第57話 VS堕天使アザゼル
アザゼルが一歩踏み出す。それだけで地面は砕け、衝撃波が生まれた。
一瞬で目の前に迫ってきたアザゼルは勢いを脚に乗せて蹴りを繰り出す。避けきれないと判断したリアムは、その脚に掌を添えて軌道を逸らした。
リアムはカウンターに聖剣を振るう。だがその腕を蹴り上げられる。その威力に聖剣はリアムの手から飛んでいった。
「ちっ!」
リアムはアザゼルの軸足を払う。そして態勢を崩したところに回し蹴りを放った。
それを受けたアザゼルは後方に転がる。しかしガードしていたらしく、ダメージは無いようだ。
「クク、面白え!」
リアムは距離を詰めてアザゼルの顔面に拳を叩き込む。だがそれは片手で掴まれた。
「っ!」
アザゼルはすぐに蹴りを放つ。リアムは無理矢理手を引き離し、跳躍する事でそれを避けた。
「大隆起」
リアムが唱えるとアザゼルの足元の地面が割れた。それは周囲からアザゼルを呑み込まんと迫る。しかし、
「しゃらくせぇ!」
アザゼルが地面に足を叩きつけると、その衝撃波だけで全て砕け散ってしまった。
その一瞬の隙を突いてリアムは背後から肉薄する。そしてアザゼルが振り返る前にその脇腹に脚をめり込ませ、そのまま振り切った。
「がっ!!」
アザゼルは地面を転がり砂埃を上げて倒れる。リアムはそこに追撃を掛けようと迫った。
しかし、砂埃の中からアザゼルの手が伸びリアムの頭を掴む。そして地面へ叩きつけた。
「ぶっ!」
なんとか硬化を間に合わせてダメージを抑え、リアムはすぐに退がる。痛みはないが鼻血が流れた。
リアムは咄嗟に顔を後ろに逸らす。すぐ目の前を足が通り抜けた。そしてその足を掴み、アザゼルの体を引き寄せボディブローを入れる。
「ごふっ!」
アザゼルは血を吐くが踏み止まり、リアムの頰を殴り返した。
「ごあっ!?」
リアムが顔を横に弾かれて生まれた隙に、アザゼルはリアムの腹部を蹴りつける。
「がはっ!」
リアムはそのまま後ろに吹き飛ばされる。転がる途中で体を捻り勢いを殺すが、またすぐに後ろへ退がる。
次の瞬間、リアムがいた場所にアザゼルが上から落ちてきた。その破壊力に周辺の地面が隆起し、砕ける。
「くそ、がぁっ!!」
リアムは地に足をつけるとすぐに前に飛び出し、右足に全力で魔力を込めて蹴りつける。アザゼルは手をクロスさせて防御するが、その威力に負けて頭から瓦礫に突っ込んだ。
アザゼルはすぐに瓦礫から飛び出してくる。リアムも正面から迎え撃とうとするが、アザゼルの纏う魔力を感知して寒気を感じた。
「っ!?」
すぐに回避しようと体を逸らす。しかしアザゼルはその動きについていき、リアムの腹部に拳を叩き込んだ。
「ぐっ、ぷっ!?」
リアムはそれを受けて盛大に吹き飛んだ。地面を削り岩を砕きながら転がるが、その勢いは止まらない。
「ごっ、ぐっ、がっ」
しばらくして止まるとリアムは大の字で寝転がり、口から血を吐く。
「はぁはぁ、こりゃ内臓やられたな」
すぐに治療を始めるが、リアムは元々回復魔法は得意ではなく治りは遅い。
そんなリアムの元にアザゼルが歩いてくる。
「ははっ、いいなお前。半魔の分際でこの俺様相手にここまでやるとは思わなかったぜ」
リアムは聖剣の位置を確認するが、すぐに取りに行けるような距離ではなかった。
「……それはどうも。一つ聞きたいんだが、お前はなんで堕天したんだ?ルシフェルと同じか?」
「あん?違えよ。俺様は戦いが好きだから天界で他の天使ども殺してたら追放された。そんだけだ」
「そりゃ追放されるだろ」
「だろうなぁ。俺様も分かってるさ。だから別に天界の連中にゃ恨みもねえ。むしろ感謝してるぐらいだ」
「感謝?」
「ああ。魔界はどこでも殺し合いが起きるからな。たまに魔王が止まるのがうざいだけで、それ以外には不満はねぇ」
「お前、頭おかしいな」
「ははっ!自覚してるさ。ほら、時間稼ぎは終わったか?さっさと続きやろうぜ」
「……バレてたか」
リアムは会話している間にある程度の傷を癒していた。それでも完治はしていない。
リアムはゆっくりと立ち上がると、アザゼルの正面に立つ。
(舐めてないつもりだったけどまだ認識が甘かった。この様子だとあの時のルシフェルも本気じゃなかったな。相手は最上級悪魔。魔界の、いや、この世界の中でもトップクラスの強さを持ってる存在だ。簡単に勝てる訳がない)
