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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第1章 大切なもの
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第4話 初日から

これはっ••••まだいける!!

 

 スイがリアムの元から去った次の日。リアムは寮のベッドの上で目を覚ました。


「ベッドで寝るのも、1人で寝るのも、目を覚ましたら天井が見えるのも久しぶりだな……」


 なんせ7年ぶりだ。スイに拾われてからはテントの中で雑魚寝、隣にはスイが寝ていた。普通スイが異性の隣に寝ていたら理性など一瞬で飛びそうなのだが、まだ幼く、また5歳から一緒にいたリアムにはそんな感情はなかった。


「改めて考えると、俺にとって師匠はおっきな存在だったんだな……」


 起きても隣にスイがいない事に少し寂しさを感じるとリアムは呟いた。


「っと、今は感傷に浸ってる場合じゃ無いな。えっと授業は7時からだっけか」


 今日は初授業。リアムも少しばかり緊張していた。


「えっと今は……ん?12時?……はぁ!!?」


 窓から外を見ると太陽は真上に上がっている。つまり、


「初日から遅刻かよ!」


 リアムは急いで制服に着替えると部屋を飛び出した。



 〜〜〜〜〜



「はっはっはっは。これはあれだな。噂のデジャヴってやつだな」


 寮から出たリアムは1人で笑いながら歩いていた。ウロウロと。


 急いで外に出たのはいいが、2年A組がどこにあるのか分からない。要するに迷子だ。


(どーすんだよこれ!どーすんの!?終わった!初日から遅刻とか絶対虐められる!人間は違う存在を除きたがるって師匠も言ってたし!こんなエリート校で遅刻する奴とか絶対いない!最悪だ!!)


 リアムは混乱していた。昨日のように誰かに聞けば良いだけの事なのだが今のリアムは気付かなかった。


(もうこれは最終手段を使うしか無い!)


 そしてリアムは401号室に戻るとベッドに潜り込んだ。


("俺は今日はいなかった作戦"だ!明日が初日って事にしとこう)


 リアムはそう決めると静かに目を閉じた。



 〜〜〜〜〜



 次の日、リアムは6時過ぎに目を覚ますと、スイから貰った魔石からパンを取り出し軽く朝食を摂った。それから制服に着替え、時間に余裕を持って外に出る。


 寮から出ると、そこには大勢の生徒がいた。その生徒達が一斉にリアムを見る。見知らぬ、しかも黒い髪をした生徒がいたら目立つのは当たり前だ


(怖っ!ここってこんなに生徒がいるんだな)


 基本森の中で暮らしていたから人混みには慣れていない。リアムは一つ深呼吸をすると流れに身を任せて歩いていった。



 校舎の中で教室を探していると、2年A組は割とすぐに見つかった。ドアを開けて中に入るとまた教室中の視線を集める。リアムは冷や汗をかきつつも平静を装い、1番後ろの窓側の席に座った。


 教室にいる生徒達がリアムの方を見てコソコソと話している。リアムは窓の外を見ながらもその気配を感じていた。魔力を耳に集めて聴力を強化すると、どうやらリアムに声を掛けるか迷っているらしかった。


 と、その時教室のドアが乱暴に開かれ何かがリアムに向かって飛んできた。リアムは危なげなくそれを掴む。それは毒の塗られたナイフだった。


(これは麻痺毒か?結構過激だな)


 すると今度は無数のナイフがリアムだけに向かって飛んできた。教室にいる大半の生徒達は急な出来事に驚いている。


 リアムはそんな生徒達の反応を無視し、右手を動かす。目にも留まらぬ速さで手を動かし終わると、その手には大量のナイフが掴まれていた。


(襲撃者はまだ姿を現さないか……。この技量は教師、恐らく担任だろうな。やっぱ昨日の事バレたのかなぁ)


 リアムはそんな事を考えるとながらナイフを投げ返す。が、そのナイフは途中で風に弾かれた。


(おお、魔法まで使ってくんのか。流石は実力主義の学校だな。そろそろ攻撃魔法でも撃ってくるかな)


 そう思っていると火球が5つ飛んできた。狙いは正確だ。


(これって教室壊してもいいのかな?)


 そんな事を考えつつリアムは指を鳴らす。途端、火球は5つ全てが弾けた。


(待て、師匠に目を付けられたら面倒くさいことになるって言われてたな。ここらでやめとくか?)


 と、リアムが迷っていると外から影が教室に入ってきた。影は教壇に立つと、リアムに向かって炎の槍を10本以上撃ち出す。


 リアムはまた指を鳴らす。するとやはり槍は全て弾けて消えた。影はまた魔法を撃とうとしている。


(ここら辺が潮時か)


「昨日はサボってすいませんでした!だからもう勘弁してください!」


 そう言うとリアムは席を立って頭を下げた。魔法は飛んでこない。


 リアムは顔を上げて前を見た。そこに立っていたのは20代ほどの女だった。長い髪は綺麗な金色で、顔も整っている。そして胸はかなりでかい。


 だがその顔も今は悔しげに歪めていた。


「あっあなた、一体何者なのよ!?」


 女はリアムに向かってどこか怒っているような様子で聞いてきた。


「何者と言われましても……。え〜昨日からこのクラスに所属する事になりました、リアムと申します。よろしくお願いします」


 とりあえず礼儀正しくお辞儀をする。だが、


「そんな事聞いてるんじゃないわよ!あなた、今の私の攻撃を座ったまま全て防いだのよ!?」


「いえ、これはその……」


(やばい、俺とした事が全然気付かなかった。マジで俺座りっぱなしじゃん!何してんの!?俺!そこは立っとけよ!)


 リアムは昨日以上に混乱していた。頭の中がぐちゃぐちゃだ。どう言い訳しようか。そんな事を考えていると、


「ちょっとこっちに来なさい!」


 女がリアムに向かって手招きしてきた。リアムは素直に女に近付き目を合わせる。


(近くで見るとますます美人だな。)


 そんな事を考えながら見ていると女は仄かに顔を赤く染め、


「ここに正座しなさい!」


 と、リアムを正座させた。そして仁王立ちをしながら説教を始めた。


「あなたね、昨日からこのクラスに来る筈のリアム君でしょ!?昨日来なかったからどれだけ私が心配してたか分かる!?分からないでしょ!?だからそこで平然と座ってたんでしょう!?私のところに来もせずに!ちょっと舐めてるみたいだからお灸を据えてやろうかと思ったら身じろぎもせずに全部防ぐし!あなたまだ12歳なんでしょう!?なのになんで全部防いじゃうのよ!別に私は本気じゃ無かったわ!ええ、そうよ!本気では無かった!それでもちょっとぐらい受けてくれてもいいじゃない!なんか私が馬鹿みたいじゃない!ちょっと格好つけて攻撃したのに恥ずかしいじゃない!どうしてくれるのよ!私の尊厳を返しなさいよ!」


 少しずつ話がずれていっているのだが、本人は気付いていないらしい。と、言うよりもこの説教で尊厳を失ってる気がする。リアムは正座しながらそう思った。


 そして置いてけぼりにされた生徒達はそんな2人を遠くから見守っていたのだった。




今日中にあと1話投稿します。



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