第40話 ヴィリレタル大陸へ
また短めです。
今日中に閑話を投稿すると思います。
「………」
リアムは何も言えなかった。疑ってはいない。真実を語っているのは目を見たら分かる。
ただ、知らない事を知りすぎた。それで少し混乱していた。
父が勇者で、母もその仲間で、世界を救って、惨劇が起こり、天使も来て、そして裏切りが起きた。
「それじゃあ……あの日天使が来なかったのはケルビムって奴のせいなのか?」
「責任を逃れたい訳じゃないが、俺はそう考えている。そして恐らく、あいつはアモンと繋がっているとも考えている」
「天使が……悪魔と?」
「ああ。それなら全てに説明がつく。アモンがあの村を襲う事を知っていたなら、そのタイミングで天界に細工を仕掛けておけばいい。そして悪魔と繋がっていたら因子も手に入る。何が狙いかは分からないがな」
「なるほど……確かにそうか……」
詳しくは分からない。ルシフェルでさえ分かっていないのだから。
だがリアムは、とりあえずケルビムと会う事があれば殺してやろう、と思った。
「リアム君。君はこれからどうするんだい?」
リアムが少し考え込んでいるとユウが聞いてきた。
「俺はもう少し父さんと母さんの話が聞きたいんだけど……」
「俺も君とはもっと話したい。だけどさっきも言ったけど、あまり時間がない」
「時間?」
「そうさ。君はついさっき一国の王を殺したんだ。既に捜索は始まっている」
「……そう言えばそうだっけ。ん?今更だけどここってどこなんだ?」
「本当に今更だな。ここはフュラケー王国の近郊だよ。だからそろそろ王国兵士が来ると思う」
「そうか……。俺はヴィリレタル大陸に行きたいと思ってる」
「ヴィリレタル大陸か。それはいいと思うよ。手段は?」
「飛べる」
「なるほど。じゃあ今すぐにでも行った方がいい」
「え?」
「早めに手を打った方がいいもんだよ」
そう言うとユウは寂しそうな顔をした。
「俺ももっと君と話したい。でもそれはまた次の機会にしよう」
そう言うとユウはルシフェルを見る。
「ルシフェル」
「おう、分かってる。リアム、俺もついて行くぜ。ヴィリレタル大陸なら良い場所も知ってるしな」
「それは……助かるけど、いいのか?」
「当たり前だろ。あの2人の息子を放っておけるかよ」
「そうか。ユウはどうするんだ?一緒に来ないのか?」
「ああ、俺にも妻と子がいるんでね。ここにいたいのさ。それに追っ手も何とかしないといけないしね」
「……分かった。色々とありがとう」
リアムはそう言うとミサキを見る。するとミサキは泣いていた。
「ミサキ?どうしたんだ?」
「い、いえ……。お二人の話を聞いて、みんな辛かったんだなって思いまして……」
「君は純粋なんだね。いいかい?ミサキちゃん。その心を失っちゃいけないよ。俺達は勇者として召喚され、そして戦い続けた結果この世界に染まった。それが悪いとは言わない。でも、君は君のままでいて欲しい。この世界に負けないでくれ」
「……!はい!」
ミサキはユウの言葉に何かを感じたのか、少し迷いが消えた顔で返事をした。
「おい、ユウ。なんかこの世界を悪く言ってないか?」
「ルシフェルもよく愚痴ってたろ?」
「まぁな。俺は嫌いだし」
ルシフェルはそう言うとユウを見た。
「ユウ。またすぐ来るから、死ぬなよ。頼むから、死なないでくれ」
「分かってるよ。ルシフェルの方こそ無理しないでくれよ?リアム君の事を頼む」
「ああ」
そう言って2人は握手を交わした。それを見ただけで2人の間にある絆の深さが分かる。
ユウは次にリアムに手を差し出した。リアムはその手を握る。
「君に会えて良かったよ、リアム君。またいつか会おう」
「ああ、その時は両親の事をもっと教えてくれ」
次にユウはミサキに手を出す。ミサキもそれをおずおずと掴んだ。
「俺は君とももっと話したいと思ってる。俺達の故郷の話をね」
「はい。私もいつか、また来ます」
そしてユウは最後に笑うとリアム達に背を向けた。リアム達もそれに合わせて背を向ける。
そしてルシフェルは羽を伸ばして空へ飛んだ。リアムも何も言わずにミサキを抱えてついて行く。
ここに来て嫌な思いをした。それは間違いない。だが、それ以上に知らなかった父と母の過去を知れた。
またユウに会いに必ずここに来よう。リアムはそう誓った。
〜〜〜〜〜
ヴィリレタル大陸に国家は存在しない。大陸中に村があり、獣人達はそこで暮らしている。
一言で獣人と言っても多くの種類が存在するのだが、それでも獣人達は仲間意識が強く、同族を大事にする。
村の間でも交流は深く、常に情報は共有される。また、有事の際には大陸中央にある聖域と呼ばれる場所に各村長が集まり、会議を開く。
獣人は魔法が苦手だ。それは保有魔力が少ないことと、その高い身体能力が原因である。
獣人は生まれつき身体能力が高い。人間の一般的な魔法使いの身体強化よりも高いとされている。
同族を大事にするため争いは少なく、狩りなどはその身体能力があれば充分だから魔力を使う必要がないのだ。
もちろん、例外も存在する。だが、全体的に見れば苦手な種族である事に変わりはない。
「風が気持ちいいな〜」
リアム達は今、海の上を飛んでいる。つい先程グラム大陸を出たところだ。
リアムはかなり全力で飛んでいるのだが、ルシフェルとの距離は変わらない。しかもルシフェルはまだ余裕がありそうだ。
「なぁ、ルシフェル」
「どうした?」
「行き先はもう決めてるのか?獣人は人間の事が嫌いなんだろ?」
「ああ、大丈夫だ。ちゃんと決めてある」
そこでルシフェルはリアムの方に振り向いて言った。
「行き先はアマクサ村だ」




