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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第4章 復讐の先へ
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第66話 復讐の意味

今日は2話投稿をしてますので、まだ読んでない方は1つ前の話から読んでください。


 


「アモン!!!」


 リアムはアモンの姿を認知した瞬間、意思とは裏腹に、反射的に襲いかかっていた。

 無意識に、本能で動いたリアムはもはや残像すら残さず、一瞬でアモンの眼前まで迫る。


「ぁぁぁぁああああああ!!!」


 そしてありったけの魔力を込めた右足をアモンの腹部にめり込ませ、足が付け根から抜けんばかりの勢いで振り抜いた。


「ぬっ、ぐぅっ!!?」


 アモンは予想外の一撃に苦鳴をあげて吹き飛ばされる。


「はっ!はっ!落ち着け、落ち着け俺……!」


 リアムは自分の体を抱えるようにして言い聞かせる。アモンの姿を見た瞬間、理性が飛んだ。ただただ本能のままに襲いかかった。全力で自分を律しようとしたが、リアムは自分の中の憎しみを侮っていたのだ。


 いつの間にか、悪魔化している。


 リアムは前方へ目を向ける。飛ばされたアモンは巻き上がる砂煙で視認できない。だが禍々しい魔力は感じた。


「出てこいよ」


 リアムは低く、唸るように呟いた。その声に反応して、アモンが姿を現わす。特にダメージは残っていないようだ。


「久しぶりだな、勇者の子よ。我のことを覚えているか?」


 アモンは嘲るように、リアムを挑発する。そのあからさまな挑発に、リアムは自らの理性が弾けそうになるのを必死に堪えた。


「……覚えてるに決まってんだろ」


「そうかそうか。我も貴様を忘れたことなぞなかった。この瞬間をどれだけ楽しみにしていたことか」


「は、はは……そりゃ光栄だなぁ。俺もずっと、この時を待ってたんだ」


 リアムは話しながらも聖剣と魔剣を取り出した。


「……聞きたいことがある」


「なんだ?ここまで来た褒美だ、なんでも答えてやろうじゃないか」


 アモンは余裕の笑みを浮かべる。それを見たリアムは剣の柄を強く握りしめた。


「……なんで、なんで俺だったんだ?」


「ふむ、それはなぜ貴様を半魔にしたかという意味か?それとも、なぜ貴様の家族を殺したかという意味か?」


「っ!」


 アモンがそう言った瞬間、リアムの全身から濃密な殺気が溢れ出した。今すぐにあの喉を切り裂きたい。しかし、リアムはギリギリのところで踏み止まる。


「どっちもだ……!」


「そうだな……やはり面白そうだったからだろうな」


「……それだけなのか?」


「ああ。そもそも、勇者であるタクト・イガラシとその妻アナ・イガラシ。その2人を殺したのには大した理由はない」


「……は?」


「理由があるとすれば、奴らが貴様ら兄弟を守ろうとしたことだな。我の当初の目的は勇者の子である貴様ら兄弟に悪魔因子を埋め込むことだった。ただの興味本位だったが、今となっては大成功だったな」


 そう言ってアモンは3つの顔をリアムに向ける。リアムはただ、呆然としていた。


「今はユウ・カイバラにも子がいるらしいが、当初はまだ生まれてなかったからな。だから貴様らに目を向けた」


「な……じゃあ……」


「本来なら年齢的に貴様は殺して、貴様の兄に因子を与えるつもりだったのだがな。奴も貴様を守るために向かってきおったからついつい殺してしまった」


「……ま、まて……」


「仕方なく残った貴様に因子を与えたところ、抵抗なく適応したわけだ。しかもそれだけでなく、貴様は勇者の力を継いでいるときた。それを知った時は今までにないぐらいに興奮したものだ」


