第42話 家
「おいリアム。お前も中に入れ」
リアムとミサキが獣人の子供達と一緒に笑っていると、村長の家からルシフェルが出てきた。
「お?早速獣人と仲良くなったのか?」
「まぁ子供だけだけどな。それよりも、俺になんか用があるのか?」
「ああ。村長がお前と話したいんだとよ。ミサキはもうちょいここで待っててくれ」
「そうか。分かった」
「分かりました」
リアムは最後にルナを撫でると、家の中に入っていった。
〜〜〜〜〜
「初めまして。儂はアマクサ村の村長、アオじゃ。君がタクト様のご子息ですな?」
中に入ると初老ほどの男が名乗った。狼のような耳が生えており、その纏う雰囲気から見ただけでかなりの実力者と分かる。
「ええ。タクト・イガラシの息子、リアム・イガラシです」
「ほほ、会えて光栄じゃ。タクト様にそっくりな顔じゃな。目元はアナ様にそっくりじゃ」
アオはそう言うと笑った。リアムはその態度に少し驚く。
「あの、アオ様。俺が怖くないのですか?」
「様はいらんよ。君の両親はこの村を発展させてくれた恩人なのじゃ」
「恩人?」
「そうじゃ。この村は少し前までは荒れ果てての、生活するのも苦しいぐらいじゃった。それをタクト様が提案した農業技術や建築技術でここまで発展出来たのじゃよ。それも、大陸中に広まっておる」
アオは誇らしそうに語った。きっと本当に嬉しかったのだろう。
「そんな彼らの子供を無下になどせんよ」
「そう……ですか。でも、俺から言わないといけない事があります」
「なんじゃ?」
「俺は……半魔、なんです。しかも、最近その力を制御出来なくなりつつある。そんな危険な存在なんです」
「半魔……ふむ。それがどうかしたのか?」
「……え?いや、一応悪魔ですよ?」
「それはルシフェル殿もそうじゃろう?正直に話してくれたし、何よりもう子供達と打ち解けたんじゃろう?」
「ま、まぁ一応……」
「獣人というのは勘が鋭いんじゃよ。特にあまり先入観を持たない子供の方が、より敏感に反応する。その子供が心を許したのじゃ。儂らは同族を大切にするし、信じる。だから怖がったりせん」
アオは当たり前のように言った。
リアムは人間として受け入れられるだけで無く、半魔としても受け入れられた。何も言えない。
「それにリアム殿が心配するのは儂らのためじゃろう。儂らに危害を加えないために」
「それは……」
「安心せい。きっと他の獣人達ともすぐに打ち解けられる。それに、この村の家もやろう」
「なっ!?いや、そこまでは」
「いいんじゃよ。かつて君の両親が使っていた家じゃから、ぜひ君に使って欲しい」
「……ありがとうございます」
リアムが素直に礼を言うと、アオは満足そうに頷いた。
「それとじゃな、落ち着いてからでいいから、ある程度落ち着いたら会って欲しい人がいるんじゃ。いいかの?」
「ええ、もちろんです。ちなみにその人物とは?」
「そうじゃな……。彼女の名はクイナ。『九尾』の二つ名を持つ狐人族じゃ。北の洞穴に住んでおる」
〜〜〜〜〜
「話は終わったのか?」
リアムがアオの家から出ると、外で待っていたルシフェルが声を掛ける。
「ああ。昔ここで父さんと母さんが住んでた家を貰えることになった」
「へぇ、良かったじゃねえか。あれは立派な家だぜ?」
リアムはミサキの方を見る。彼女はまだ子供と戯れていた。
「ミサキ。とりあえず住んでいい場所を貰えたから移動するぞ」
「は、はい。……え?住む?」
「お〜お兄さんやっぱりここに住むんだ。やったね!」
ミサキは何やら混乱しているようだが、ルナはリアムに飛びつき背中に登ってきた。
「ルナも見に行っていい?」
「ああ、いいぞ」
リアムの答えを聞いてルナは喜ぶ。そして他の子供もリアムに飛びついてきた。耳やら尻尾が気持ちいい。
「んじゃ、行くか」
歩き出したルシフェルにリアム達はついて行く。それに合わせて他の獣人達もぞろぞろとついて来た。
「あ〜懐かしいなぁ。ほれ、ここだぞ」
一行が止まったのはアオの家ほどではないが、大きな家の前だった。村の端に位置する。
「これは……結界か?」
「おっ、やっぱリアムは見ただけで分かるか。そう、ここには結界が張られてる。超高度なやつだぜ?」
「どんな効果なんだ?」
「まず悪意や敵意を持つ者は弾かれる。んで結界内に誰かが入ると分かるようになってるんだ。俺が張ったんだ。凄いだろ」
「凄すぎだろ!第三者の感情に反応する結界って、神級じゃねえか!」
「まぁ俺は天才だからな。ま、入ってみろって」
リアムはそう言われると家の扉を開ける。中は広く、部屋もたくさんあった。
「これ、まじで貰ってもいいのか?」
「良かったね、お兄さん!」
子供達は家の中を走り回っていた。しかしリアムは少し戸惑う。
「村長が言ったんだ。素直に貰っとけ」
「……そうだな。なら、俺も結界張るか」
リアムはそう言うと、決して少なくない魔力を家の周りに発生させる。
「おい、お前これって……」
「外からの魔法を消す結界だ」
「まじか!お前こそ凄いな!もはやこの家は要塞じゃねえか!」
「否定はしないけどな。まぁこれぐらいなら村自体に張ってもいいけど」
と、リアムとルシフェルが話しているとミサキが割り込んできた。
「あの、リアムさん。私はどうしたらいいんでしょう?」
「ん?何が?」
「いえ、だからその、私はどこに住めばいいんでしょう?」
「え?この家だろ?」
「へ?……リアムさんは?」
「そりゃ、この家だろ」
「え?……え?じゃあもしかして、同棲……ですか?」
「ん?そうなるかな。まぁ仕方ないだろ」
「ひょ、ひょんな!」
「ひょんなってなんだよ。嫌か?」
「い、いえ!そんな事はないです!」
ミサキは顔を赤くしながら否定する。それを見ていたルシフェルが面白そうに笑った。
「なんで笑ったんだ?とりあえずミサキ。好きな部屋選んでこい。ルシフェルも住むか?」
「そうだなぁ……。とりあえず俺は一回ユウのとこに行ってくるから、戻ってきたら頼むかもな」
「分かった。あとはこの家の名前だな……」
「名前とか別にいらねぇだろ。あ、いや待てよ?タクトとアナが住んでて、今からリアムが住むんだ。イガラシハウスでいいんじゃないか?」
「お前、天才だな。今日からこの家はイガラシハウスだ!」
こうして、リアムはとりあえずの拠点として、アマクサ村のイガラシハウスを手に入れた。
良いタイトルが思いつきませんでした。




