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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第4章 復讐の先へ
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第73話 帰還




 


「……それで、あなたはこれからどうするの?」


「そりゃ帰るさ。元いた場所に」


「アマクサ村?」


「そうだが……なんで知ってる?」


「私も行ったことあるし、あなたがそこから来たのを視てたから」


「……?」


 リアムは自分の気持ちを整理し、空腹を感じたために軽く食事を摂った。それらが全て終わった後、フルーレティがリアムに尋ねたことから始まった会話にリアムは違和感を覚える。


「視てた?」


「うん。私は魔眼を持つ悪魔。魔界(ここ)から地上界(あっち)を視ることができる。それ以外のことも色々と」


「……色々ってなんだよ」


 急に雑くなった説明に呆れながらも納得した。詳しくは分からないが、その魔眼とやらでリアムの同行を確認していたのだろう。恐らく、アモンとの戦いも視ていた。そして決着がついた後、リアムを助けるために来てくれたということだ。


「今更だが、俺はどれぐらい気を失ってたんだ?」


「丸一日ぐらい」


 思っていたよりも短かった。受けたダメージ的にはもっと眠っていてもおかしくないと思っていたのだが、丸一日で済んだらしい。


「一日しか休んでないにしてはかなり魔力が回復してるな……。これもあんたの能力か?」


「うん」


「なんでそこまでしてくれるんだ?」


「……?タクトとアナを知ってるから?」


「……とりあえず、感謝してる」


 いまいちよく分からない悪魔だ。リアムはまだ軽く痛む体をほぐし、帰還する準備を始めた。


「もう行くの?」


「ああ。待ってる人がいるからな」


「そう。気をつけてね。また会いましょう」


 フルーレティはそれだけ言うと、どこかへ去ってしまった。振り返ることなく、ふらふらと歩いていく。


「……なんだったんだ?つか、父さんは俺と違ってただの人間なのに悪魔の知り合い多すぎだろ」


 リアムは1人で呟くと、アモンの死体を聖剣で切り刻み、炎で焼いた。復活することはないと分かっているが、万が一に備えてだ。


 全て終わらせたリアムは周りを見渡した。リアムとアモンの戦いの余波が至る所に及んでいる。リアムはその光景に顔を顰めると、ふと空を見上げた。

 リアムの『断空』によって真っ二つに割れた空からは、黒く脈打つ太陽が顔を覗かせていた。それがまるで、心臓のように蠢いている。ドクンドクンと、鼓動が聞こえてきそうだ。


「……気持ち悪いな。それに、黒いのに光を発してるし……訳分かんねえ」


 魔界にはもう来たくない。リアムは強くそう思ったが、


「……アロケルとリリスも、この気持ち悪い太陽を見てるのかな」


 また会いに行くと約束したことを思い出し、少しだけ後悔する。が、その顔は笑みを浮かべていた。


 とりあえず早く帰りたい。一度帰ってからまた、ここに来よう。リアムはそう考えて魔界のゲートを作ろうと魔力を集める。

 驚いたことに、ゲートはすぐに作れた。リアムが一度悪魔となったからか、それとも帰りたいと強く願う気持ちがそうさせたのか。リアムは後者だろうなぁとぼんやりと考えると、ゲートに足を踏み入れた。




 〜〜〜〜〜




 ゲートを抜けると、目の前には懐かしいアマクサ村の風景が広がっていた。季節は冬で、辺りには雪が積もっている。穏やかで冷たい風がリアムの髪を揺らした。


「……帰ってきたんだな。2ヶ月ぶり、ぐらいか?」


 まだその程度なのに、まるで数年ぶりのような懐かしさを感じた。リアムは目を細めると、ひとまず村へ歩こうとする。

 リアムが出てきたのはアマクサ村の外。村の中に突然現れたら驚くかと思ったからだ。だから、村から少し距離をとった場所にゲートを出していたのだが、


「リアムさーーーーーーん!!!」


「ぐはっ!!?」


 何かの影が叫びながらリアムに突進してきた。完全に油断していたリアムはそのタックルをモロに受けてしまい、影もろとも後ろへ転がってしまう。


「っ、誰だ!?」


「わ、私ですよ!ミサキです!」


 リアムに抱きついていたのはミサキだった。黒い髪のサイドテールを、リアムの目の前でポンポン跳ねさせている。


「お兄さんっ!!!」


 その背後から、更にルナが飛びついてきた。今度こそリアムはルナを受け止めた。リアムに会えたのが嬉しいのか、猫耳がパタパタと動いている。


 リアムは、突然現れた2人に驚くが、恐らく自分の魔力をミサキが感知したのだろうと推測した。そしてミサキがルナを連れてすぐにきたのだと。実際、その推測は当たっている。


