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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第3章 別れから出会い
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第48話 呪い

 

 リアムがルナを助けて帰ると、リアムは村の英雄扱いをされた。これで完全にリアムと村人の垣根は取り払われたようだ。


「んふふ〜」


 それから数日が経って騒ぎも収まってきたのだが、ルナは以前よりリアムにくっつくようになった。


「……ルナ。膝から降りてくれないか?」


「なんで?」


「見てみろ。ミサキのあの目は犯罪者を見る目だぞ」


 今、リアム達はイガラシハウスにいる。リアムは居間のソファーに座り、ルナはそんなリアムの膝に座り、そしてそれをミサキがなんとも言えない表情で見ていた。


「リアムさん。一応、ルナちゃんは8歳ですよ?」


「いや、知ってるけど」


「お姉さんはね、ルナが羨ましいんだよ。ね?」


「なっ!ち、違いますよ!」


「ルナは心を読めるもん」


「うぅ〜〜」


 ルナが心を読める事はリアムとミサキだけ知っている。村人には秘密にして欲しいらしい。


「アリサさんがいながら、そんな事を……」


「なんでそこでアリサさんが出てくんだよ」


「リアムさんってそういうの鈍感そうですもんね……」


 ミサキは諦めたように息を吐く。


「ん?やっと帰ってきたか」


 そこでリアムはルナは持ち上げ隣に座らせて立ち上がった。


「どうしたんです?」


「いや、ルシフェルが帰ってきたっぽい」


 リアムはルシフェルの魔力を感知すると家を出る。するとちょうどルシフェルが地に降り立つところだった。


「よおリアム。元気にしてたか?」


「ああ、おかげ様でな。それより遅かったな」


「ちょっと色々あってな。もう片付いたけど」


「そうか。……ルシフェル、ちょっと頼みがある。とりあえず中に入ってくれ」


 リアムはそう言うと家の中に入る。ルシフェルもついて来ようとして、


「うおっ!おいリアム!お前また結界を強化したのか?俺弾かれるんだけど」


「ん?ああ悪い。ほれ」


 リアムは結界を一時的に緩める。


「なんで強化したんだ?」


「いや、暇だったから修行ついでに」


「お前ほんと修行大好きだな」


「うるせえ」


 ちなみに今の結界は、リアムが認めた人以外は入れないようになっている。超高難易度だが、時間を掛けたら作れた。


「あ、ルシフェルさんお久しぶりです」


「ルシフェルさんこんにちは!」


「おう、久しぶりだな。ルナは元気か?攫われたらしいけど」


「うん!お兄さんに助けてもらったから」


「へえ、そいつは良かったな。それで、頼みってなんだ?」


 ルシフェルはそこでリアムを見る。そのリアムは真剣な表情をしていた。


「……これはあんまり頼りたくなかったんだけどな、この際そんな事言ってられない。ルシフェル、俺に悪魔因子の制御の仕方を教えてくれ」


「……理由を聞いてもいいか?」


「俺は、お前より弱い。そしてアモンはお前と同レベル。なら今の俺では勝てない。そして俺が更に強くなる手段があるとすれば、それは悪魔の力しかない」


「なるほどな。確かに今のお前じゃ、あいつには勝てねぇ。でもいいのか?お前は誰よりも悪魔が嫌いなんだろ?」


「そうだけどな、でもどんなに嫌いでも俺は半魔だ。この力と生きていくしかないんだ。どのみち制御出来ないといつか完全な悪魔になってしまうしな」


「それもそうか………。分かった。いいぜ、教えてやる」


「ありがとう」


 リアムは頭を下げた。


 悪魔の力の制御は前から考えていた。使いこなせたら数段強くなれるのは分かっていたから。ただ頼りたくないというのと、方法が分からなくて手を出さなかった。


「リアムさん、大丈夫なんですか?」


「ああ、大丈夫だ。制御してみせる」


