。何せ今までならば、挨拶を返すこともままならないだけに止まらず、ろくにろれつの回らない舌で色々まくし立てていただろう。そんな事態が回避出来て本当に良かった。今度余裕があったら遊びに誘ってみようかな。ひかれないと良いけど。不気味な笑いを漏らしていることに自分で気がつかないまま、少女はふふふ、と笑いを漏らしていた。

読了ありがとうございました。

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