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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第3章 別れから出会い
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第41話 アマクサ村

 

「アマクサ……?」


 ルシフェルが言った目的地の名にミサキが反応する。


「ミサキは知ってるのか?」


「いえ……ただ、私のいた世界にもそんな地名がありましたから」


「へぇ、やっぱりそうなのか」


 そのミサキの言葉にルシフェルは笑みを浮かべる。


「どういうことだ?」


「いやな、その村に名前をつけたのはタクトなんだよ。なんでも、故郷の地名だって言ってたな」


「なるほど……だからミサキは知ってるのか。父さんの故郷か。ミサキ、アマクサってどんなとこなんだ?」


「えっと、九州地方の熊本県ってところにある市でして」


「きゅうしゅう地方のくまもとけん?……それって国みたいなもんか?」


「いえ、国と言うよりも街の方が近いと思います」


「ん〜難しいな。またゆっくり教えてくれよ」


「は、はい。頑張ります」


 そんな事を話していると少しずつ陸地が見えてきた。


「ここがヴィリレタル大陸だ。アマクサ村はもう少し先にある」


 そこでルシフェルは悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「速度を上げるから、ついてこいよ?」


 そう挑発すると、ルシフェルの飛ぶスピードが上がった。


「んのやろっ!」


 リアムも速度を上げる。だが、元からほぼ全速力で飛んでいたために徐々に離されていく。


「くそっ。やっぱあいつ速いな。ミサキ、舌噛むなよ?」


「え?」


爆発インジェクト


「ひゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 リアムが呟いた瞬間、後方で飛ぶのとは逆向きに連続で爆発が起きた。その勢いに乗ってどんどん加速する。そして遂にルシフェルに並んだ。