「待てよ!待てっつってんだろ!!!」


 リアムは必死になって叫んでいた。叫ばずにはいられなかった。


「なんだよ……それじゃあ……父さんも、母さんも、兄さんも……俺の、俺のせいで殺されたってことなのか……?」


 もしそうなのだとすれば、


「そうとも言えるかもしれないな。少なくとも、貴様がいなければ我は貴様の兄を殺すことはなかっただろう」


 これまでの意味はなんだったのか。リアムはそう、考えてしまった。


 リアムは元から自分を責めていた。あの時、自分にもっと力があれば、せめて共に戦っていたならば、そういった後悔を抱え込んできた。

 それでも復讐を掲げることができたのは、やはり心のどこかで自分ではどうしようもなかったと思っていたからなのだろう。


 今、アモンから突き付けられた事実も、言ってしまえばリアムにはどうしようもない理不尽でしかない。だが、そう受け止めるほど、リアムには心の余裕がなかった。


 あの時、自分にもっと力があれば、せめて共に戦っていたならば。

 そう思っていたものがたった今塗り替えられる。


 あの時、自分がいなければ、自分という存在さえなければ。

 もしかしたら家族は死なずに済んだかもしれない。


 一度そう考えてしまうと、ネガティヴな思考は止まることなくリアムを侵し始めた。


「は、はは、ははははは……」


 リアムにはもう、どうすればいいか分からなかった。


「全部、全部俺のせいじゃねえか……。俺がいなければ、俺さえいなければ、誰も死なずに済んだんだ。父さんも、母さんも、兄さんも、村の人達も」


 ならば、今までの自分に何の意味があるのか。この復讐に何の意味があるのか。


「……どうすりゃいいんだよ」


 自分の存在意義から疑い出したリアムを、アモンは興味深そうに眺めていた。

 アモンにとって、全ては自分の退屈を紛らわすための道具でしかない。そのためなら、自分の命さえもどうでもいいと考えている。

 そんなアモンの目には、今のリアムは興味の対象としか映っていなかった


「……今さら、迷ってられない、か」


 リアムの中には今なお複雑に絡み合った感情が溢れかえっている。もう、何をするのが正解なのか分からない。

 それでも、忘れていないこともあった。自分が全てを懸けてきたもの。すなわち、復讐。

 胸の内で燃え上がる復讐の炎だけは、変わらなかった。


 そしてリアムにはもう、それに頼ることしか手段が残されていなかった。


「ふむ……」


「どうすればいいかなんて……」


 もはや、今のリアムを支えているのは長年滾らせてきた復讐への想いだけ。それは酷く不安定で、だが激しく燃え上がっている。


「我を、殺すか?」


「ああ、殺すね。絶対に殺す。そのためにここまで来たんだ。そのために今まで生きてきたんだ。その後のことは、その時に考えればいい」


 リアムは少し震える手で、剣を強く強く握り締める。その拳からは血が滴っていた。


「………」


 リアムは自分の心に巣食う憎しみを再確認する。何も、変わらない。変わるはずもない。


「俺は、アモンを、殺す」


 自分に言い聞かせるように呟く。一度スイッチを入れて仕舞えば、邪念は全て取り払われた。


「ククク……貴様は我の期待を裏切らんな。楽しくて仕方ないぞ」


 アモンは愉悦に顔を歪めて、甲高い声で嗤う。記憶に残るそれが、更にリアムを研ぎ澄ます。


「……行くぞ、アモン(クソ野郎)


 リアムの復讐が始まった。






どうも、軽い気持ちでバイトの掛け持ちをして忙殺されかけてる剣玉です。


前回から間が空いたので2話投稿しました。もし、待ってくれていた方がいれば楽しんで頂けると幸いです。別に待ってねえわ、って言う方も読んでくれると嬉しいですね。


次回は土曜日か日曜日を予定していますが、もしかすると間に合わないかもしれません。その場合は申し訳ないです。


できるだけ早く投稿できるように頑張りますので、応援して頂けるとありがたいです。


それでは、また次回もよろしくお願いします。


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