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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第4章 復讐の先へ
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第77話 求め続けた時間



 


「リアム!朝ご飯できるよ!」


 朝、俺はアマクサ村の一角にあるイガラシハウスで目を覚ました。部屋の入り口にはアリサが立っている。エプロンを身につけたアリサはとても可愛い。朝から眼福だ。


「ん〜すぐ行くよ」


 俺はそう答えると、すぐに着替え始めた。本当はもう少し寝ていたいが、せっかく朝飯を作ってくれたんだ。起きなきゃな。


「あ、おはようございます」


「おう、おはよう」


 居間に行くと、既にミサキが食卓に座っていた。まだ眠たいのか、目を半開きにしている。可愛い。俺はミサキの正面の席に座った。


「ミサキはまだ眠たいのか?」


「いえ、そんなことないですよ?」


「そうか?とりあえず、髪の毛跳ねてるぞ?」


 サイドテールを解いているミサキの髪が跳ねている。なかなか豪快な跳ね方だ。


「ふぇ?ほんとですか?」


「ああ、後で直してやるよ」


「ふふ、ありがとうございます。リアムさんの寝癖も直してあげますね」


 いや、俺の髪はいつもボサボサだろ。まあ、直してもらえるのは嬉しいし何も言わないが。


 そうこうしているうちに、アリサが朝飯を運んできた。今日はパンとスクランブルエッグだ。良い匂いがする。


「おはよう〜」


「お、おはようルナ。ぐっすり眠れたか?」


「うん!もーばっちり!」


 ルナはにぱっと笑うと、トコトコと俺の隣まで来て席に座った。猫耳がパタパタしている。可愛い。俺はとりあえずルナの頭を撫でておいた。


「じゃあいただくか」


 そして、イガラシ家の朝食タイムが始まった。


 俺がアリサと結婚してから一週間が経った。アリサとミサキ、ルナはすぐに馴染み、既に相当仲が良い。夫としては喜ばしいことだ。その分、なんとなく俺の発言力が弱い気もするが、気のせいだろう。


 あの後、このイガラシハウスに帰ってきた俺はミサキにもプロポーズした。反応はアリサと似たようなもので、俺に頷くことで答えてくれた。


 ミサキは元の世界にいた時から結婚するのが夢だったらしい。女の子らしい夢だ。

 一夫多妻には違和感を覚えてるみたいだが、それでも嬉しいと言ってくれた。それに、この世界に来れて良かったとも。ミサキの夢を叶えさせたのが俺で良かった。心からそう思う。

 正直、アリサの時よりもミサキにプロポーズした時の方が緊張した。ミサキの場合は彼女の言動から俺のことが好きなんだと思っていたが、確認していた訳ではなかったからな。つまり、振られるかもしれなかったってことだ。ほんとに心臓が破裂するかと思った。手もめちゃくちゃ震えたし。俺、こういうの苦手なんだよな。


 ルナとは婚約という形をとることにした。彼女はまだ9歳。流石に9歳の子と結婚する訳にはいかないからな。


 獣人の結婚は14歳かららしい。5年も待たせてしまうが、そこは我慢してもらうしかない。5年経てば俺は23歳。……まあ、セーフだろう?今はルナもイガラシハウスで暮らしている。

 ルナの場合はあまり驚いてなかったな。ルナは心が読めるから、最初から俺がどういうつもりかは知っていたのだろう。俺が『将来結婚してくれ』と言った時、ルナは嬉しそうに頰を緩め、しかしそれを隠そうとして、さも当然といったようなドヤ顔を浮かべていた。あれはヤバかった。めちゃくちゃ可愛かった。我慢しきれずにキスしてしまった。

 ……それぐらいならいいよな?ルナも喜んでたし。困ったことと言えば、それ以来ルナが度々キスを求めてくるようになったことぐらいだ。9歳の子(ルナ)と恋愛感情ありでキスをする17歳()……いやいやいや、大丈夫だって。


 もちろん、2人にも指輪をプレゼントした。今もアリサと俺と同じ指輪をつけている。俺達が家族である証だ。こんなものがなくても俺達は家族だが、それでも形として残しておきたかった。

 こうやって形を残そうとするのは、きっと俺が弱いからなんだろうな。でも完璧な奴なんていないし、別にいいだろ?これぐらいならさ。


 思い返せば、俺は今まで休むことがなかった。何をしていても、復讐のことが心のどこかに引っかかってたんだ。いつもどこか落ち着かなくて、ただ強くなろうとして生きてきた。


 そんな俺からすれば、この落ち着ける時間ってのは初めてで、新鮮で、眩しいもので。こんな時間がずっと続けばいいのに。そう思うことが増えた。


 などと考えていると、ある日、事件が起きた。




 〜〜〜〜〜




 事件(それ)は、その日の夜に突然起きた。


 俺が部屋で寝ようとベッドで横になっていると、扉がノックされた。


「開いてるぞ〜」


 俺はベッドの中から声をかけた。すると、少し時間を置いて部屋にアリサが入ってきた。純白のネグリジェを身につけている。俺はその姿を二度見してから、咄嗟に目を逸らした。


