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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第4章 復讐の先へ
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第71話 変わるために




 


 ひゅるり、と荒野に風が吹く。その生温かい風に顔を撫でられるのを感じたリアムを目を開けた。


 そこには、凄惨な地獄が広がっていた。


 至る所には巨大なクレーターが出来ており、さらに地面は燃え盛っている。リアムの記憶ではつい先程まではドームの中にいたはずなのだが、そのドームも今となっては見る影もない。


 そして異変は周りだけではなかった。リアムが足元を見ると、失ったはずの左足がそこにはあった。左腕も治っており、両手に魔剣と聖剣を握っている。全身には力が入らず、魔力も激しく消耗している。リアムは、恐らく悪魔へと変貌した代償だろうと予想した。


 前を見ると、目の前にはアモンが立っていた。そこからは戦意を感じられず、ただ恍惚とした表情を浮かべながら目を瞑って佇んでいる。その姿は、


「キモッ!」


「……?」


 リアムがつい思ったことをそのまま叫んでしまうと、アモンは訝しむように目を開けてリアムを見る。そして、目を見開いた。


「な……なぜだ……?なぜ戻ってる?なぜ!貴様は!半魔に戻ってる!!?」


 アモンは珍しく取り乱し、問い詰める。だが、リアムはそれを冷めた目で見ていた。


「答えろ!リアム・イガラシ!!」


 先程までのリアムならば、ここまで落ち着いてはいられなかっただろう。しかし、今のリアムは心の余裕を持っている。理由は考えずとも分かっていた。


「その疑念に、俺が素直に答えると思うか?」


「当たり前だ!貴様には答える義務がある!貴様は我の作品、我の所有物だ!我がこの永い時の中で作った最高傑作だ!それを壊すなど、赦されるものか!!」


 アモンは己の愉悦のためならばなんでもする。つまりそれは、愉悦以外に何も求めないということ。そう考えれば、アモンがここまで怒り狂うのにも納得できるかもしれない。


 だがそれは、リアムには関係のないことだ。


「……お前、憐れだな」


「なに?」


自分の愉悦(そんなもの)だけにしか縋れないお前が、憐れで仕方がない」


 アモンは恐らく、リアムには考えられないぐらい永い時間を生きてきたのだろう。そして、その中で見つけられたものは己の愉悦だけだった。その結果が今のアモンだ。


 それはリアムも同じだった。あの日、あの惨劇からリアムは復讐のためだけに生きてきた。そのためだけに、全てを捧げてきた。だが、今のリアムはそれだけじゃない。守りたいものが、共に生きたいと思える人ができた。


