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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第2章 蝕む闇
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第31話 行き先

 

「また悪魔が!?」


「ええ、昨日の夜、例の場所へ向かったところ襲われまして。しかも上級悪魔でした」


「上級が……。リアムは大丈夫なの?」


「はい。ただ、アモンについては何も聞けませんでした」


 ムシュルフと遭遇した次の日、リアムはクレアの部屋で起こった出来事を話していた。相手が思ったより厄介だったので一応伝えておくことにしたのだ。


「そう……。とりあえずあなたが無事でよかったわ」


「ありがとうございます。でも、最近急に悪魔が現れ始めましたね」


「そうね。天使の警告は正しかったって事ね」


「悪魔共の狙いはなんでしょう?やはり世界の覇権、とかでしょうか?」


「分からないわ。もしそうだとすると、その内また大戦が起こるわよ」


 大戦。今までにも何度か魔天大戦が起きたらしい。それは文字通り魔界と天界が地上界で人間・獣人を巻き込んで起こした大戦。


 基本、悪魔は天界に、天使は魔界には入れない。だから戦争をするとなったら地上界でするしかないのだ。迷惑な話である。


 そして30年ほど前に起きた魔天大戦でも勇者は召喚されたらしい。その大戦は天使側の勝利で終わったらしいのだが、戦争の爪痕は深く、天使・悪魔・人間・獣人すべてに甚大な被害をもたらした。


「大戦……」


 リアムはアモンを殺したい。そのためにはまず見つけ出さなければならない。そのことを考えると大戦は起こってくれたほうがいいのかもしれない。


 だが、今のリアムにはアリサがいる。大戦が起きたら軍に所属する彼女も参加しなければならない。それは嫌だった。もちろん、クレアや他の仲間も危険には晒したくない。


 リアムは少しでも大戦が起こった方がいいと考えた事に、自分が壊れていると自覚し、苦笑した。


「大丈夫、なんて軽々しく考えない方がいいわね。一応戦争が起きる覚悟はしておかないと」


「ですね。義姉さんも気を付けて下さい」


「ええ、ありがとう」


 そこで少し会話が途切れた。


 昨日、ムシュルフは明らかにリアムを狙って現れた。意図は分からないが、狙いがリアムであった事は間違いないだろう。


 面白い余興、とやらも気になる。もしかしたらまた何か仕掛けられるのか。そうだとしたら、自分のせいで誰かを巻き込んでしまうかもしれない。


 リアムはそこまで考えて決心した。


「義姉さん。これからは俺と少し距離をとって下さい」


「冗談……ではないようね。理由を聞いてもいいかしら?」


 リアムの真剣な顔を見てクレアも真面目に尋ねる。リアムは一つ深呼吸すると、


「俺が……半魔だからです」


「……え?半魔?あなた、私を馬鹿にしてるの?」


 だが、クレアは信じられないようだ。


「信じられないのは分かりますけど、馬鹿になんてしてませんよ。事実ですから」


 そう言って魔剣を顕現する。


「これしか証明する方法がないんですけど、これで信じてもらえます?」


「なん……で?」


「あの日に、悪魔因子を埋められたんですよ。それからずっと半魔として生きてきました」


「………」


 クレアは目を見開いている。そこには憐れみと、そして少しの怯えが含まれているように見えた。


「俺は、そろそろここを出ようと思ってます。復讐のためもあるけど、自分の悪魔性を制御出来なくなってきました。先日の事件であいつらには悪魔に対するトラウマもあるでしょうし、俺がこれ以上ここにいるのは良くないと思ってますので」


 リアムはそう言って寂しそうな顔をする。


「では、失礼します」


 そしてクレアの返答を待たず、リアムは部屋をあとにした。



 〜〜〜〜〜



 部屋を出たリアムは顔を手で覆い隠す。


 やはり、怯えられた。分かっていた。クレアが愛したアベルは悪魔に殺されて、生徒達も死にかけたのだ。


 その相手が憎いのは当たり前だ。そして、同じぐらい怖いのは当たり前だ。それでなくとも半魔は恐れられているのに。


 リアムは分かっていた。自分だって同じく悪魔が嫌いなのだから。


 リアムは分かっていた。明かせばこうなるだろう事は。それでも震えずにはいられない。仲良くしていたクレアにあんな目で見られたことに。


 恨んだりはしない。クレアは何も悪くないから。でもならば、自分が悪いのか。もし悪いのなら何が悪かったのか。


 リアムは分からなくなった。



 〜〜〜〜〜



 その日からリアムは授業に出なくなった。学園を出た訳ではない。ただ今はクレアと顔を合わせたくなかった。


 リアムは部屋でベットに腰掛け、天井を眺めていた。その目には何も映っていない。


 リアムはこれからどうするかを考える。学園を去るのはいいが、その後どうするのか。


 リアムはまだ魔界への行き方を知らない。悪魔だけがゲートを開けるらしいのだが、リアムはその方法を知らない。


 獣人が住むヴィリレタル大陸へ行こうかと考えた。悪魔は人間より獣人をよく同族にするという。ならば悪魔の出現率も高いのではないのか。


 だか、人間と獣人は仲が悪い。昔の大戦が原因らしいのだが、今や両種族間に交流はない。二つの大陸が海を挟んでいるからそれでも問題は無いため、お互いに関わろうとしない。


 そんな場所に自分が行っても騒ぎを起こすだけだろう。なら別の場所がいいだろうか。


 最近、フュラケー王国にも悪魔が現れたという。この帝国にも勇者を派遣してほしいと依頼があったとか。だが、フュラケー王国は独裁国家で良い噂は聞かない。


「………」


 やはりヴィリレタル大陸か。獣人の目を逃れて各地を回るしかない。出発は、明日だ。


 リアムはそこで思考を止めた。準備するものはない。荷物は常に魔石の中だ。


 心の中でミサキとコウキに稽古をつけられないことを謝り、リアムは最後に部屋を掃除した。


「ここともお別れか」


 と呟いて。



 だが、運命はリアムを逃さなかった。




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