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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第4章 復讐の先へ
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第56話 焦り

 


 リアムが魔界に来てから半月が経った。相変わらずアモンの居場所は分からない。


「ねぇリアム様〜。そろそろウチを抱いて下さいよ〜。ずっと一緒にいるのに、こんなの生殺しッス」


「うるせぇ。何回も言うけどな、悪魔は抱けないんだよ。そもそも反応しないからな」


「実はウチ夢魔なんで媚薬とか作るの得意なんスよ。試してみるッスか?」


「だから不能じゃ無いっつてんだろ。それに血の繋がりがあるんだからあり得ない」


「後ろの穴はセックスに入らないッス!」


「なんだその基準?じゃあ今度ルシフェル連れて来るから、それで我慢しろ」


「ルシフェル様ッスか!?楽しみにしとくッス!」


 リアムはとりあえずルシフェルには心の中で謝っておいた。


 今はアモンの拠点の一つにいる。ドーム状の広い建物だ。だが、やはり痕跡は無く、足取りも掴めない。

 リアムは正直、すぐに見つけられると思っていたから、少し焦っていた。


「なぁ、アモンは本当に魔界にいるのか?なんの手掛かりも無いんだが」


「魔界は広い。地上界の10倍以上の広さがある。だから簡単見つからないのも当たり前だ」


「………」


「焦る気持ちは分かるが、今は我慢の時だ」


 アロケルは言い聞かせる様に言う。リアムもどうしようも無いのは分かっている。


 アモンは次期魔王だけあって多くの拠点を持っている。自分の愉悦のためだけに活動するアモンにとって、拠点は幾らあっても困らない。その分、使わなくなった場所も多数存在する。


「アモンの配下ってムシュルフ以外にもいるのか?」


「一応いるが、危険なのはムシュルフぐらいだ。アモンは自分が愉しみたいから、あまり強い配下は持たないんだよ」


 なんとも性格が悪い。リアムは顔を顰める。


「ところでリアム、君は何をしているんだい?」


「ん?魔剣の能力を使えるように頑張ってんだよ」


 リアムは調査しながらも魔剣を握ってあれこれとしている。魔力を流したり、念じてみたりしたが進展は無い。


「どんな能力なのかは知ってるのかい?」


「ああ、空間操作みたいだ」


「空間操作!?それは凄いな!空間魔法よりも干渉能力が高いんじゃないか?」


「多分な。俺も一瞬しか使えてないから何とも言えないけど」


 魔剣の能力を使えこなせたら更に強くなれる。しかも格段に。

 リアムはそれが分かっていたから、今までも何とか発動出来るように試してきた。しかし、


「全然できないんだよな〜」


 あれ以来、一度も成功していない。どんな風に使用するかは考えているが、肝心の魔法が使えない。


「君は空間魔法は使えるのかい?」


「まぁ多少は。そこまで得意じゃないけど」


「なら、それをイメージしてみたらいい。魔剣の能力は一度発現した時からその身に宿る。魔剣を持ってなくても使えるってことだ」


「ふむ……お?おお?なんか出来そうな気がする!」


 空間魔法を使う時のように、周りの空間に自分の魔力を溶かすように広め、干渉する。発動はしなかったが手応えを感じた。


「それは良かった。それにしても、本当に手掛かりが無いね。これは恐らく意図的に消してるんだろう」


「意図的に?」


「ああ。ここまで痕跡が全く無いというのは逆に不自然だ。……これは少し言いづらいが、多分アモンは君に気付いている。そして、恐らく今の状況をどこかで視て愉しんでいる」


「俺があいつを探してるのを視て、か。くそっ!癪に触る野郎だ」


 アロケルのそれはあくまで推測だが、リアムは間違いないと思った。

 リアムが降り掛かる危険に苦しむ姿を愉しんでるんだろう。しかし、もしそうなら近くにアモンの配下がいるはずだ。


「そうだろうね。確か、アモンの配下に隠密行動が得意なファミリアがいたはずだ」


「ファミリア?」


「使い魔の事さ。ただ、そうなると見つけ出すのは難しい。奴らは存在が希薄で、魔界の濃密な魔力に溶け込んでるからね」


「なんとかして見つけられないのか?」


「厳しいだろうね。今まで一度でも気配を感じたかい?」


「いや……言われた今でも分からない」


 リアムは感知魔法を全力で展開するが、それでも気配を感じない。かなり厄介な相手だ。


「ひとまず今日は休もう。疲労は思考を鈍らせるしね」


「……そうだな」


 3人は拠点の近くにある岩陰で体を休める。リアムも肉体的にはまだ余裕はあるが、精神的に疲れていた。

 そしてその日は、久しぶりに眠りについた。



 〜〜〜〜〜



 リアムは近付く気配を察知して目を覚ました。死の森で暮らしていたリアムは、睡眠中でも危険が迫れば目を覚ます事が出来る。つまり、リアムが感知した気配は敵対者の可能性が高い。


