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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第3章 別れから出会い
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第43話 獣人との日々

 

 リアムとミサキがアマクサ村に住み始めて数日が経った。まだ数日だが子供達とは仲が良く、大人達とも少しずつ距離を縮めている。


 家は2人で使うには広かったが、それでもすぐに慣れた。この村での生活も順調と言えるだろう。


 リアムは朝起きると村の周りを走りに行く。その時にリアムに挨拶をしてくれる人も徐々に増えてきた。


 次に村の家の庭で素振りをする。その後は家に帰り、朝食の準備をする。


 昼までにもう一度鍛錬をし、昼食の後には獣人の農作業を手伝ったり、一緒に遊んだりする。


 そして夜は家にある大きな風呂に入り、夕食を済ませてベッドで眠る。


 リアムの生活は充実していた。


「リアムさん。お話があります」


 その日、リアムはミサキに呼び出された。と言っても同じ家に住んでるので呼び出しはおかしいが、とりあえず話があると言われた。


「どうしたんだ?」


「どうしたんだじゃありません!リアムさんは何でも出来すぎです!」


 とんでもなく理不尽な怒り方をされた。ミサキは初めの頃は緊張しているようだったが、少しずつ慣れてきたのか今ではすっかり元通りだ。


「これでは私の存在価値がありません!なので、役割分担をしたいと思います」


「役割分担?」


「はい!例えば、今日は私が食事を作って、明日はリアムさんが作る、みたいな感じです」


「なるほど。別にいいぞ」


「では、食事は毎日交互に作りましょう。掃除は食事とずらして交互に担当するのはどうです?」


「ん〜掃除は魔法を使えば一瞬だから俺がやるよ。手間じゃないし」


「分かりました。洗濯は……」


「それも魔法を使えば一瞬だな」


「この世界、魔法が万能過ぎて……」


「まぁまぁ。楽出来るしいいじゃん」


「そうですが……」


「じゃあこれからもよろしくな」


「はいぃ」


 こうして話し合いはすぐに終わってしまった。



 〜〜〜〜〜



「ねーねーお兄さん!何してるの?」


 リアムが村の近くに流れている川で釣りをしていると、ルナが背中にのしかかり聞いてきた。ルナは親がいないからかよく外に出ており、誰よりもよくリアムと一緒にいた。


「ん?釣りだよ」


「釣り?」


「そ。この竿についてる糸の先には釣り針が付いてたな、それで魚を釣るんだよ」


 大分ざっくりとした説明だが、未だに魚が釣れたことの無いリアムにはこれが限界だった。


「へー変なの」


「まぁ俺も最初はそう思ったんだけどな、こののんびりとした雰囲気がいいんだよ。ルナもやってみるか?」


「うん!」


 ルナは竿を持つとじっと水面を見つめた。


「飽きた!」


「早いな!まぁ子供はこんなもんか?」


 リアムは竿を返してもらうと、またぼーっとし出した。


「おーいリアム!一緒に遊ぼうぜ」


 すると、今度は村の方からレオがやってくる。レオは虎の獣人だ。


「あ〜今釣りしてんだよ。もうちょっと待っててくれ」


「待つぜ!ルナは?」


「ルナはお兄さんと一緒にいる!」


「分かった!じゃあ向こうで遊んでるから後で来いよ!」


 そう言うとレオは颯爽と行ってしまった。流石は獣人。物凄い速さだった。


「良かったのか?遊びに行かなくて」


「うん!お兄さんといると楽しい!」


「そっか」


 ルナはまだ8歳。それなのに親がいないため一人暮らしをしている。と言っても周りの大人達がよく面倒を見に行くため不便はないらしい。


「なぁルナ。今日はうちに晩飯食いにくるか?」


「いいの?」


「ああ。ミサキも喜ぶだろ」


「わーい!じゃあ行くね!」


 ルナははしゃいでリアムを揺らす。猫耳がパタパタと動いている。可愛い。


 リアムはまた魚は釣れないと悟った。


「よし。じゃあそろそろ遊びに行くか」


「うん!」


 獣人の遊びは色々とあるが、その内の一つが狩りだ。


 高い身体能力を持つ獣人は、狩りで得た獲物で力を誇示する。そして褒められたいという子供らしい思惑から狩りを行う。