このままではアモンにも勝てない。リアムはもう一度気を引き締めた。
「おっ?いいな、もっと楽しめそうだ」
リアムが纏う雰囲気を察してか、アザゼルは愉しそうに笑う。リアムもそれに笑い返した。
「じゃあ、再開しようぜ!」
アザゼルは一瞬でリアムの前に移動すると、顔に拳を突き出す。リアムはそれを避けると膝蹴りを繰り出した。
それをまともに受けたアザゼルは体を浮かす。リアムは頭上で両手を合わせると、アザゼルを地面に叩きつけた。
「ティルヴィング!」
リアムは瞬時に魔剣を顕現させて斬りつける。しかしそれはアザゼルの出した魔剣に受け止められた。
アザゼルはすぐに起き上がるとリアムの足を掴み、振り回してから投げ飛ばす。リアムは錐揉みしながら宙を飛び、何かにぶつかった。
「ぐっ、うっ!……ここは、さっきのとこか?」
リアムがぶつかったのはさっきまで調べていたアモンの拠点の壁だった。かなり移動していたようだ。
「っ!?」
壁にめり込むリアムに、いつの間にか眼前まで迫っていたアザゼルが追撃を放つ。それを受けたリアムは壁を突き破って建物の中へ転がっていった。
リアムはすぐに立ち上がると、魔剣に魔力を込めて斬撃を飛ばす。アザゼルはそれを軽く受け流すと魔剣を投げつけた。それは真っ直ぐにリアムの胸へと飛ぶ。
「なっ!?」
リアムはなんとか体を晒して致命傷は避けたが、魔剣は左肩に突き刺さった。
「がっ、ああああああ!!」
その焼けるような痛みを、歯を食いしばって堪える。すぐに剣を抜く。痛みは走るが筋は切れていないのか、左肩は動いた。
アザゼルがリアムを蹴りを繰り出す。リアムもそれに蹴りで返した。脚と脚がぶつかり、衝撃波が発生する。
リアムは魔剣を振るう。それはアザゼルの胸を斜めに切り裂いた。
「ぐっ」
その傷は浅い。アザゼルは一瞬怯んだだけだ。だがリアムはその隙を突いてアザゼルの頰を殴る。アザゼルもすぐに殴り返した。それはリアムの左肩に当たる。鋭い痛みが走った。
リアムは少し呻くと、空歩で宙へ退避する。アザゼルもその羽を広げるとすぐに追いかける。
「らぁっ!」
アザゼルはリアムに踵落としを放つ。リアムはそれを腕で防ぐが、地面に叩きつけられた。
「かはっ!」
リアムは肺から息を吐き出しながら地を跳ねる。その衝撃で魔剣を手放してしまう。
「アル・グランテ」
上空にいるアザゼルの手からリアムに向かって濃密な魔力砲が放たれ、辺りに大きな爆発音が響き渡った。土煙が舞い上がる。
「あ?やり過ぎたか?」
土煙が晴れると、そこには抉れた大地だけが残っていた。リアムの姿は無い。
「消し飛んだか?最後は呆気なかったな……っ!?」
そこでアザゼルは背中に衝撃を受ける。そのまま地面に落ちていった。
「がはっ、ごほっ、ははっ!生きてやがったか!」
アザゼルが見上げるとそこにはリアムが佇んでいた。間一髪で魔力砲を避けたリアムが、気配を消して背後に回っていたのだ。
リアムは地面に着地する。
「急に物騒なもんぶちこみやがって。死ぬかと思ったわ」
「へへ、それでこそ楽しみがいがあるってもんだぜ!来いよ!半魔ァ!」
2人は正面から衝突する。
殴り、殴られ、蹴り、蹴られ、攻撃をして、攻撃を止められて、防御して、防御されて。
2人は血を流しながらも、その口元には笑みを浮かべていた。
お互いの脇腹にお互いの脚がめり込んだ。ミシリ、と骨が嫌な音を立てる。そして2人とも逆方向に飛んでいき、壁に激突した。
「はぁはぁ、くそっ、まずいな」
リアムは既に血を流し過ぎている。互角のようで、実際は明らかにリアムの方がダメージを受けていた。純粋な実力では負けている。
「そろそろ決着をつけないと」
肩で息をしながらそう呟く。左肩の感覚は無くなってきていた。
決着をつけると言っても決定打に欠けている。聖剣も魔剣も落ちている場所が遠い。魔剣の場合はすぐに手元へ引き寄せられるが、それでも決定打にはならない。相手は最上級悪魔。聖剣でしか殺せない。
ただ、リアムには一つだけ手段があった。殺せなくてもしばらくは行動不能にする手段が。
本来はアモン戦に向けて開発したオリジナルの技。だが、ここで死んだら元も子もない。
「アレをやるしかないか……」
リアムは覚悟を決めて立ち上がる。アザゼルは嗤いながらリアムを見ていた。
忙殺されそう・・・
あ、ノーパソ買いました!
テンション上がるぜヤッホー!




