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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第4章 復讐の先へ
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幕間 神々の集い


予告もあるのであとがきも読んでください。


 


 コツコツと、洞窟内に足音が響く。その足音と共に、私は懐かしい気配が近づいてくるのを感じた。


「久しぶり」


 そして一人の少年が姿を現した。緑色の髪の、私の弟だ。


 弟は私だけに挨拶をしたわけではない。ベッドで横たわる私の周りに3人の男女がいた。私と弟を含めて5人。洞窟内に灯りはない。それでも私達はお互いの姿がはっきりと見えた。


「私達が集まるのは本当に久しぶりねぇ。200年ぶりぐらいかしら~」


 のんびりとした口調で喋るのは1番上の姉だ。くすんだ茶色の長髪を伸ばしている。そしてメリハリのあるその体には太い縄のような物が巻き付いているだけだ。


「俺達はお互いを視ることだけはできないからな。変わりないようでよかった」


 赤い髪の兄が無表情の中に少し喜びを浮かべて呟いた。上から2番目の兄だ。


「はぁ?変わりない?バハグ兄それ本気で言ってんの?」


 その2人に短い金髪をボサボサなまま放置している、上から3番目の姉が肩を怒らせながら言った。肌はチョコレート色で、胸は無いに等しい。


「それならこの愚妹はどうなのさ!」


 そう言って金髪の姉ーータラニスが私を指差す。愚妹、か。まあ、言い返せないわね。


「イースも含めて、だ」


「そうねぇ。イースはずっと私達の存在に疑問を持ってたし、別に変わったとは思わないわねぇ」


 1番目の姉キシャルと2番目の兄バハグはそうは思わないみたいだ。私の擁護をする。


「2人共本気で言ってんの?おい、エンリルは?」


 ニス姉は私達の末の弟、エンリルを睨みつけて尋ねる。


「ん?いや、俺もイース姉は何も変わってないと思うけど」


 それを受けたエンリルは、緑色の髪を弄りながら当然のように答えた。ニス姉は目に見えて不機嫌になる。が、私には関係ない。


「ほんと、久しぶりね」


「あら、起きてたのねイース」


 私の発した声に、シャル姉が真っ先に反応する。嬉しそうな声音だ。それに続いて兄さん、エンリル、そして最後にニス姉が反応した。でも今は、そんなことどうでもいい。それよりも、