「リアムさん!」


「お兄さん!」


「「お帰りなさい!」」


 ミサキとルナがどこか泣きそうな笑顔で声を合わせた。リアムは2人を優しく抱きしめる。


「ただいま」


 やっと帰ってきた。その実感を得たリアムは、笑みを浮かべながらそう答えたのだった。




 〜〜〜〜〜




「お帰り!」


 村に帰ってきたリアムに、獣人達は口々にそう言った。リアムもそれに答えていく。


「はは」


 先程までいた過酷な世界と比べ、この平和な空気が満ちた村に違和感を感じて苦笑する。思っていたより、2ヶ月という期間で魔界に慣れていたようだ。


「リアムさん?」


「ん?いや、なんでもない」


 リアムは今、ミサキとルナと共にイガラシハウスへ帰ってきていた。リアムはソファに座り、その正面に2人が座る形だ。


「ルシフェルはいないのか?」


「はい。ユウさんに呼ばれたとかでグラム大陸に行って、一度帰ってきたんですけどまた出掛けました。今度は長期間留守にするって言ってました」


「そうか……。ミサキとルナはずっとここに?」


「うん!ずっとお兄さんを待ってた!」


「そっか。ありがとな」


 リアムは素直に感謝した。自分を信じ、待っていてくれた2人に。


「……それで、リアムさんの方はどうだったんですか?」


「終わったよ。全部終わった」


 そう、全て終わったのだ。リアムをリアムたらしめていた復讐は終わり、同時にリアムが生きる理由も無くなったのだ。だからこそ、その理由を求めてするべき事がある。


「こういう時、なんて言ったらいいか分かりませんけど……おめでとうございます。そして、お疲れ様でした」


 ミサキはおずおずとそう言う。なんと言うべきか分かっていないと言うのは本音だろうが、リアムとしてはその気持ちだけで充分だった。


「お疲れ様〜!」


 ルナはリアムの膝の上によじ登り、そして座りながら笑顔でそう言った。ニコニコとしている。


「ありがとう。ほんと、疲れたよ」


 ため息を吐くリアムは、魔界に行く前とは少し纏う雰囲気が違った。その違いに、ミサキはつい見入ってしまう。ルナはリアムの心が読めるため、表面上の変化にはあまり関心を持たない。


「あ〜それで、さ。ミサキ、俺が魔界に行く前になんか言おうとしてただろ?」


「え、あ、はい。してましたね」


 途端、ミサキは顔を赤くする。ミサキはルナをちらちらと見るが、そんな様子をルナはニヤニヤと面白そうに見ているだけだ。


「その事なんだけどさ……」


「待ってください」


 ミサキは顔を赤くしながらも、はっきりとリアムを制する。


「ん?」


「リアムさんには、先にやるべき事があるんじゃないですか?」


 ミサキが言おうとしている事はすぐに分かった。リアムはミサキに自分の全てを話している。もちろん、あの約束のことも。


「いや、でも……」


 リアムは一度、ミサキの話を中断させている。だからこれ以上待たせるのは本意ではなかった。だが、


「私は大丈夫ですから」


 ミサキは強い意思のこもった目でリアムを見る。ちらりとルナを見ると、彼女もまたしっかりとリアムを見上げていた。


「……分かったよ。じゃあ、ちょっとグラム大陸まで行ってくる」


 ついに折れたリアムは膝の上のルナを隣に降ろすと、ゆっくりと立ち上がって外に出た。善は急げだ。早めに行動するに越したことはない。外に出ると、既に辺りは暗くなっていた。


「じゃあ、ぱっと行ってぱっと帰ってくるから、待っててくれ」


 リアムは空間操作によって転移ができる。本来、転移魔法には魔法陣が必要になるのだが、リアムの場合は特殊な方法によるものなので必要ない。よって移動速度は以前と比べるまでもなく、グラム大陸まで行って帰ってくるのにそれほど時間はかからない。


「はい」


「早く帰ってきてね!」


 2人とも、リアムを信じ切った目をしている。それを見たリアムもまた、心強さを感じた。だからだろうか。まだ黙っておくつもりだった言葉が口から出たのは。


「……俺は、お前らも嫁にしたいと思ってる」


 リアムはそれだけ言うと、照れ隠しのようにすぐに転移して姿を消してしまった。


 その後、リアムが帰ってくるまで2人して顔を赤くして悶えていたことを言うまでもない。





………。

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