閑話 強くて弱い
ルナは人の心が読める。
ルナのお父さんとお母さんは、ルナが物心ついた時にはもういなかった。
そしてその時には人の心が読めた。だから周りの人達が、ルナの事を大切にしてくれてるのが分かって安心できた。
ルナは心が読める事を秘密にしている。理由はなんとなく。
クイナ様は周囲の人全員の心が読めるらしい。前会った時に教えてくれた。
ルナは1人ずつしか心を読めない。だから普通に暮らしてても大丈夫だった。
アマクサ村はみんな優しい人ばかり。ルナもみんなの事が大好きだった。
そんなある日、ルシフェルさんと一緒に人間が村に来た。
ルシフェルさんは時々この村に来る。元天使だけど悪魔で、なのに心は凄く綺麗だ。
村の人達はみんなルシフェルさんを信用している。でも、今回は少し違った。
人間は獣人を奴隷にしたり、意味もなく殺す。大人からよく聞いていた。だからルナも最初は怖かった。
でもお兄さんの心はそんな事考えてなかった。背負わされてるお姉さんは寝ているのか、心が読めなかったけど。
だから恐る恐るお兄さんに近付いてみた。そして聞いてみた。
そしたらお兄さんは自分の事を悪い人だって言ってた。それは本心だった。
でもルナ達には何もしないって言ってた。それも本心だった。
ルナには親がいないって言ったら、お兄さんも少し寂しそうに同じだって言ってた。
お兄さんの撫でる手はとても優しかった。今まで色んな人に撫でられてきたけど、一番気持ちよかった。
その後、お兄さんとお姉さんが住む家に行った時、お兄さんは感動していた。
帰り際、お兄さんの心を深いところまで読んでみた。少し申し訳なかったけど、お兄さんの事が気になったから。
そして心を視て、家に帰ってから吐いた。自分の心じゃないのにとても悲しくなった。苦しくなった。
お兄さんの心は悲鳴を上げていた。顔は笑っていても、心は泣き叫んでいた。助けを求めていた。
お兄さんは辛い思いをしてきた。そしてそれを全て自分のせいだと思い込んでいた。そんな事ないのに、本当は凄く優しいのに、優しいからこそ全部自分のせいにしてた。
そのせいで心はボロボロだった。視ただけのルナが吐いちゃうぐらい。
それを自分の中に隠して生きていた。復讐を果たすために。
色んなものが複雑に絡み合っていた。今まで視たどんな心よりも悲しかった。
お兄さんは弱かった。力は強いけど、心は弱い。それを自分に嘘をついて隠して今まで生きてきていた。自分の心を傷つけて何かを守ってきた。
それでもお兄さんは優しかった。多分、お兄さんの家族がお兄さんを心から愛してたからだと思う。ルナ達と遊んでくれるし、村のお仕事も手伝ってくれた。
ルナはお兄さんの笑顔が好きになった。かっこいいし、優しいのが分かるから。
お兄さんに撫でられるのが好きになった。優しさが伝わってくるから。
お兄さんに触れるのが好きになった。温かい体温を感じられるから。
お兄さんの心の中には2人の女の人がいた。その人達のおかげで今のお兄さんは持ち堪えていた。
その人達を少し羨ましく思った。なんでか分からないけど、ルナも支えたいって思った。
そしてお兄さん達がクイナ様のところに行ってる時、ルナは人間に攫われた。
とても怖かった。ルナを売ろうとしてるのが分かったから。酷い扱いをしようとしてたから。そして気を失ってしまった。
気がついたらルナはお兄さんの背中に乗っていた。一瞬心臓が跳ねたけど、そんなのもすぐに消えた。
お兄さんの心が泣いていたから。いつもは隠しているのに隠せていなかったから。
心を読んでみたら、お兄さんは人を殺したことを苦しんでいた。そんな事しか出来ない自分を憎んでいた。
ルナはお兄さんにそんな事を思って欲しくなくて、偉そうに説教みたいな事をしてしまった。お兄さんを追い詰めるのは分かっていたのに。
それでも止まらなかった。大好きなお兄さんに、自分の事を嫌いにならないで欲しかった。
お兄さんは怒った。とても怖かった。攫われたのなんて比べ物にならないぐらい怖かった。
でも、なんとか堪えた。泣いちゃったけど言いたい事は言った。
そしたらお兄さんは何かを分かってくれた。まだ自分の事が嫌いなままだけど、ちゃんと考えようとしたのは分かった。ルナに感謝してくれたのは分かった。
抱き締めて謝ってくれた。優しいお兄さんに戻ってて嬉しくなった。
帰る時、お兄さんと手を繋いだ。お兄さんはルナに笑いかけてくれた。今までよりもずっと優しい笑顔だった。
ちょっと心を覗いてみた。そしたらお兄さんの中に、少しだけどルナの居場所が出来てた。
ルナは凄く嬉しくなった。これからも支えたい。一緒にいたい。そう思った。
リアムまじチョロイン。
活動報告で今後の投稿日について書きました。そちらを読んで下さい。