「リアムも気付いたかい?」


 隣を見るとアロケルも起きていた。意外な事にリリスも起きている。


「ああ……こっちに向かってきてるな」


「これは多分、アザゼル様とグシオン様ッスね。どっちも最上級悪魔ッス」


「ベレトの手下か?」


「グシオンはそうだが、アザゼルは違う。彼は堕天使なんだが、単純に戦う事が好きなんだ。だから強い相手とやれるなら誰とでも手を組むし、裏切る」


「堕天使か……。厄介だな。それに、その2人以外も気配を感じる」


「上級だね。しかも挟まれてる。こちらを潰すつもりなんだろう」


「ベレトがいないのは不自然じゃないか?」


「確かに……。でも今はそんな事を言ってられない。どうする?」


「勝てるのか?」


「ベレトよりは望みはある。それに、ベレトの場合は機動力があまりないから逃げれたけど、あの2人は速い。多分逃げ切れない」


「……はぁ。やるしかないのか」


 アモンまで温存したかったが、今はそんな事を言ってられない。リアムは覚悟を決めた。


「じゃあウチは上級共を引き受けるッス。例の2人は頼むッス」


「1人で大丈夫なのか?結構な数だぞ?」


「ウチ、こう見えても結構強いんスよ?ささっと倒してくるんで、安心してくれていいッス」


「……分かった。死ぬなよ?」


「リアム様に抱かれるまで死なないッス!」


「リリス、無茶はしないように」


「アロケル様こそ、無理しないで下さいッス!」


 リリスはそう言って、1人で上級悪魔の方へ向かっていった。リアムは少しだけリリスを見直す。


「さて、リアム。誰とやる?ちなみに、アザゼルもグシオンもパワータイプだ」


「どっちでもいい。どちらにせよ殺すだけだ。それよりお前はいいのか?ここで殺り合ったらまずいんじゃないか?」


「魔界内での殺し合いは珍しくない。それに、最上級同士ではどちらも死なないしね」


「俺は殺すけどな。じゃあ、アザゼルの方貰っていいか?悪魔も天使も嫌いだし」


「分かった。じゃあ私が幻術を掛けて分断させるから、先に行くよ」


 アロケルはそう言って大きな槍を顕現させる。


「頼む。お前も死ぬなよ」


「君こそね」


 アロケルは気配の方へと走って行く。リアムは聖剣を取り出して悪魔化し、深呼吸をした。


 最上級悪魔と戦うのは初めてだ。アザゼルがアモンより強いかどうかは分からないが、苦戦するのは確実だろう。負ける可能性もあるし、勝ててもかなり消耗するはずだ。

 それでも、殺やらなければ殺られる。


「あ?猿公のやつ、どこ行きやがった?」


 覚悟を決めたリアムの前に、1人の男が歩いてきた。

 肌は青白く、薄汚れた白いズボンを履いている。髪の毛は真っ白で、背中には禍々しい色をした大きな羽が生えていた。


「あァ、アロケルの野郎か。幻術なんてまどろっこしいもん使いやがって、男は拳で語るもんだろ」


 そこでリアムの方を見る


「なァ?そうは思わねえか?」


「別に思わないな。お前が死ぬならなんでもいい」


「ははっ!なんだお前、案外面白いじゃねえか。で、お前が俺様とやってくれんのか?」


「そのまま回れ右して帰れって言ったら帰るのか?」


「帰らねえな」


「じゃあやるしかないだろ」


 リアムはそう言って聖剣を構える。


「へぇ、ほんとに聖剣持ってんのか。楽しめそうだな」


 アザゼルは得物を持たずに構えをとる。


「さて、じゃあ始めるぞ?」


 そしてアザゼルは愉しそうに笑みを浮かべた。




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