表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第4章 復讐の先へ
85/111

第70話 その声はどこか懐かしく




 


 体の、感覚がない。自分が今、何をしているのかが分からない。記憶が混濁している。自分が何をしていたのか分からない。もう、自分が何を考えているのかも分からない。


「リアム」


 もしかして俺は、死んだのか?


「リアム」


 ……アモンに、負けたのか?


「リアム」


 結局俺は、何も成せなかった。


「リ〜ア〜ム〜?」


 仇も討てず、約束も守れなかった。


「………」


 俺は……僕は……。


「リアム!!!」


 はっ!?なんだ、声?


「やっと気付いたわね」


 ああ、悪い悪い。どこだここ、なんか薄明るいし不気味な空間だな。


 ……待て、お前は誰だ?


「あなたが今握ってる聖剣よ」


 は?聖剣?聖剣が喋るのか?つか、俺は聖剣なんて掴んでないぞ?


「がっつり掴んでるわよ」


 ……今、俺はどうなってるんだ?いや、違うな。今の俺は、どういう状況なんだ?


「よく分かってるじゃない。あなたは今、完全な悪魔に成り果ててるわ。それはそれは、醜い悪魔にね」


 ……そうか。それで、俺はどうしたらいい?それともやっぱり、どうしようもないのか?


「まるで、どうしようもない方がいいみたいな言い方ね」


 そんなことはない。


「それに、取り乱さないのね。もしかして、諦めたの?」


 ………。


「情けない」


 ……は?


「情けないって言ったのよ。あなた、今まで散々偉そうに『復讐のために生きてきた』とか言ってたくせに、ちょっと力が及ばないからってすぐに諦めて。情けないとしか言いようがないわ」


 ………。


「それになに?さっきの魔王の因子とのやり取り。人間が憎いとか世界が憎いとか。相手の思うツボじゃない」


 ……うるさいな。放っておいてくれよ。


「放っておかないわよ。あなた、ほんとに人間が憎いの?」


 ああ。当たり前だろ。父さんを馬鹿にして、理不尽に獣人を捕まえようとして。嫌いに決まってる。


「じゃあ、この世界は?」


 嫌いだ。こんなに理不尽ばかり押し付ける世界なんて、嫌いだ。


「じゃあ、あなた自身のことは?」


 ……嫌いだ。何の力もないくせに、何も成せないくせに、何も守れないくせに、のうのうと生きてきた自分が大嫌いだ。


「……そう」


 ………。


「だから、死を受け入れようとしてるの?」


 ……ああ。


「結局、最後は逃げるのね」


 ……逃げる?


「ええ、そうよ。逃げてるじゃない」


 どこが?どこが逃げてるって言うんだ?


「何の力もないから、復讐を諦める。何も果たせないから、死を受け入れる。何も守れないから、自分を嫌う。仕方ないんだって、目を閉じて耳を塞ぐ。そうでしょうね、その方が楽だものね」


 ………。


「生き様も、誇りも、責任も、全部捨てて裸に、身軽になってしまえば、そりゃ楽になるでしょうね」


 ………。


「でもね、それは逃げでしかないわ。そうやって辛いことや苦しいことから目を逸らして、楽な道を選ぼうとしてる」


 ……仕方ねえだろ。もう、どうしようもないんだから。


「……じゃあ、あなたを信じている人達を見捨てるのね?」


 それは……。


「自分ではどうしようもないからって、裏切るのね?」


 そんなつもりじゃ……!


「結果的には同じよ。あなたがここで全てを諦めれば、それはあなたを信じた人達を裏切ることになる。そんなつもりじゃなくても、そういうことになるのよ。違うかしら?」


 ………。


「よく思い出しなさい、リアム。自分を信じてくれた人達を」


 思い出す、か。そんなこと、もう……。


『信じてるッス』


『また来るのを待ってるよ』


 ……混濁した記憶の中で、どこか懐かしい声が蘇る。


『俺に出来なかった事を頼むのはかっこ悪いが、そんな事言ってらんねえ。必ず、タクトの仇を取ってくれ』


 俺は。


『頼むから、生きて帰ってきとくれ。妾はぬしにも死んで欲しくないんじゃ』


 俺は俺のことが大嫌いだ。


『君に会えて良かったよ、リアム君。またいつか会おう』


 その気持ちに変わりはない。


『それでも自分が嫌いなら、ルナも支えるから。だから少しだけでも認めてあげて。自分の事を信じてあげて』


 それでも。


『私はリアムさんのそばにいたいです!リアムさんに大切な人がいるのは知ってますけど、それでも少しでも助けになりたいんです!』


 それでも俺は。


『もし、リアムが自分の事を好きになれないなら、その分私がリアムを好きになる!』


 俺は……。


「ほんと、あなたは単純ね。もう顔つきが変わったじゃない」


 ……はは、悪かったな。いつもこんな感じなんだ。馬鹿みたいだろ?


「それは短所ではあるけど、長所でもあるわ。何事も、短所と長所は紙一重よ」


 ………。


「それで?どうするの?」


 これからか?


「そう」


 ………。


 俺は、俺が嫌いだ。何の力もないくせに、何も成せないくせに、何も守れないくせに、のうのうと生きてきた自分が大嫌いだ。


 それでも。


 そんな俺を、信じてくれた人がいる。


 そんな俺に、託してくれた人がいる。


 そんな俺を、愛してくれた人がいる。


 そんな大切な人達が大切にしてくれた俺を、俺は大切にしたい。あいつらを、裏切りたくない。


「それでいいのよ。それがあなたでしょう?」


 そう、なのかな。そうだったらいいな。


 ……この状況を打破したい。どうにかできるか?


「この世界が創られてから今まで、悪魔から半魔に戻った例はないわ」


 じゃあ俺はもう悪魔として……。


「でも、勇者が悪魔になった例もないわ」


 ……結局、どうなんだ?


「私ならなんとかできるわよ。力はほとんど使い果たしてしまうけど、悪魔を殺す力ぐらいなら残せる」


 そうか……。


 ……勝手なお願いだが、頼む。俺に力を貸してくれ。俺を、半魔に戻してくれ。あいつ(アモン)は俺の手で殺したい。そうしなきゃきっと、俺は本当の意味で前に進むことができないんだ。


「もちろんよ。任せなさい」


 ありがとう。


「その代わり、負けたら許さないわよ。絶対に勝ちなさい。私はあなたの味方だし、いつでも見てるから」


 当たり前だ。もう負けたりなんてしないから、見ててくれよ。


「ならいいわ。元気でやりなさいよ」


 ああ、頼む。


 ……なんだ?なんか、懐かしいやり取りだったような……


『私はあなたのーー。……あなたの味方よ』


『……ありがとうございます。それでは、お願いしますね』


『任せなさい』


 ……これは誰との会話だ?まだどこかおかしいのか、昔のことがあまり明確に思い出せない。


『じゃあね。元気でやりなさいよ』


 あれ?


「じゃあ、送るわよ」


 あ、ああ。


 ……なあ?もしかしてさ、俺とお前ってどこかで会ったことあるか?


「………」


 おーい?


「……何言ってるのよ。私は聖剣よ?そんなことあるわけないでしょう?」


 ……そうか。そうだよな。


 意識が、何かに引っ張られるように上へと浮上していくのを感じる。俺はこの空間から去り、あの世界へと帰るのだと理解した。


 覚悟は決めた。もう、負けはしない。


 俺は、もう1人じゃないのだから。





これからこの章が終わるまで毎日投稿しようかな〜って思ってます。あと9話ぐらいかな。多分更新できると思います。吐血しながら頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