「エンリル」


 私は弟の名前を呼ぶ。思ったよりも硬い声が出た。


「な、なに?」


 エンリルは少し怯えたような反応を見せる。当たり前だ。私が怒っているのだから。


「あなた、あの子(・・・)と会ったわね?」


 今度こそ、エンリルはびくりと肩を跳ねらせた。私はベッドから体を起こし、本気で弟を睨む。怯えた弟は、終いにはガタガタと震えだした。


「そこまでだ」


 と、兄さんが私とエンリルの間に入り、視界を遮った。私はため息をつく。


「はぁ、分かったわよ。で、なんで会いに行ったのかは教えてくれるのよね?」


 それはもちろん、エンリルへの質問だ。彼もすぐに答える。


「た、単に興味があったからだよ。俺達の中で一番強くて、一番賢いイース姉さんが興味を持って、育てた人間に。だから、どんな奴か見ておきたかったんだ」


「それで?」


「……え?」


「だから、それで?手は出してないでしょうね?」


 自分でも気付かないうちに、殺気が漏れ出していた。エンリルはまたも震え出す。弟はすぐに怯える。


「はい、終わりぃ〜」


 今度はシャル姉が、手で私の目を覆った。気の抜けたその声に、私も勢いを削がれる。


「全く、イースったらどうしたのぉ?そこまで怒らなくてもいいんじゃない?」


「……そうね」


 確かに少し、ムキになりすぎた。でも、これ以上私達()があの子に干渉するのは避けたい。あの子にはあの子の道があるのだから。


「ちょっとだけ会話はしたけど、それ以外は何もしてない。ごめんよ、イース姉さん。そんなに怒るとは思わなかったんだ」


「いいわ、こちらこそ悪かったわね」


 私は改めて横になった。また、眠気が襲ってくる。最近は常にこうだ。


「なあ、イース」


 と、そこでニス姉が声をかけてきた。正直体が怠くてめんどくさいけど、そちらに顔を向ける。すると、ニス姉はこれまでにないほど真剣な表情を浮かべていた。


 なるほど、何を聞くつもりかは分かった。


「なに?」


「お前……あと、どれぐらいだ?」


 ニス姉がそう聞いた途端、私の視界が揺らめいた。次の瞬間、私の前にはニス姉の襟元を掴み、壁に押し付けている兄さんがいた。


「タラニスッ!!」


 兄さんが珍しく声を荒げる。それが私のためだというのだから、少し嬉しい。ただ、炎楼まで使わなくていいのにとは思う。


「なっ、なんだよ!」


「お前、自分が何を言ったのか理解しているか!?」


「るっさいな!間違ったことは言ってないだろ!?」


 兄さんは、優しい。ただ、正しいのはニス姉だ。私はこう(・・)なるのは分かっていたし、覚悟していた。だから、誰にも文句は言わないし、言わさない。


「……兄さん。離してあげて」


「………」


 私の声か、それとも表情か。何で判断したのかは分からないけど、私の胸中を全て理解した兄さんは諦めたかのように手を離した。


「ニス姉。正直自分でも分からないわ。でも、推測でいいならあと一、二ヶ月ぐらいでしょうね」


「……そうか」


 それっきり、洞窟内には沈黙が流れた。数秒か、数分か、数時間か、もしくは数日か。

 この空気を作ったのは私が原因だが、他にどうしようもない。まさか、嘘を吐く訳にもいかないし。


 また、体が怠くなってきた。眠たい。


 ……まあ、いいか。寝てしまおう。


「……なあ」


 そんなことを考えていると、ニス姉がまたも話しかけてきた。私にこんなに話しかけるとは、珍しいこともあるものだ。


「なにかしら」


「望み、とかないのか?私にできることなら、叶えてやる」


 私は思わず苦笑した。神である彼女タラニスが、神であるイースの願いを叶えると言うのだ。笑えない冗談だ。


 でも、ニス姉は本気で言っているのだろう。実際、今も私を真剣な顔で見ている。ニス姉はニス姉なりに、私の力になろうとしているのかもしれない。ただ、生憎と私には望みなんて……


「リアム」


 気付けば、私は呟いていた。無意識に、だ。


「リアム。リアムに、会いたい」


「リアム?それってあの、人間の弟子か?最後の最後に弟子に会いたいのか?」


 訳が分からない、とニス姉が混乱している。見れば、兄さんとシャル姉も同じだった。唯一、エンリルだけが納得顔だ。そっか、この子はリアムに会ったんだっけ。


「ええ、そうよ。ニス姉、私はリアムに会いたいわ」


 瞼が重い。早く寝たい。


「それで、いいんだな?」


 ニス姉が確認するように尋ねてきた。私は無言で頷く。


「……分かった。私がそいつを連れてきてやる」


 ニス姉のその言葉に心から感謝し、私は意識を手放した。




 


 これで第4章は全て終わりです!読んで下さった方々ありがとうございました!


 はい、次回からは第5章ということになります。ここまで結構飛ばしてきたので、次の更新がどれぐらいになるか分かりませんが、そこまで遅くならないと思います。恐らく、最初は人物紹介とかになるかと。


 さて、次からは新編です。とは言っても次が最終編ですが。登場人物が増えたり話がややこしくなったりするかもしれませんが、最後まで付き合ってもらえれば幸いです。それと、評価や感想をいただけたら泣いて喜びます。


 そして、ちょっとしたノリで次編予告を書いてみました。イメージ的には映画の宣伝。字だけの予告なんで難しかったですが、とりあえずやってみたって感じです。なので軽〜〜い気持ちで読んでもらえたら、と。ただ、若干ネタバレも含んでますので、そういうのが嫌な方は見ない方向でお願いします。


 では、これからもよろしくお願いします。



 ※ネタバレ注意↓























 ☆ちょっとだけ!次編予告!




 復讐を果たし、平和な時間を過ごすリアムの元に、ある天使が現れる事によって物語は再び動き出す。


「うわ〜くっさ〜い!悪魔の臭いがするんですけど〜!」


「うるせえな。ぶっ殺すぞ?」


 相性最悪の2人。果たして、彼女(天使)は何の為に現れたのか。


 そして、リアムはついに師匠スイと再会する。そこで語られるのは、彼女の全て。


「リアム、私はーーー」


「……は?」


 己が師の真実を知ったリアムは、世界の命運を分けるある選択をする。


「悪いなーーー」


 新たな力を手に入れた人間は戦争を起こし、獣人もまたその牙を剥いた。天使と悪魔はそれぞれの目的のために介入し、世界は少しずつ終末へと向かっていく。


 疑念が、疑惑が、懐疑が、狐疑が。入り乱れる激動の時代をリアムは駆け抜ける。大切なものを取り零さないために。




 そんな世界で、天使は謳い、悪魔は嗤う。己が信念の元に。


 そんな世界で、悪魔は謳い、天使は嗤う。己が守る物のために。




 世界を破滅へと導く者達は、何のために、何を成そうとしているのか。


 終わりゆく世界で、人は何を想い、何を願うのか。


 そして、最後に笑うのは誰なのか。





 ーーー終わりのない物語はない。全ては、一つの結末へと収束する。





『天使は謳い、悪魔は嗤う』終焉編 −近日公開−




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