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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第4章 復讐の先へ
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第59話 見つめる先は

 


「ふぅー」


 リアムは大きく息を吐いて聖剣についた血を払い、魔石にしまう。魔剣も消した。


「っつ!」


 全身を刺す様な痛みが襲う。特に右手が重症だ。骨と内臓も何ヶ所か損傷している。リアムはすぐに回復魔法をかけた。


「おーおー。まさか倒しちゃうとはね」


 突然、後ろから声を掛けられた。だが害意や殺意は感じない。振り返るとそこには1人の少年が立っていた。


 緑色の髪に幼い顔立ち、身長はリアムより低い。全身を覆う緑色のローブを着ていて、その姿は明らかに場違いだ。

 それは紛れもなく初めて見る人物なのだが、リアムはどこか懐かしい雰囲気を感じた。なにより、


「お前、悪魔じゃない……?」


「おお、正解!やるじゃん!よく分かったな!」


「……お前は何者だ?なんでここにいる?」


「おいおい、人に名前を聞く時は自分から名乗るのが常識だろ?」


「リアムだ。ほら、お前は?」


「そんだけ?もっと言うことあんだろ?好きな食べ物とかさ」


「とりあえず俺は名乗ったからお前も名乗れ」


「ん〜、嫌だ」


「は?」


「だから嫌だって。俺が名乗ったら驚くだろうし」


 少年は飄々と言う。リアムは少し苛立ってきた。

 そこで、ふとその雰囲気の正体を思い出す。それに少し戸惑いながらもリアムは尋ねた。


「お前、師匠を……スイを知ってるか?」


「……さぁ?」


 少年の目を複雑な感情がよぎったような気がした。リアムはその目を見るが、すぐに霧散してしまう。


「知らないのか?」


「知らねえな。そんな名前初めて聞いた」


 少年は平然と答える。そこに嘘は無かった。


「お前凄えな!そんだけ派手に怪我して消耗してんのに、この俺に魔法使うなんて」


 リアムは少年に脈を測っていた。もちろん魔力を流して。今のリアムにとってはそれだけでも辛いのだが、言葉の真偽を確認するために必要と考えたのだ。

 そしてそれを少年は簡単に見抜いた。


「……どこから見てた?」


「あん?全部見たけど?」


「なんで見てたんだ?」


「俺は風と共に歩む流れ者だからな。たまたま(・・・・)魔界に来た時に、たまたま(・・・・)お前らが戦ってたから見てた。そんだけだ」


「……たまたま、ね」


 悪魔でも無いのにたまたま魔界にいるはずがない。目の前の少年が何かを隠しているのは明白だったが、リアムは追及をやめた。恐らく、意味が無いと考えたからだ。


「で、俺に何か用があんのか?『たまたま』見てただけなら俺の前に姿を現さないだろ?」


「大した事じゃねえさ。お前の目を視にきただけだ」


「……?」


「ああ、意味は分からなくていい。多分、そのうち分かるからな」


 少年はそれだけ言って背中を見せる。そしてリアムが制止の声を掛ける前に姿を消した。リアムが認識出来ない速さで。


「……なんだったんだ?」


「リアム様〜!!」


 取り残されたリアムが首を傾げていると、背中にリリスが飛びついてきた。その衝撃でまた全身に痛みが走る。


「だぁっ!!」


「だっ、大丈夫ッスか!?ボロボロじゃないッスか!?今から回復毒を調合するッスから、ちょっと我慢しでぇっ!!?」


「お前がしがみつくから痛いんだよ!」


 リリスが言い終わる前にリアムは拳骨を落としてリリスを引き剥がした。


「いっ、痛いッス!乙女に暴力なんて最低ッス!お詫びにウチを抱くッス!」


「元気じゃねえか」


 リアムは治療を再開する。


「あ、リアム様。ウチが治療するッスよ」


 リリスはそんなリアムに手を向ける。そこから紫色の魔力が滲み出した。


「おい、なんか禍々しい色してるんだけど。これ大丈夫なんだよな?」


「大丈夫ッス!」


 リリスが答えるのと同時に、魔力が淡い緑色に変わっていく。そしてリアムを包み込んだ。


「うおっ!?……あ〜〜」


 想像以上に気持ちいい感覚に、リアムは体の力を抜く。全身の傷や疲労が癒えていくのが分かった。


「これ、凄いな。治りが早いし気持ちいい」


 見れば右手も治り始めている。既に痛みはほぼ無かった。


「ふっふっふっ。ウチもやるときはやるんスよ!だからウチとヤりましょう!」