「お兄さん頑張って!」


「おう、ありがとうな」


 リアムはルナの頭を撫でる。気持ちいいのか耳がパタパタし出した。可愛い。


「お前の中にあるのはアモンの因子か?」


「分からないけど、その可能性が高いと思う」


「まぁ当たり前か。一回呑まれた時はどんな感じだった?」


「そうだな……。意識はハッキリしてたけど、行動と見た目は悪魔だったな。あと、頭の中で声が聞こえた」


「……声?」


「ああ、声が語りかけてきた。幻聴とは思えなかったしな」


「……そうか。とりあえず場所を変えるぞ。ミサキ、ルナ。しばらくは帰らないかもしれないが、心配せずに待ってろ」


「分かりました」


「はーい」


「よし、リアムついて来い」


 ルシフェルはそう言うと、また家を出て空に飛び上がった。リアムもそれに続く。



 〜〜〜〜〜



 しばらく飛んでいると、ルシフェルは山の上に降りた。周りも山で囲まれている。


「さて、リアム。重大発表があります」


「なんだ?畏まって」


「落ち着いて聞いて下さい。リアムの中にある因子はアモンのものじゃありません。魔王の因子です」


「……は?」


「魔王ヤルダバオトの悪魔因子です」


「はぁぁぁぁ!!?」


「落ち着けって!声が聞こえたんだろ?」


「あ、ああ」


「普通の悪魔因子ならそんな事は起きない。ただ本能に揺さぶりを掛けるだけだ」


「なっ、なんでアモンが魔王のを?」


「実はな、アモンは次期魔王候補なんだ。魔王候補は魔王からいくつか望む物をもらえる」


「………」


「魔王は悪魔の中でも特別な存在。そして奴の因子はもはや呪いの類だ」


「呪い……」


「その心の弱いとこを突いてくる。より強い力を望むようにな」


 確かにリアムはあの時、復讐と言われれ呑まれかけた。そして仲間を殺そうとした。いや、元仲間を。


「ま、前向きに考えとけ。確かに厄介だが、それを使いこなせたら格段に強くなれる」


「……はぁ。まぁどうしようもないしな。それで、なんでこんなとこに?」


「戦うからだ」


「戦う?」


「ああ、覚えてるか?俺がどうやって悪魔因子を使いこなしたか」


「……魔界で暴れた?」


「そう。だからお前も限界まで戦えばいい。ここらは誰も住んでないから、思う存分暴れていいぞ」


 そう言うとルシフェルは悪戯っぽく笑った。どこか楽しそうだ。


「俺が相手になってやる。本気でこい」


「本気でって、だいっ!?」


 言い終わる前に、気付けばリアムの頰は軽く裂けていた。血が垂れる。全く反応出来なかった。


「なーに遠慮してんだ?自分で言ってたろ?俺はお前より強いんだ」


「くそっ!炎熱地獄インフェルノ!!」


 ルシフェルの殺気を感じたリアムは咄嗟に唱えた。十八番であるその魔法を。

 黒い炎がルシフェルに襲い掛かる。だがルシフェルは余裕そうな顔をしていた。


「へえ、やっぱやるなぁ。でも、まだまだだ」


 そう言うと片手を前に出す。そこには尋常ではない魔力が込められていた。


極寒地獄コキュートス


 刹那、全てが凍りついた。リアムを除く全てが。

 その場はもちろん、周りの山まで凍っている。そしてリアムの放った炎も。


「……は?」


「知らなかったのか?火は凍るんだぜ?」


「んな訳あるか!」


 だが、実際に氷の中には黒い炎が閉じ込められている。

 リアムはすぐに魔剣を顕現させ、聖剣を魔石から取り出す。本気でやらなきゃ死ぬ。それは分かった。


「おっ!クイナから聖剣を渡されてたのか。やっぱタクトを思い出すな」


 呑気にそう言ってルシフェルも魔剣を出した。青い魔剣だ。


「いくぜ、リアム。自分の持ってるもん全部捻り出さなきゃ死ぬからな」


「分かってるよ!」


 リアムは強化魔法を限界まで掛かる。その濃度に体が悲鳴を上げそうなぐらいに。だが、まだ足りない。


 そして悪魔因子を制御するために命懸けの戦いが始まった。




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