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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第3章 別れから出会い
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閑話 在り方ゆえに

 

 リアムが学園から去ってから、俺達のクラスには淀んだ空気が流れていた。クレア先生はまだ療養中だ。


 皆それぞれに考えていることはあるが口には出さない。そしてそれは俺も同じだった。


 俺はあれからずっと悩んでいた。あの時、悪魔になったリアムに恐怖を感じてしまった。リアムに攻撃をしてしまった。


 だが、それは果たして正しかったのか。ミサキは言った。私達を守ってくれた、と。


 確かにそうだ。リアムは俺達を何度も助けてくれた。それなのにリアムが悪魔になって暴れたのを見ただけで恐れてしまった。


 いや、恐れるのは仕方がないだろう。なにせ、一度は悪魔に殺されかけていたのだから。


 それでもだ。


 それでも俺はリアムに返せきれないほどの恩がある。


 まだここに来たばかりの俺とよく話してくれた。並んで釣りをするのは楽しかった。俺のせいで全滅しかけたところを助けてくれた。そして、俺を怒ってくれた。


 リアムが俺を怒ってくれたおかげで、過ちに気付けた。そして本当の勇者になろうと思えた。


 それなのに俺はリアムを攻撃してしまった。酷い事を言ってしまった。


 悪魔になったリアムは怖かった。でも、理性を失っているように見えて俺達には手を出さなかった。結果的には俺達はまた助けられている。


 俺は思い出した。最後に自分達の方を見た時のリアムの表情を。酷く傷付き、涙を流していたあの顔を。


 俺達は助けられてばかりで、それなのにリアムには何も返さずに傷付けた。それこそ恩を仇で返す、だ。


 俺はもう一度思い出す。自分が何になりたいかを。


 仲間を傷付けるのが勇者のする事か。友達を悲しませるのが勇者のする事か。


 違うはずだ。それは自分がなろうと誓った勇者ではないはずだ。


 俺は決意した。


 自分が彼のために何が出来るか分からない。でも、もしまた会えたらちゃんと謝ろう。そして、許してもらえなくても、彼の味方であり続けよう。


 それが、俺の信じる勇者の姿なのだから。



 〜〜〜〜〜



「はぁ」


 私は自室のベッドから、窓の外を眺めながらため息を吐いた。思い出すのはリアムのことだ。


 リアムが半魔と聞いた時は驚いた。家族を殺された上に悪魔にされるなんて、なんて悲劇なんだろう。この子はそんなものを抱えて生きてきたのか、と。


 でもそれと同時に怯えてしまった。アベルを殺し、生徒を殺そうとした悪魔を思い出したから。いつ暴走するか分からない半魔が目の前にいるから。


 リアムはその怯えに気付いた。だからすぐに部屋を出て、それ以来教室に来なくなった。


 私はすぐに後悔した。自分はなんて事をしてしまったのか。


 きっとリアムは私に半魔だと明かすか迷っていたはずだ。たまに難しい顔をしていたのはその事について悩んでいたのだろう。


 そして私の為に正体を明かした。なのに私はリアムに怯えてしまった。


 最低だ。


 リアムは私の事を義姉と慕ってくれた。自分を認めてくれた。あの時は本当に嬉しかった。


 なのに私は彼に何が出来ただろうか。せいぜい話し相手になったぐらいだ。しかもそれは私の方が楽しみにしていた。


 半魔は忌み嫌われる存在。リアムはそれを知っていて尚、私に明かしてくれた。


 私はリアムがアベルの弟だから好きなのではない。リアムだから好きなのだ。なのに傷付けてしまった。


 もはや私に義姉の資格はない。でも、このままでいるのも嫌だ。


 だから謝るために会いに行こう。そう思った時に悪魔が学園に攻めてきた。


 報告を受けた時はびっくりした。大量の上級悪魔が現れたのだから。


 そして駆け付けた時には既に傷だらけのリアムがいた。


 深い傷は無いものの、少し震えていた。きっとあの日を思い出したのだろう。その時に理解した。彼は大人びてはいても、1人の少年なんだと。


 気付けばリアムの名前を叫んでいた。リアムの元に行こうと走り出していた。


 それでも悪魔に負けた。死んだと思った。


 そしてここで目が覚めた。付き添っていてくれたシャルロ先生は、リアムは倒れた私を見て悪魔化し、そしてここから逃げ出したと言う。


 結局私はリアムの足を引っ張った。リアムは最後まで私のために戦ってくれた。こんな最低な私のために。


 私はどうすればいいのだろう。そんな事は決まってる。


 私は決意した。


 この先何があろうと、私はリアムの味方であり続ける。リアムに拒絶されても、私はもう拒絶しない。


 だって私は義姉なのだから。



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