「ど、どうした?」


 声が少し上ずった。しかしアリサは俺には答えず、徐にネグリジェを脱ぐ。そして一糸纏わぬ姿になったアリサは、寝ている俺の上に跨った。


「ア、アリサ?」


「……なに?」


「いや、その、なにを?」


 俺は狼狽えながらも、目はアリサの露わになった美しい双丘に釘付けだった。頂点に君臨する、二つのボタンが素晴らしい。目を逸らせる気がしない。

 ……昔海に行った時も思ったけど、アリサは着痩せするタイプだな。


 アリサはそんな俺を顔を赤くしながら見つめる。やばい。なにがやばいって?ナニだよ。


「分からない?」


「………」


 俺は迷った。もちろん、アリサが何を求めているかは分かる。しかし、本当にいいのだろうか。手を出してしまってもいいのだろうか。

 確かに結婚はした。だが結婚して一週間とちょっとしか経っていないのに体を求めるというのは、不誠実ではないだろうか。それとも、これぐらいは普通なのだろうか。


 俺は今まで強くなるために生き続けてきた。だからこういった経験はなく、もちろん耐性もない。どうするのが正解かも分からない。今も頭の中がぐちゃぐちゃだ。

 ……あ、リリスは例外だぞ。あいつは悪魔だからな。別にあいつの事は嫌いじゃないが、それでも悪魔に発情することはないからな。


 そんな事を考えつつも、気付けば俺の息子は既に戦闘に備えて立ち上がっていた。なんて奴だ。全く、情けない。

 そしてそれに気付いたアリサは更に顔を赤くして、しかしどこか嬉しそうな表情を浮かべた。


「もう、こんなこと女の子に言わせるなんて」


 アリサは恥ずかしそうにそう言うと、俺の体に乗りかかり、その口を耳に寄せた。

 耳に吐息が吹きかかり、俺は理性が飛びそうになるのを必死に堪える。息子は今にも爆発しそうだ。ほんとにやばい。なにがやばいって?ナニだよ。


「リアム……私を、むちゃくちゃにして?」


 俺は獣になった。




 〜〜〜〜〜




 ……実際は事件と言うほどのことではないが、この日を境に色々とするようになった。色々と。


 後で聞いた話だが、夜の生活についてはアリサとミサキでちゃんと話し合っていたらしい(流石にルナにはまだ早いと決まったようだ)。それで、ミサキがアリサに最初を譲ったことで彼女が突撃してきたということだ。当たり前の話だが、その次の日はミサキを抱いた。


 翌日の朝に、ルナが少し羨ましそうな表情で俺を見つめてきたのには参ったな。心が読めるなんて反則だろ。とりあえず、ルナとも結婚したら思いっきり愛でてやろう。いや、既に結構愛でてるけどさ。今はせいぜい、一緒に寝る程度が限界だな。


 ちなみに、本当にちなみにだが、アリサもミサキも凄かった。なにがとは言わないが、とにかく凄かった。




 〜〜〜〜〜




 現在、俺はルナを膝の上に乗せて居間のソファーに座り、目の前ではアリサとミサキが歓談している。俺はウトウトと舟を漕ぎ出したルナの頭を撫でながら、その光景をぼんやりと眺めていた。


 ああ、そう言えば師匠はどうしているんだろう。もう師匠と別れてから5年が経とうとしている。随分と経ったものだ。師匠は次に俺と再会した時、自分の全てを話すと言っていた。そして俺は、きっとそれを知らなければならない。根拠はないが、なぜか確信に近いものを感じている。

 だがどこに行けば師匠に会えるのかが分からない。正直、アモンを倒した時にでもふらっと現れるのかと思っていた。


「リアム」


「うん?」


 アリサに声をかけられた事によって、俺は思考を止めた。アリサとミサキがこちらを見ている。


「どうかしたか?」


「ううん、なんでもない」


 アリサとミサキは幸せそうに微笑んだ。よく分からないが、2人が笑っているのならそれで良しとしよう。ルナは既に眠ってしまったようだ。


 ……まあ、いっか。ひとまず全て後回しにしよう。


 師匠のことも、どこかに行ったルシフェルのことも、他にもいくつか気になることはあるが、今しばらくは忘れよう。


 とりあえず、クイナにも会いに行かなければならない。まだ帰ってきてから会ってないからな。あとはアロケルとリリスか。アモンに勝ったことは伝わってるだろうが、自分で報告しないと。そう考えると、やるべきことは多い。


 復讐は終わった。終わったんだ。ここまで生きてきた目的を果たして、俺の、リアム・イガラシの人生は終わった。これからはまた、新しい人生を歩んで行く。


 これまで俺は頑張った。本当に頑張ってきたんだ。色んなことを犠牲にして、死に物狂いで強くなろうとして、なんとかアモンを倒して。それが正しいかとか正しくないとかは別として、俺はやり遂げたんだ。


 だから、いいだろう?少しぐらいゆっくりしたって、バチは当たらないだろう?


 目の前には俺が望み続けた光景が広がっている。ずっと手に入れたかった時間が。


 俺が独りの時に、壊れかけた時に、苦しんでいた時に、隣で支えてくれた大切な人達が、今も一緒にいてくれている。


 俺はこれまで、奪うためだけに生きてきた。だから今度は、守るために生きていく。やっと掴むことができた、この幸せを。




 ーーー例え、そのために何かを奪うことになったとしても。

























『天使は謳い、悪魔は嗤う』復讐編 −完−









ここまで読んでくださった読者の方々、どうも剣玉です!やっとここまで来れました!ぶっちゃけ、今めちゃくちゃテンション上がってます!本当にありがとうございました!


……はい、と言うわけでですね、とりあえず『復讐編』はここで終わりです。次章からリアムは新しい戦いに巻き込まれていきます。まあ、閑話とかで露骨な伏線張ってるので分かりきってるとは思いますが。


この章もあと2話ほど閑話的なものがあります。そしてその後新章です。しばらく間が空きそうですが、ひとまず人物紹介などを挟もうかと思ってます。とりあえずは、その2話を読んでもらえたら嬉しいです。




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