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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第2章 蝕む闇
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第33話 決別と逃走

 

 砂煙はリアムの目の前で起きた。攻撃は何かに遮られリアムまで届かなかったのだ。


 その砂煙の中から2人の人影がリアムに背を向けて立っていた。"剣神"シャルロ・バラディールと"不殺の勇者"ミサキ・ハルノだ。


 リアムは2人を呆然と見ていた。まだ何が起きたのか理解できていない。


「ミサキ!なんでそこにいるんだ!」


 コウキが叫ぶ。リアムにはそれが意味する事も理解できない。してはいけないと思った。


「リアムさんは私達を守ってくれたんですよ!?なんで攻撃するんですか!」


 それにミサキも叫び返す。リアムのクラスメイトは全員コウキ側だ。


「……シャルロ、お前は何をしているのか分かっているのか?」


「ええ、もちろんですよ学園長。私は私の好敵手を守っただけですが?」


「それが何か分かっているのか!悪魔を庇ったんだぞ!?」


「それでもリアム君ですよ。彼は私達に一度でも攻撃しましたか?」


「しようとしていた!」


「それはあなたが先に仕掛けようとしたからでしょう。それに彼はミサキさんの声を聞いて止まりました」


「お前、何を考えてる?」


「それは私のセリフですよ、学園長。彼はあの方が預けていった弟子でしょう?」


「今は関係ないだろ!それにあの方はもう終わりだ!この世界の掟を破った罪人!もはやただ壊れゆく人形にすぎない!そんな彼女になにが」


だからこそ(・・・・・)、でしょう?だからこそ今の彼女は何でもできる。それこそ、今この瞬間に私達を消し炭にすることだって」


「お前は……」


「それに、私が彼を庇うのは別の理由ですよ。彼が何者であろうと、剣を交えたからこそ分かる。彼はここで死ぬべきではない」


「………」


「それとも、今ここで私とやり合いますか?剣の最高峰と言われた私と、魔法の最高峰と言われたあなたで。まぁそんな私達でも彼1人には勝てませんが」


 そう言ったシャルロは凄まじい剣気を放つ。


「私はあなたが嫌いだ。ラルフ・アルマン。その一つの角度からしか物事を見れないあなたが」


 そこでシャルロはリアムに言った。


「リアム君、逃げるんだ」



 〜〜〜〜〜




「リアム君、逃げるんだ」


 シャルロ先生は俺にそう言った。


 逃げる。何から?


「ここにいたら君は彼らに狙われる。君に何があって、何と戦ってるかは知らない。でも、ここにいたら何も成せないことは分かる」


「お……れ、は」


 そこで辺りを見渡す。もう悪魔はいない。全て俺が殺したから。なのにみんなは怯えてる。俺が悪魔だから。


「本意ではないかもしれない!でもここにいたら殺されるか殺すしかない!だが君はそんな事は望まないはずだ!」


 殺される。確かにさっきの攻撃は俺を殺すつもりだった。


 殺す。確かに俺はさっき殺そうとした。


「だから逃げるんだ!君のために!」


 逃げる。俺のために。


「リアムさん!私も連れて行って下さい!」


 ミサキが言った。連れて行く?なんで?


「私はリアムさんのそばにいたいです!リアムさんに大切な人がいるのは知ってますけど、それでも少しでも助けになりたいんです!」


「……俺は、悪魔なのに、か?」


「違います。リアムさんはリアムさんです」


 ミサキは迷いなくそう言った。


「ね……クレア、先生、は?」


「彼女はまだ生きている。僕が必ず助けてみせよう。約束だ」


 シャルロ先生が答えた。ひとまず安心、でいいのだろうか。


 俺はみんなの方を見る。今まで一緒に過ごしてきた仲間を。


 だが、そこにあったのは俺への怯え、恐れ、そして拒絶だった。


 視界が滲む。頰が濡れる。我慢出来なかった。守りたいと思っていた仲間の、その目が。


 何がいけないのか。何が悪いのか。誰が悪いのか。何も分からない。


 俺はみんなに背を向けた。そしてミサキを抱える。


「くそっ……くそっ!」


「さぁ!行きたまえ、リアム君!」


 シャルロ先生がそう叫ぶのと同時に、俺は風を起こして飛んだ。


 どこへ行けばいいのか分からない。それでも俺は全速力で飛んだ。逃げた。


 後ろで爆発音が聞こえた。でも俺は振り返らない。


 涙が止まらない。それでも俺は、ただただ逃げ続けた。


 しばらくして俺は見知らぬ森に降りた。体が震えている。


「リ、リアムさん?」


 ミサキはどこか慌てたように言う。俺は気付けばミサキに抱き着いていた。


「わ、悪い……。少しだけ、このままでいさせてくれ」


 そう言うとミサキは何も言わなくなった。俺は人の温もりを感じていたかった。


 怖かった。クレアを守れないと思った事が。また何かを失うかもしれないと思った事が。


 怖かった。自分が。あの時、完全に自分を失っていた。いや、意識はあった。自分が何をしているかも分かっていた。その上であれだけ暴れたのだ。仲間さえも殺そうとした。


 怖かった。仲間の目が。俺に拒絶の目を向ける仲間が。俺に殺意を向ける仲間だと思っていた者達が。


 もうなんで泣いているのかも分からない。頭の中がぐちゃぐちゃだ。


 俺はミサキにしがみつき、しばらくの間泣き続けていた。




 〜〜〜〜〜




「これは本当に面白い!」


 アモンはムシュルフに映像を見せられてそう叫んだ。


「正直、あの方の因子を与えたのは間違いだったかと思ったが、そんな事はなかったな」


「ええ、私も想像以上の強さでびっくりしました」


「あれが完全な悪魔になったらと考えるとゾクゾクする。我の事も超えるのではないか?」


「お戯れを」


「いや、あの方の因子にあれだけ適応したのだ。あながちあり得なくもない」


「その時はどうするので?」


「どうもしない。どんな結果になろうと、それが面白ければなんでもいいからな」


 そう言うとアモンは嗤った。この先に起こり得る事を想像して。





これで第2章はおわりです。

ありがとうございました。

あと1つ番外編を挟んで第3章に入ります。


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