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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第2章 蝕む闇
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番外編 お買い物

 

 ※これはリアムが13歳の頃、アリサと海に行く前に、一緒に水着を買いに行った時の話です。





 〜〜〜〜〜




「おはよ!リアム!」


 リアムが学園の門にもたれて待っているとアリサが駆け寄って来た。


 今日の彼女は制服ではなく、ショートパンツにシャツというラフな格好だ。


「おはよう、アリサさん」


 リアムがそう答えると、アリサは少しもじもじする。


「……?どうしたの?アリサさん」


「えっとね……き、今日の格好、どうかな?」


「ああ、良いと思うよ」


「ほんと?」


「うん。動きやすそう」


 それを聞いてアリサがジト目に変わる。


「……そんな事だと思った。それにしてもリアムは真っ黒だね。暑くないの?」


 リアムは例によって黒いズボンに黒いシャツを着ている。


「黒が落ち着くんだよ。それに、冷却魔法使ってるからむしろ涼しいぐらい」


「え!なにそれずるい!」


「アリサさんにも使うから」


「あ、あぁ〜涼しい〜〜」


 アリサが実に気持ち良さそうな声を上げる。リアムはそんなアリサを見て笑みを浮かべると、


「さて、じゃあ行くか」


「うん!」


 こうして2人は街へ向かって歩き出した。



 〜〜〜〜〜



「うっわ、人多いなぁ」


 リアムは呟く。街の商店通りには人が溢れ返っている。人混みに慣れていないリアムにとって、それは試練のようなものだった。


「ねぇリアム。なんでそんな戦う前みたいな顔してるの?お願いだから暴れないでよ?」


「……アリサさんは俺を猛獣だとでも思ってんの?俺はただ人混みが苦手なだけだよ」


「あっ、やっぱり一緒に来たくなかった?」


「いやいや、そんな事はないって。まぁ人混みに慣れるのも必要だしな」


 そんな事を言いつつ人混みを睨みつけるリアムを見て、アリサはクスクスと笑う。


「どうしたの?」


「ううん。なんでもない。じゃ、行こっか」


 リアムとアリサは並んで通りを歩く。


 アリサは店先に売られている物を見て興奮し、リアムはそんな様子を微笑みながら見守っている。


「なんでリアムはそんなに静かなの!?なんか私が子供みたいじゃん!」


「まぁ子供だしな」


「むぅ!年齢はリアムの方が下なのに!」


「2歳なんて大した差じゃないだろ?」


「うぅ〜。あっ!あそこのお店に入ろう!」


 アリサは会話の途中でブティックを見つけると、リアムの手を引いて歩いて行く。


「急だな……」


「ほら!だって可愛い水着が展示されてるよ?」


「分かったから落ち着いて」


 そう言うと、アリサは自分がリアムの手を握っていた事に気付いた。そして顔を赤くしてその手を放す。


「アリサさん?」


「な、なななんでもないよ!?そ、それよりほら!早く行こ!」


 アリサはさっさと店に入ってしまう。リアムは周りの妙に生温かい視線に首を傾げながら後を追いかけた。



 〜〜〜〜〜



「いらっしゃいませ!今日は何をお探しに?」


 店に入ると早速店員が絡んでくる。リアムはこれが嫌いだった。


「あ、あの、この夏に着る水着を探しにきました」


 アリサはまだほんのりと顔を赤くしながら答えた。


「なるほどなるほど。それで彼氏さんと一緒に来たんですね?」


 店員はチラリとリアムを見てそう言う。


「かっ!?か、かか、彼氏!?」


 アリサは先程よりも顔を赤くする。頭からは湯気が立ち昇っている。このままだと綺麗な銀髪まで真っ赤になってしまいそうだ。


「はい。違いましたか?」


「はぅ〜……」


「違いますよ。アリサさんは俺の先輩です」


 わたわたして答えられないアリサに代わりリアムが答える。店員は一瞬アリサを見ると納得したような表情を浮かべ、


