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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第3章 別れから出会い
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第37話 知る権利

 

「世界を救った英雄……?父さんが?」


「ああそうだよ。彼は本物の勇者だ。俺は、俺達は知っている。彼が見て、彼が成した事を」


 そしてユウはリアムを抱き締めた。


「タクトがブリル村に住んでた事も知っていた。だからもう、彼が死んでる事も知っている。だから君に会えて良かった。きっと、タクトが君を守ったんだろう?」


「あ、ああ。父さんと、母さんと、兄さんが俺を庇って死んだ」


「そうか。……君の名前は?」


「リアム。リアム・イガラシだ」


「リアム君、今まで生きててくれてありがとう。きっとタクトもアナもそう思ってる。ありがとう」


 気付けばユウは泣いていた。リアムは母の名前が出た事にも驚いている。


「母さんも知ってる……んですか?」


「もちろんさ。アナは俺たち勇者パーティーのメンバーだったからね」


「そう……だったのか……」


 リアムは少し混乱していた。知らないを一気に知りすぎた。でも、もっと聞きたい。


「リアム君。少し話をしよう」



 〜〜〜〜〜



「それで、とりあえず今代の勇者は君かい?」


 しばらくして落ち着くと、ユウがそう切り出した。


「は、はい。ミサキ・ハルノと言います」


「そっか。よろしくねミサキちゃん」


「はい、よろしくお願いします」


「あの、ユウさん。さっきはすいませんでした。その勢いで」


「いや気にしなくていいよ。と言うよりさっきの話し方でいい」


「わ、分かった。それで、父さんは……」


 だが、リアムはそこで言葉に詰まった。聞きたい事が多すぎて何から聞けばいいのか分からない。


「まぁ落ち着いて。順番に話すから。とりあえず、お〜いルシフェル!いるんだろ?」


「あいよ〜」


 ユウが扉に声を掛けると男が家に入ってきた。リアムとミサキを転移させた男だ。


「とりあえず彼を紹介するよ。彼も当然、タクトの知り合いだ」


「そーそー。タクトとは仲良くしてたぜ?」


 そう言って男はローブを脱いだ。男は誰に聞いても美男子と答えるような容姿をしていた。整った顔に白い肌、灰色の髪をしている。


 だがリアムはそこに反応しなかった。


 リアムはファルシオンを瞬時に抜くと男に斬りかかる。だが振り切るよりも先に男は目の前まで来ており、リアムの肘を押さえて剣を止めた。


「おいおい、いきなり過ぎんだろ。しかもタクトより早くね?」


 その男には羽が生えていた。6枚の天使のような羽が。そしてその羽は全てが黒く染まっている。


 何よりリアムは男がローブを脱いだ瞬間に感じた。悪魔の気配を。しかも今までに感じた事が無いほどの力を。


「お前は一体……!」


「リアム君待って!そいつは悪魔だけど害は無いから!」


「おい、虫みたいな言い方すんじゃねえ。俺の名前はルシフェル。元智天使にして、今は最上級悪魔の堕天使だ」


「堕天使?」


「ああ、知らないか?悪魔になった天使の事だよ。元天使だと知ったらちょっとは警戒心解けたか?」


「悪いな。俺は天使も悪魔も嫌いなんだ。だから今の説明で2倍殺したくなった」


「……すまない。それは俺のせいだ」


「……は?」


 ルシフェルが急に謝ったことにリアムは驚く。だが、ルシフェルの顔はさっきまでのふざけた表情とは違い、痛みに耐えているような表情だった。


「それも含めてちゃんと話す。だから今は剣を納めてくれ」


「………」


 リアムはルシフェルに言われた通りにファルシオンを納める。とりあえず、今すぐには害は無いと判断した。ミサキは目を白黒させている。


「ありがとう。じゃあユウ、頼む」


「いきなりかよ!はぁ、ほんと変わらないな、悪魔になっても。そうだな、とりあえずリアム君の話を聞いていいかい?そこの彼女の事も含めて」


 リアムはひとまず彼らの事を信用してもいいと思い、全て話すことにした。頷くと説明を始める。


 "ブリルの惨劇"で起きたこと。その時に悪魔因子を埋められたこと。それからは復讐のためだけに生きてきたこと。スイに鍛えられたこと。学園に入り、大切なものを見つけたこと。2人の勇者が召喚されたこと。2人とも同じクラスになったこと。悪魔の襲撃が何度かあったこと。自分が悪魔化し、学園から逃げてきたこと。そしてたった今、パウルスを殺してきたこと。


「……そうか。本当に壮絶な人生だったね。また言わせてもらうけど、よく生きててくれた」


「それは俺も思うぜ。タクトもアナもその兄も、きっと喜んでるだろうよ」


 2人は辛そうな顔をしながら話を聞いていた。ルシフェルまでもが、だ。


「ルシフェルも、父さんと母さんと知り合いだったのか?」


「ああ、もちろんだ。あいつらは凄え良い奴だった。当時は天使だった俺が言うんだ、間違いねぇ。そんな2人の息子だからお前も良い奴なんだろうな」


「俺が良い奴……?どこが?」


「いいか?良い奴か悪い奴かなんてな、簡単に分かるもんだ。どうやって見分けると思う?」


「……さぁ?」


「それはな、そいつと一緒にいる奴を見れば良いんだよ。ミサキはお前の隣を居心地が良いと思ってる。違うか?」


「え!?そ、それは……そうですけど……」


 ミサキはもじもじしながら答える。


「だろ?ミサキはお前と一緒にいて安心出来るんだ。それはお前が良い奴だからだよ」


「あんた、頭悪そうだな……。でも、その考え方は嫌いじゃない」


「ハハッ、そうか。そいつは良かった」


 自分が良い奴かは分からない。ただ、一緒にいる人が幸せかどうかで判断するのは嫌いじゃない。リアムはそう思った。


「なぁ、なんであんたは堕天なんかしたんだ?そんなようには見えないんだが」


「ああ、天使ってのは悪魔因子を埋められたら一発で堕天するんだ。どんな崇高な志を持っていてもな。俺もそのくちだ」


「なんでそんな事を……?」


「そうだな、それを話すなら、まずタクトの事を聞いてから教えた方がいい。だよな、ユウ?」


「ああ。それに、リアム君には知る権利がある」


「知る権利?」


「ああ、知る権利だ。30年前に起きた魔天大戦。俺達が巻き込まれたあの戦争で起きた事を」


「魔天大戦……?」


「そう、俺達が召喚された原因となった戦争。そして俺達は、タクトは、その中で歴史に残ることのない戦いに巻き込まれ、そして世界を救ったんだ」



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