「……ほんと、お前は惜しい奴だよ」


 リアムは可哀想なものを見る目をリリスに向けた。それを受けたリリスは少し頰を赤らめる。


「ハァハァ、最近リアム様からの酷い扱いが気持ち良くなってきたッス」


「やめろ!これ以上恥を増やすな!」


 リリスはリアムのせいで新しい扉を開いたようだ。リアムは少し申し訳なくなった。


「無事、勝てたようだね」


 リアムが1人で反省していると、アロケルも合流した。疲れているようだが怪我はない。


「死にかけたよ。つか、お前無傷じゃねえか」


「今回は相性が良かったからね。魔力はかなり消費したけど楽に倒せた」


「嫌味な奴だな。そういや、リリスも無傷だよな?」


「もちろんッス!あんな雑魚ども片手で余裕ッスよ!」


「俺だけボロボロかよ。なんかへこむな」


「いや、でもあのアザゼルを倒したんだ。誇っていいと思うよ。堕天使は総じて強い。天使としての力と悪魔になってから得た力があるからね。それに、アザゼルは元力天使。天界でもトップクラスの強さだったんだ。君は既にこの世界でも最強クラスだよ」


「……そうか」


 アザゼルを倒したのがどういう意味を持つか。それを理解したリアムは自分が確実に強くなっている事を再確認した。


 だが、種族としては弱い。リアムは悪魔であると同時に人間でもある。純粋な悪魔や天使とは体の作りが違う。

 先程の戦いでも、リアムは全力で身体強化を掛け続けていた。魔力の消費は早いが、それが無ければアザゼルの攻撃には耐えられなかっただろう。


 それはリアムが背負っているハンデだ。それを克服するには完全な悪魔になるしかないが、それだけは絶対に嫌だった。

 リアムの魔力量は尋常ではない。勇者の子として生まれ、そして悪魔の力を得たからこそだ。そしてリアムはその魔力を使い、自分の我儘を通すために努力してきた。


「終わったッスよ」


 その声にリアムは自分の体を確認すると、もう完治していた。消耗した魔力は戻ってないが素晴らしい能力だ。


 そう思いながらもリアムはさり気なく自分の右手を確認した。そして少し顔を顰める。だがすぐに表情を取り繕った。


「助かった。ありがとうリリス」


「っ!?リ、リアム様がウチに感謝したッス!どうしたんスか!?まだどこか痛むぅぅぅ!!?」


 リアムは再び拳骨を落とす。リリスは頭を抱えて地面を転がった。


「ひゃああああああああああ!!」


「お前、ほんとに残念美人だな」


「美人ッスか!?」


 転げ回っていたリリスが、ぬるりと立ち上がりリアムに詰め寄る。その気持ち悪い動きにリアムは口を引攣らせた。


「ま、まあな。美人だとは思うぞ。お前が悪魔である限り俺は惹かれないけどな」


「それじゃあ意味ないッス!」


 リリスはまた転げ回った。リアムとアロケルはそれを無視する。


「リアム。とりあえず場所を変えよう。私達はともかく、君は大分暴れたみたいだから悪魔が集まるかもしれない」


「……そうだな。っと」


 リアムはゆっくりと立ち上がった。そしてリリスを掴んでアロケルの背中に乗せる。


「よし、じゃあ行くか」


「なぜ当たり前のように私の背中にリリスを乗せたのか不思議でたまらないけど、行くとしようか」


「お前の部下だろ。それより、次はどこに行くんだ?」


「とりあえず西に向かおう。ここまできたら順番に回るしかない」


「……はぁ。それしかないか」


 そしてリアムは歩き出した。今度こそアモンを見つけ出し、そして殺すために。



 〜〜〜〜〜



「なるほどね」


 緑色の少年は歩き去るその背中を眺めていた。眺めていた、と言っても常人では豆粒ほども見えない距離からだ。なのに魔法を使っている様子はない。


「いや、ほんと良い目をしてたよ」


 少年は細い細い岩に立っていた。ローブの裾は風に吹かれて靡いている。


「深い深い闇を視て、それでいて同じぐらいの光を視ている瞳。まさかあんな目をする人間がいるなんてね。いや、半魔だっけか」


 先程リアムと顔を合わせた時の事を思い出す。あらゆるものに縛り付けられ、それを引き千切らんとする強い目。自分の弱さを識り、それでも強くあろうとする目。


「こんな感覚は久しぶりだなぁ」


 ゾクゾクした。リアムがこの先何を見るのか。そしてどこに辿り着くのか。


「あの子を弟子にしたのも、何となく理解は出来るかな」


 少年は最後にそう呟くと、風に溶けるように姿を消した。





やばいッス。

ストックが無くなってきたッス。

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