「……苦労してますね」


 と、アリサの肩を叩いた。


 だがアリサはまだ赤くなっていて聞いていない。店員はそんなアリサを微笑ましげに見ている。そしてリアムは心外な評価に、やはり店員は嫌いだと再確認していた。



 〜〜〜〜〜



「こんなのはどう?」


 そう言ってアリサは試着した水着を見せる。ワンピースタイプのものだ。


「似合ってると思うよ?」


「ふ〜ん……」


 しかしアリサは何か納得出来なかったのか違うものを探し出す。


 ちなみにリアムは一目見た無地の黒い海パンを購入済みだ。


「こんなのは?」


 次に見せたのは赤いホルターネックと呼ばれるビキニだ。


 アリサのメリハリのある体がハッキリと分かり、あまり興味が無いはずのリアムは少し目を逸らす。


「い、いいと思う」


「ふんふん。これは保留かな」


 アリサは何で判断しているのか分からないが、この水着は気に入ったようだ。


 その時リアムは、目を逸らした先で驚くべき物を見つけていた。


「な、なんだこれ?ほとんど紐じゃねえか」


 その水着は細長い紐のような見た目で、どこでどこを隠すのかが分からない。というよりも何かを隠せるとは思えない。


 そんなびっくりな水着を見ていると、そこにアリサが近寄ってくる。


「……リアムはこれが気になってるの?」


 アリサは恥ずかしそうにしながらもリアムを見て聞く。


「いや、気になってると言うか……これ、水着なのか?」


「一応水着だと思うよ?••••その、これを着て欲しいとか、思ってる?」


「いやいやいや、ダメだよこれは。こんなのほとんど裸じゃん」


「はは、だよね……良かった」


「なにが?」


「ううん、なんでもない。それよりリアム。私に似合いそうな水着を選んでよ」


「俺が?」


「うん!」


「気に入ったのがあったんじゃないの?」


「そうだけど、リアムに選んで欲しい!」


「……?」


 リアムは少し不思議に思いながらも水着を探す。だがあまりそういった経験の無いリアムにはなにがいいのかが分からない。


「……お?」


 そんな時、1つの水着が目に入った。白い三角ビキニだ。リアムはそれを手に取った。


「アリサさん。こんなのどう?」


「うん、可愛いと思うよ。ちょっと着てみるね?」


 リアムが聞いてみるとアリサはあっさりと試着した。そして試着室から出てきたのはまさしく天女だった。


 美しい色白の肌に、魅惑のボディを惜しげなく晒すアリサ。そんな彼女を、リアムはしばらくの間見惚れてしまった。


「えーっと、リアム?どうかした?」


「はっ!え?ああ、大丈夫!凄く可愛いと思う!」


「えへへ、そう?……じゃあこれにする!」


 アリサはそれに決めてしまった。さっきまで迷っていたのが嘘のようだ。


「さっきまであんなに迷ってたのにそれでいいの?」


「うん!……だってリアムが選んでくれたんだもん」


 またも顔を赤くしたアリサはそう言うと、代金を払いに行ってしまった。リアムは意味が分からず、そこで立ち尽くしていたのだった。



 〜〜〜〜〜



 買い物が終わった頃には既に日は沈みかけていた。リアムは女の子の買い物は長いという都市伝説を実感していた。


「……疲れた」


「こんなにつき合わせちゃってごめんね?」


「大丈夫大丈夫。それより、荷物は俺が持つよ」


「え、いいよ別に。自分で持てるから」


「まぁ女の子に持たせるなんてダサいから」


 リアムはそう言うとアリサが手から下げていた袋を受け取った。


「……ふふ。ありがと、リアム」


「ああ」


 そんなやり取りをしながら2人は学園に向かって歩いていく。


 地面に伸びるその2つの影は、今にも引っ付きそうなほど近かった。





明日は本編の第3章を投稿します。

ここまでハイペースで投稿してきましたけど流石に限界がきたので、次からは1日1本投稿する感じで頑張ります。

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