 遊び、と言えるのは獣人だからだが。


「そっち行ったぞファニス!」


「よっしゃ、任せろ!」


 レオが数人がかりで猪を犬耳のファニスの方へ誘導する。それをファニスが弓で穿った。


「やったぜ!猪だ!」


「流石ファニスだな!正確な狙撃だぜ!」


「いや、レオ達のおかげだ!」


 獣人達はお互いを大切にし、尊敬し合う。手柄を取り合わない様子を見てリアムは微笑んだ。


「ってうお!?リアムそれもしかして熊か!?」


「ん?ああ」


「ど、どうやって捕まえたんだ?」


「殴り倒した」


「殴り倒した!?すげぇ!」


 リアムはこの狩りで子供達の付き添いをしていた。リアムの実力を知ったアオに、守るように頼まれたのだ。


 獣人とは言っても子供では限界がある。だからいつもは誰かが付き添うのだが、子供達に懐かれたリアムがその適任者となったのだ。


 熊は近くにいたので、リアムは危険と判断し殴り倒してきた。もちろん身体強化はしている。


「お兄さんやっぱり凄いね!」


「まぁ、お前らもいつか倒せるさ。でも無理はすんなよ?」


「「「「「は〜い!」」」」」


「じゃあ今日は帰ろうぜ!」


 レオがそう言うとみんな続いた。リアムも熊を担いで山を降りた。



 〜〜〜〜〜



「父ちゃん!今日は凄いぜ!俺達で猪を捕まえたんだ!」


「へぇ、よくやったな」


 レオの父、ライグはこの村で一番と言われる実力者だ。それでいて、性格は穏やかだ。


「お?それ熊か?」


「ええ、そうですよ。子供達の近くにいたんで、ついでに狩ってきました」


「流石だな。しかも、外傷がない。もしかして殴り倒したのか?」


「よく分かりましたね。身体強化は使いましたが、その通りですよ」


「はぁ〜リアムは凄いな。魔法ってのは便利なもんだ」


「これはみんなで分けて下さい」


「いいのか?」


「ええ。仲良くしてもらってるお礼です」


「ははっ!そんな事気にしなくていいって!もうリアムとミサキは俺達の仲間だからな!」


「ありがとうございます」


「おう!ま、今回はお言葉に甘えておくけどな!」


 ライグはそう言うと熊を片手で持ち上げる。虎人族の筋力は半端ではない。


「お〜い!みんな!今日は子供達が猪、リアムが熊をとってきたぞ!」


 ライグは広場で叫ぶ。それを聞いて至るところから人が出てきた。


「じゃ、俺はそろそろ帰るかな」


 リアムはそう呟くと、口々に礼を言う獣人達に適当に応え、ルナを連れて家に帰っていった。



 〜〜〜〜〜



「あ、リアムさんお帰りなさい」


 家に帰るとミサキが夕食の支度をしていた。


「お姉さん、お邪魔します!」


「ミサキ、ルナの分も準備できるか?」


「はい、できますよ」


 そう言って台所へ戻っていく。


「ふぅ」


 リアムは一つ、ため息を吐く。


 リアムはずっとルシフェルを待っていた。頼みたい事があるのだ。それはもちろん復讐関係だが、彼はまだ帰ってこないので何もできない。


 リアムは早くアリサを迎えに行きたかった。こうして家の中で暮らしているとそう思う事が増えた。


 別にミサキを追い出したい訳ではない。むしろミサキにも一緒にいて欲しい。


 それに関しては色々と考えはあるのだが、とりあえずアリサと会いたい。それがリアムの正直な気持ちだった。


 リアムの隣ではルナがシチューを一心不乱に食べている。猫耳がパタパタと動いている。リアムはその姿を見て微笑んだ。可愛い。


「あ、そういや忘れてたな……」


 そこでリアムは、アオに言われていた事を思い出す。


「なぁミサキ。明日はちょっと北の洞穴に行くけど、付いて来れるか?」


「はい。大丈夫ですけど、何か用があるんですか?」


「ああ、村長に言われてたんだけどな、会って欲しい人がいるらしい」


「誰です?」


「俺も詳しい事は知らないんだが、クイナって名前の狐人族で、『九尾』って呼ばれてるらしい」


「九尾?」


「ああ。知ってるのか?」


「いえ、それも私のいた世界で聞いたことがある名前で……」


「へぇ。どんな意味なんだ?」


「意味はそのままで、九つの尻尾を持っている狐なんですけど」


「ふむふむ」


「その狐は妖怪なんですよ」


「……へ?」




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