 だからこそリアムには分かる。何かを犠牲にすることでしか生きてこれなかった者の憐れさが。


 アモンは自分の愉悦のために他者を犠牲にしてきた。

 リアムは自分の復讐のために自分を犠牲にしてきた。


 それは酷く醜く、そして寂しい生き方だった。


「ま、憐れだろうとなんだろうと殺すけどな。俺がこれからを生きていくために」


 仇のため、憎しみのため。今まではそう思っていた復讐も、ここにきて少し変わった。

 目的は変わってない。仇のため、憎しみのためとも思っている。


 だがそれ以上に、自分を変えたいと思った。変わりたいと思った。もっと他のことのために生きたいと思った。だから、


「エゴもいいとこだが、お前はここで死んでくれ。俺のためにな」


「……もういい。また、貴様を死の淵まで連れて行ってやる。そうすればまた、あの姿に戻るはずだ」


 刹那、アモンの姿が消えた。


 先程まで悪魔となったリアムと戦っていたアモンからすれば、今のリアムは赤子も同然。そう考えていたのだが、


「っ!?」


 リアムは咄嗟に両手の剣を地面に刺し、自分の背後へと現れたアモンの喉を掴み、背負い投げの要領で地面へ叩きつけた。


「がっ!?」


 リアムはすぐに地面から聖剣を引き抜き、逆手に持ってアモンに突き刺そうとする。しかしアモンは即座に起き上がって飛び退くことでそれを避けた。


「ちっ」


 リアムは一つ舌打ちをすると、聖剣に魔力を込める。そしてアモンへ斬撃を放った。大して早くもない斬撃。しかしそれを、アモンは回避した。


「……?」


 そこにリアムは違和感を覚える。よく見れば、アモンの腹にある大きな口からは血が垂れていた。


「……なるほど、そういうことか」


 リアムが悪魔となり超高密度の魔力砲を放った時、その威力によって使いものにならなくなったのだ。つまり、もう魔力を吸収することはできない。


「悪魔の力のおかげってのは癪に触るが、そんなことも言ってらんねえな」


 リアムの体力も限界が近かった。肉体的にも、魔力的にも。


「……あれを使うしかない、か」


 だからこそ、リアムは短期決戦を選んだ。あまり時間はかけられない。


「従え、蒼炎」


 アモンの放った青い炎が2人を取り囲んだ。火の手は背が高く、リアムの5倍の高さはありそうだ。


「はは、逃さないってか。望むところだ」


「っ!!?」


 リアムはアモンですら視認できない速度で眼前まで迫ると、掌底で真ん中と左の顔の顎を下から打ち上げた。


「ぶっ!?」


 続けてリアムの膝蹴りがアモンを穿った。ふわり、とアモンの両足が浮く。


「しっ!!」


 リアムは足を真っ直ぐ天に向けると、宙を切るような音を発しながら振り下ろした。


「ぐっ、がっ!!」


 リアムの足が脳天に直撃し、地面に叩きつけられ、苦鳴を上げるアモン。


「っ!?」


 追撃を仕掛けようとしたリアムは、しかし突如感じた寒気に嫌な予感を覚え、咄嗟にその場を飛び退いた。リアムが退いた瞬間、アモンを中心に不規則な形に地面が抉れた。例の『熱い息』だ。


「この、半魔がぁぁぁぁ!!!」


 アモンは立ち上がるとすぐに飛びかかってきた。怒り狂った形相をしている。リアムはそれを迎え撃つことにした。


「ふっ!」


 アモンの大きな拳と、その半分もない大きさのリアムの拳が正面からぶつかり合った。大気が揺れる。

 少しの停滞の後、今度はそれぞれが逆の手に持っていた魔剣と聖剣がぶつかり合った。ギリギリと火花を散らす。


「従え、蒼炎」


 至近距離から、大きな蛇の形を成した青い炎がリアムに襲いかかる。しかしリアムは、アモンが気付いた時には遠くへと回避していた。


嵐龍テンペスト!」


 暴風が渦巻き、巨大な龍へと姿を変える。炎の蛇と風の龍が宙で絡み合う。


 火が弾け、礫が飛び散り、炎と風で荒れ狂うその下をリアムは駆け抜ける。その先には、魔剣を構えるアモンが立っていた。


「はあっ!!」


 アモンが斬撃を飛ばす。それは一瞬でリアムへと辿り着きーー


「空絶」


 刹那、リアムの眼前の空間がずれた(・・・)。空間操作によってずらされた空間は僅かだが、しかし、確かに隔絶されたその空間は如何なる攻撃も通さない。現にアモンの斬撃も容易く防いでしまった。


「なっ……!?既にその力を使いこなせるのか!?」


 アモンは驚愕に目を見開くが、リアム自身もよく分かっていない。空間操作は魔剣の能力だが、聖剣と対話して戻ってきてから不思議と使い方が頭に入っていた。もう自在に使いこなせる。


 唯一の欠点としては魔力の消費量だろうか。元からアロケル、アモンと戦い、そして悪魔へと変貌したことによって魔力を大幅に消費していたこともあり、空間操作を一度使うだけでごっそりと体力が削られるのを感じていた。だが、


「そんなこと……言ってられっかよ」


 リアムは崩れ落ちそうになる両足に力を込め、なんとか耐える。聖剣を持つのとは逆の手の人差し指を突き出し、その場で空間をなぞるように、ゆっくりと縦に動かした。


「断空」


 そしてリアムがそう呟いた瞬間、世界が真っ二つに割れた。





なんか某作品の縛道の八十一みたいなこと言ってますけど無関係ですよ。技的にもこの名前しか思いつかなかったんですよ。パクリじゃないですよ。だってほら、技の内容は違うじゃないですか。ほんとですよ。

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