第6話 無知の知
すいません。
今日は終わりとか言ってたけど書けました。
「いいですよ」
「いいの!?」
リアムが即答するとアリサは驚いたように聞き返す。
「アリサさんには色々とおしえてもらいましたし、それぐらい構いませんよ。でも、俺って誰かに魔法を教えたことが無いんですが、それでもいいですか?」
「もちろんだよ!」
アリサはとても嬉しそうに頷いた。
「早速明日からでもいいかな?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「ありがとう!じゃあ楽しみにしてるね!」
そう言うと図書館から出て行ってしまった。
「……さて、それじゃ読み始めるか」
リアムは近くにあった椅子に座ると、今取ったばかりの本を読み始めた。
〜〜〜〜〜
悪魔の起源については分かっていないが、その生態はいくらか判明している。
まず、悪魔同士の間には子供は生まれない。他種との間には子供を作れるが、それは相手方の種族として生まれる。つまり、悪魔が新しく生まれることは無い。
そこで、悪魔は自分のオド(体内にある魔力の源)から悪魔因子と呼ばれる物質を作り出す。それを他種族の体に埋め込む事で仲間を増やす。その悪魔因子を作り出した悪魔の強さによって、作り出される悪魔の強さも左右される。
悪魔因子を埋め込まれると全身を鋭い痛みが駆け巡り、適応すれば悪魔に、適応しなければ死に至る。痛みが少ないほど強力な悪魔となる。
悪魔因子は獣人に適応しやすく、人間には極稀にしか適応しない。それは獣人は保有魔力が少なく、人間は保有魔力が多いからと考えられている。
悪魔は、上から魔王、最上級、上級、中級、下級と分けられる。
下級悪魔は理性を持たず、ただ本能のままに暴れ回る。階級が上がるにつれて理性を持つようになる。最上級悪魔には魔王が認めることでなれる。また、各階級の差はでかく、階級内での差も少なくない。
そして、魔界へのゲートは悪魔にしか開くことは出来ないとされている。
〜〜〜〜〜
「……俺、ほんとに全然知らなかったな」
そこに書いてあったのは知らない事ばかりだった。リアムは改めて自分の無知を自覚する。
(悪魔因子を埋め込まれた時の痛みが少ないほど強力な悪魔……か。俺の場合全く感じなかったけど、それだけ強いってことか?そーいや昔、一度だけ暴走した時、周りが凄いことになってたな)
リアムがスイに拾われて間もない頃、一度だけ悪魔化をした事があった。その時のことは自分では覚えていないのだが、気付いた時には森が荒れまくっていた。
スイが悪魔化したリアムを抑えてくれたおかげで元に戻ったらしいが、もしかしたらあのまま完全な悪魔になっていたかもしれないと考えるとゾッとする。ちなみに魔剣はその時から出せるようになった。
(俺の中に入れられたのは誰の悪魔因子なんだろうな……。やっぱりアモンか?……うわ、イライラしてきた)
リアムはそこで思考を断ち切り席を立つ。外を見れば日が落ちている。
「そろそろ帰るか」
そう呟くと、リアムは寮へ帰ったのだった。
〜〜〜〜〜
次の日の朝、リアムは教室に入るとまた窓際の1番後ろの席に座り、昨日借りた"悪魔について"を読んでいた。
ほとんどが知らない事ばかりだった。スイからあらゆる事を学んでいたが、悪魔については教わった事が無いのだ。恐らくあえて教えなかったのだろう。
(それにしても、目をつけられないようにって言われたけど平均的な強さがどれくらいか分からん。今まで師匠と魔物としかやってこなかったからな)
そんな事を考えているとクレアが教室に入ってきた。今日の授業が始まる。
昼休みの次は実技だった。リアムはまた寮へ戻り昼食を摂ると、白の短パンに黒の半袖シャツという動きやすい格好で闘技場へ向かう。
闘技場は敷地の端にある。コロシアムのように出来ており、大きなリングの周りに観客用の席が作られている。
その中心に2年A組は集まっていた。
「皆さんには今日は体術を鍛えてもらいます。魔法使いでも敵に近付かれた時の対処法は覚えておいた方がいいので、手を抜いたりしないように!」
クレアの隣には男が立っている。
「今から男子生徒はエリック先生と、女子生徒は私と手合わせしてもらいます」
どうやら男はエリックと言うらしい。年は30代ぐらいだろうか。大柄な体をしていて厳つい顔をしている。
「今回は勝ち抜け形式にします。私達に勝てたら今日の授業はもう終わりという事で」
とクレアが言うと、
「え〜まじかよ〜」「エリック先生加減してくれねーじゃん」「クレア先生ならともかくエリック先生に勝てる訳無いじゃん」「男子と女子交代しようぜ!」
などと男子生徒が騒ぎ出した。エリックはそれなりに強いらしい。
「私ならともかくってなんですか!それに大丈夫ですよ、エリック先生もちゃんと手加減してくれます。そもそもこの学園は強さが全て。すぐに弱音を吐くような生徒はいりませんよ」
クレアが見た目によらず結構厳しいことを言う。
「では始めようか。やりたい人からでいいよ」
クレアの言葉で男子が黙るとエリックがそう言った。だが男子も女子もなかなか動かない。
「ではよろしくお願いします」
そんな中、リアムだけが動いた。生徒達はざわめきだす。
「ふむ。君が新入生のリアム君だね?それじゃあ始めようか」
エリックはそう言うと構えをとる。リアムも体の力を抜き構えた。
リアムが先陣を切ったことには大した理由は無い。ただ勝ち抜けという言葉を聞いて、早く終わらせて早く図書館へ行こうと思っただけだ。
「ふっ!」
エリックが右のストレートを打ってきた。だがリアムからすれば遅く見える。顔を軽く右に逸らしてそれを避けると、伸びた右腕を掴み一本背負いの要領でエリックを地面に叩きつける。
「がっ!」
エリックが一瞬息を吐き出す間にリアムは上に跨り、拳を顔の寸前で止める。
「俺の勝ち、でいいでしょうか?」
「……ああ、参った。」
そんな言葉を聞くと、リアムはエリックの上から退いて振り返ること無く、闘技場の外へと歩いていくのだった。
〜〜〜〜〜
リアムが図書館へ行き本を漁っているとアリサがやって来た。そして既にリアムがいることに驚く。
「あれ?リアム君早いね?」
「ええ、今日は最後の授業が勝ち抜け形式でして。さっさと終わらせてここに来ました」
「へぇ〜……。ちなみに相手は誰だったの?」
「エリック先生です」
「あの人かなりのやり手なんだけど、やっぱりリアム君って強いんだね」
「いえ、エリック先生は手加減してくれてましたよ。最初から本気でやられてたらどうなってたか分かりません」
「ふふ、謙虚なんだね」
アリサは笑いながら言った。
「ねぇ……それでね、空歩の事なんだけど」
「良いですよ。じゃあ始めますか」
アリサが言い終える前にリアムが引き継ぐ。それを聞いたアリサは、
「うんっ!お願いします!」
笑みを浮かべながらそう言った。
戦闘の描写難しいって言ったら瞬殺してくれました。
リアム君はいい子ですね。