「ハッハー!やっぱお前面白いな!」


「うるせぇ!負けんのは嫌いなんだよ!」


「クク、そんなとこもタクトにそっくりだな!もういっちょ上げるぞ!?」


「望むところだぁ!!」


 こうして2人は本来の目的を忘れ、しばらくの間空で競い合っていた。



 〜〜〜〜〜



「はぁはぁ。お前、速すぎだろ」


「ふふん、まだまだだな」


 リアム達はある村の近くに降りていた。リアムの息は荒いが、ルシフェルは余裕そうだ。それを見てリアムは悔しがる。


「てかバテすぎじゃないか?魔力はまだ余裕あんだろ?」


「いくら強化してるからって、連続で爆風受けんのはしんどいっての」


「あ〜そっか、単純な速さで勝てないからなんか爆発使ってたな」


「ぐぬぬ」


 そのルシフェルの態度にリアムはイラつく。だが反論出来ない


「……はぁ。それで?ここがアマクサ村か?」


「ああ」


 そこは穏やかな村だった。近くには森があり、川も流れている。規模はなかなか大きく、木で出来た家が建ち並んでいる。


「ここにも父さんはいたのか……」


「ここの獣人は皆タクトに感謝してる。リアムも最初は警戒されるかもしれないが、すぐに受け入れられるさ」


「そうか……それよりも」


 そこでリアムは抱えていたミサキを見る。


「ミサキが寝てるんだが」


「気絶してるんだろ。かなりの速さだったしな」


 ミサキはリアムの腕の中で気を失っていた。いつからか分からないが、どこか幸せそうな顔をしている。


「それで?この村に滞在するのか?」


「ああ。とりあえずここの村長とは顔馴染みだから挨拶に行く。リアムもついて来い」


 そう言うとルシフェルは歩きだした。リアムも何も言わず、ミサキを背負ってついて行く。


 村の中は割と賑わっていた。店なども出ており、リアムには村と言うより街に見てた。


 だが、2人の周りには人がいない。遠くから警戒している。


 いや、2人ではなくリアムに警戒していた。むしろルシフェルには挨拶をする獣人もいるぐらいだ。


 一応ルシフェルは悪魔なのだが、それだけ信頼関係があるということなのだろうか。リアムは少し学園のことを思い出したが、すぐにそれを頭から追い出した。


「……獣人が人間を嫌いなのは知ってたけど、ここまであからさまだと傷付くな」


「人間の奴隷商が獣人を捕まえて奴隷にしちまうんだ。だから、嫌いと言うより怯えてんだよ」


「奴隷?」


「ああ。獣人は力があるから働き手として使えるし、女は容姿が良いからそういう目的(・・・・・・)としても需要があるんだとよ」


「そうか……。なら、怯えられるのも当たり前か」


「そう思えるだけでお前は大丈夫だよ。っとほら、着いたぞ」


 ルシフェルは一つの大きな家の前で止まった。村の中でも一際大きく、立派な家だ。


「ちょっと村長と話してくるから、待っててくれ。長くなるかもしれないが」


 ルシフェルはそう言うと自然に家の中に入る。リアムは周囲の視線に居心地の悪さを感じながらもじっとしていた。


 しばらくすると、リアムの元に小さな獣人が近寄って来た。茶色の髪で猫の耳と尻尾が生えている、可愛い女の子だ。


 ゆっくりと、恐る恐る近づいて来る。リアムはその姿を見て、何か不思議な感情が湧き上がってきた。


「ねぇ、人間のお兄さん。お兄さんは、悪い人なの?」


 その女の子は、開口一番リアムにそう尋ねた。リアムは正直罵倒されるのかと思っていたから面食らった。


「それは……どうして?」


「大人の人達がね、みんな人間は悪いって言うの。だからお兄さんも悪い人なのかなって」


 普通、悪い人かもしれないのに近付くだろうか。恐らくこの子は好奇心が強く、そして世の中の理不尽を知らないのだろう。リアムはそう思った。


「そうだな。まぁ良い人か悪い人かで聞かれたら、俺は間違いなく悪い人だな」


「でもルナには何もしないよ?」


「悪いって言うのにもたくさんあるんだよ。とりあえず信じてもらえるかは分からないけど、俺は獣人に対しては危害を加えない。それは約束する」


「やっぱり!お兄さん優しそうだもんね!」


「………」


「お兄さん?」


「いや、なんでもない。君はルナでいいのかい?」


「うん!お兄さんは?」


「俺はリアム」


「ふーん。やっぱりお兄さんはお兄さんでいいや。お兄さんはこの村に住むの?」


「どうだろうな。人間は嫌われてるし」


「ルナは嫌いじゃないよ?」


「はは、そっか。ありがとう。でもなんでも信用するのはダメだぞ?獣人に危害を加える人間がいるのも事実みたいだからな」


 そうな事を話していると、他の子供達もリアムに近寄って来た。皆色々な耳や尻尾を生やしている。リアムはまたも不思議な感情が湧き上がってきた。


「みんな聞いて!このお兄さんは悪い人だけど、ルナ達には何もしないだって!」


 ルナが近付く子供にそう言うと、一気に警戒が解けたように見えた。


 だが、周囲で様子を伺っている大人はまだ警戒している。近寄る子供の親らしき獣人は武器を構えていた。恐らくリアムが何かしたらすぐに襲いかかるのだろう。


「ありがとう、ルナ。でも親が心配するぞ?」


「……ルナ、お父さんとお母さんいないの」


「そっか……。俺と同じだな」


「そうなの?」


「ああ」


 リアムはそう言ってルナの頭を撫でる。周囲は騒めくが、ルナは気持ち良さそうに目を細めた。


「お兄さん、撫でるの上手だね」


「そうか?」


 その時、リアムはさっきの不思議な感情が何か分かった。要するにモフモフしたいのだ。しかし、警戒されているこの場でそれをするのは騒ぎを起こすだろうと思い、ぐっと堪える。


「ぼ、僕も!」


「私も!」


 などとリアムが考えていると、子供達が頭を差し出してきた。リアムはミサキを背負っているため、片手で順番に撫でていく。


 どうやらリアムには頭を撫でる才能?があるらしい。皆気持ち良さそうにしている。


 その様子を見ている大人達も、本当に少しずつだが警戒を解いていくのが分かった。


「ん……ここは……っ!?」


 ミサキは目を覚ますと、リアムに背負わさせている事に驚き慌てる。


「お?ミサキ起きたか?っておい!暴れるな!」


 リアムはミサキを降ろす。そして現在の状況を説明した。


「そ、そうですか……。あ、えと、その、背負ってくれていてありがとうございます」


「おう。今はルシフェルを待ってるとこだ」


「ねーねーお兄さん!もっと撫でて!」


「ああ、はいはい」


 リアムはまたルナ達を撫で始める。ミサキはそこで獣人の子供達に気付いた。


「この子達が獣人……。か、可愛い」


「お姉さんは誰?悪い人?」


 ルナが先ほどと同じようにミサキに尋ねる。


「え?ど、どうだろ……」


「ルナ。ミサキは悪い奴じゃないぞ。びっくりするぐらい良い奴だ」


「へ?」


「あはは!お姉さん顔真っ赤!」


 ミサキは顔を赤くしてわたわたする。それを見た子供達は笑い出した。それを大人は遠巻きに見ている。


 そこには確かに笑い合う人間と獣人の姿があった。





ちなみに僕は天草出身どころか九州にも行った事がありません。

名前を考えた時にフッと降りてきました。

不快に思ったりする人がいたらすみません。


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