第46話 血塗れの救出
ちょっと短めです。
リアムとミサキが村に戻ると村がなにやら騒がしかった。
「どうしたんでしょう?」
「さぁな。聞いてみるか」
そんな話をしていると、リアムの元にレオが走ってきた。
「リアム!大変だ!大変なんだ!」
「分かったから。一回落ち着け。何があったんだ?」
「ルナが!ルナが人間に攫われたんだ!」
レオによると、リアムとミサキがクレアの元へ行った後、子供達は森で遊んでいたらしい。そこにルナもいた。
そしてルナが少し離れた時に、突然人間が現れてルナを拘束。レオ達が見たのは馬車で連れられて行くルナの姿だったらしい。
レオ達はすぐに追おうとしたが、獣人は勘が鋭い。そしてその人間達には敵わないと直感的に悟った。
そこですぐ村に戻って助けを呼んだが、村の実力者達はちょうど狩りに出かけていた。今は彼らの帰りを待っているところらしい。
「リアム!ルナを助けてくれ!頼む!」
そこまで説明するとレオはリアムに頭を下げようとした。だが、リアムはそれを手で止める。
「頼まれなくても助けるさ。それで、そいつらはどこに?」
リアムが尋ねるとレオは南の方角を指した。海がある方だ。
「分かった。俺が助けてくるからレオはここで待っててくれ。ミサキ、念のためにここの警戒も頼む。他にも潜んでたら厄介だ」
「わ、分かりました!」
リアムは最後にレオの頭を撫で、南に向かって走り出す。その速度は凄まじく、一瞬でその姿が見えなくなった。
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リアムは走りながら感知魔法を最大出力で展開し、考える。
レオ達は強い。獣人と比べればまだまだだが、普通の人間と比べれば強いはずだ。それでも敵わないと察したのなら、敵は恐らく上級冒険者。
通常、人間がヴィリレタル大陸にいることはない。ルシフェルは奴隷商がいると言っていたが、それは秘密裏に海を渡っているのだろう。
ならば奴らはすぐには海に出ないはずだ。すぐに出ればバレる可能性がある。だから時期を見計らうだろう。
ならその時期まではどうするか。自分ならアジトなどの拠点を作ってそこに身を隠す。
リアムはそう考えると海への最短ルートから外れ、森の中を走る。すぐに地面に残った馬車の跡を見つけた。
それを辿り走ると、大きな岩の建造物が佇んでいた。恐らく土魔法か何かで作ったのだろう。背景に溶け込んでいる。
だが、リアムの感知魔法からは逃れられなかった。
リアムはファルシオンを抜き、目を閉じて深呼吸をする。そして再び開けたリアムの目は酷く冷たいものに変わっていた。
〜〜〜〜〜
「頭ぁ!この獣人どうしやす?」
「気ぃ失ってんだろ?そこらに置いとけ」
男は部下にそう言うと下卑た笑みを浮かべる。
「へへ、良い獣人が手に入ったぜ。これぁ高く売れんなぁ」
「ですねぇ。頭、ちょっとぐらい遊んでもいいですかね?この獣人、なかなか好みの面してるんでさぁ」
「馬鹿かお前は。初もんの方が高く売れるに決まってんだろ。売った金で遊郭にでも行きゃいい。つーかお前ロリコンかよ」
「違いますよ。ちっこいからこそ締まりがいいんでさ」
部下は悔しそうな顔をする。それを聞いていた周りの部下達も悔しがった。それを見て男は呆れる。
グラム大陸では獣人の女は高く売れる。金を持つ上層階級が好んで買うからだ。
この一味はある国の上級冒険者で名も知れている。だが、裏ではこういった人身売買に手を出していた。今までにもそれでかなりの額を稼いでいる。
今回捕まえた獣人はまだ幼いが、可愛らしい顔をしている。一部の上層階級は欲しがるだろう。
と、男が得るだろう利益を考えてニヤついていると外が騒がしくなってきた。
「どうした!?」
「頭!襲撃者です!」
「なにぃ?獣人か!?」
「いえ、それが人間です!」
人間がこの大陸にいるはずがない。いるとしたら自分達の同業者。なら襲撃者の目的は獲物の横取りか。
男はそう考えて苛ついた。
「さっさとぶっ殺せ!遠慮はしなくていい!」
その声に部下は全員部屋から飛び出す。男は1人だけ呼び止めた。
「おい!俺も出る!お前はこの獣人を……」
だが男はそこで言葉を止めた。目の前にいた部下の頭が爆ぜたのだ。その横には見知らぬ人間が立っている。
男は曲がりなりにも上級冒険者。動揺しつつも瞬時に感知魔法を展開した。
すると既にこのアジトには自分を含め3人の反応しか残っていなかった。
自分、捕まえた獣人、そして同じ人間か怪しい程の殺気を放つ、目の前の男。それは黒尽くめの姿を血で赤く染めていた。
「おっ、お前はなんだ!何者だ!?」
やりあれば死ぬ。そう悟った男は焦りながらそう言った。獣人を渡してでも死にたくはなかった。
「狙いはこの獣人か!?なら渡すから、命だけは助けてくれ!」
もはや男に戦うという選択肢はなかった。目の前にいる黒尽くめは、今も更に殺気を高めている。
「……なあ」
そこで黒尽くめは口を開く。男は黙ってそれを聞くことしか出来なかった。
「俺はこの子を助けに来たんだ。お前らに攫われたから」
黒尽くめは静かにそう言う。男は人間が獣人の味方をするとは考えられなかったが、何も言えなかった。
「ここで問題だ。俺は獣人達を守りたい。でもお前らみたいなクズ共がいる。さて、獣人を守るためにはどうしたらいいでしょう」
「もっ、もう絶対に手を出さねぇ!この大陸にも来ねえ!それでいいのか!?」
男は殺気に震えながらもなんとか答えた。答えなければ殺されると思ったからだ。
「残念。ハズレだ」
だが、黒尽くめは嘲笑うように言った。その声音に男の背筋は凍る。
「不安要素を残すわけないだろ?正解は、そういったクズ共は片っ端から殺す、だ。そしたらそのうち守る必要も無くなるしな」
黒尽くめはそう言って剣を構えた。そして座り込む男を冷たい目で見下ろす。
「ひっ、やめ、やめてくれ!」
「死ね」
最期に男の目には振り下ろされた剣と、そしてなぜか辛そうな表情をする黒尽くめの顔が映った。




