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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第2章 蝕む闇
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第30話 夜中の邂逅

 

「リアム!昨日はありがとうな!ほんとに死ぬかと思ったからよ!」


「ありがとうリアム君!命の恩人だよ!」


「リアム君がすぐに来てくれてなかったらと思うと今でも震えるよ。ありがとう」


「リアム〜!ありがとう!凄かった!」


「リアムありがとう!やっぱイケメンだな!」


「……ありがと」


「リアム君のおかげで助かりました。ありがとうございます。お礼におっぱい揉みますか?」


「リアムさん、昨日は改めてありがとうございました」


 次の日、リアムが教室へ入ると一気に感謝された。命を救われたのだから当たり前だろう。1人おかしな事を言っているが無視しておいた。


「あ〜気にしないでいいよ。それより、コウキはいないのか?」


「はい……。いつもならこの時間には来ているのですが、今日はまだ来てません」


「そうか……」


 立ち直れないか、リアムがそう思っているとコウキが教室に入ってきた。


「みんな!聞いてくれ!」


 コウキは教壇に立つと注目を集める。


「昨日は、本当にすみませんでした。リアムに言われて気付いた。俺は勇者と言われて、そんな自分に酔ってたんだ。でも、これは現実で、現実は甘くない。そんな事にも気付かずに仲間を死なせかけてしまった。本当にすまなかった。確かに俺は勇者失格だ」


 コウキは少し泣きそうな顔をしていた。平和な世界で生きてきた彼にとって、仲間を死なせかけた事は重くのしかかってるのだろう。


「でも、それでも俺は勇者として召喚された。俺もそれに応えたいと思っている。だからもう一度やり直す。ちゃんと鍛えて強くなって、今度こそ強くなってみせる。だから、みんな見ててくれ。本物の勇者になってみせるから!」


 そう言ってコウキはみんなの顔を見渡した。その目には強い決意が込められていた。


「リアム。ありがとう、俺を叱ってくれて。おかげで大事なことに気付けた。これは虫のいい話だって分かってるけど、これからは俺の事も鍛えてくれないか?」


 コウキはリアムに頭を下げた。


「ああ、もちろんだ。俺の鍛錬は厳しいけど、ちゃんとついてこいよ?」


 リアムは満足そうに答える。彼が立ち直り、一つの答えを出したことが嬉しかった。


「ああ!ありがとう!」


 クラスメイトは自分にも非があったと答え、コウキを受け入れた。


 こうして、この事件の幕は降りたのだった。ただし、リアム以外は。



 〜〜〜〜〜



 その夜、リアムは悪魔が現れた場所にいた。微かに残っている魔力を調べにきたのだ。


「っ!これは……」


 リアムが感知魔法を広げて調べていると、一つの大きな魔力が残っていた。それは明らかに中級以上の魔力だ。


「これが恐らく……」


 その魔力をスキャンし、情報を読み取る。一度そうしておけば、次に同じ魔力の持ち主と出会った時にすぐに分かる。


 この魔力の持ち主は必ずアモンに繋がっている。リアムはそう推測すると、立ち上がった。


「これはこれは。本当に優秀ですねぇ」


「っ!?」


 リアムはその声が聞こえた瞬間、前にしゃがみ込んだ。頭上を刃物が通り過ぎる。


 リアムはそのまま振り返らずに、気配を頼りに蹴りを放つ。足裏に少し衝撃を感じたがどうやらガードされたようだ。


 リアムは態勢を直すと振り返った。そこには1人の男が立っていた。


 ひょろりとした長身に細長い手足。その手には鎌のような物が握られている。そして濃い緑の髪をボサボサに伸ばしていた。


「どうも、こんばんは。いい天気ですね?」


「……お前、アモンの手先か?」


 場違いな事を言い出す男を無視してリアムは尋ねる。この男の魔力は、たった今調べた魔力と同じだ。全く気配を感じさせずに背後を取ったのも影の能力だろう。


「クヒヒ。さぁ?どうだと思います?」


「お前っ!!」


 途端、リアムの殺気が溢れ出した。


「あぁ、そんなに怒らないで下さいよ。私達は同じ悪魔・・でしょう?いえ、半魔・・でしたっけ?」


「っ!」


 やはりこいつは繋がっている。リアムは推測を確信に変えた。


「あいつは……アモンは、どこにいる?」


「さぁ?知りません。誰です?アモンって」


「お前……ふざけるなよ?」


 リアムの放つ殺気が更に膨れ上がる。それは大気すら揺るがしかねないほどだった。


 それを感じた男はさすがに少し顔を引攣らせる。


「まぁまぁ、落ち着いて下さい。とりあえず自己紹介しませんか?私はムシュルフ。アモン様に仕える上級悪魔です」


「やっぱり……!!」


 リアムは背中のファルシオンを引き抜く。


「アモンの居場所を教えろ」


「ここで私が教えると思います?」


「いや、思わない。だから無理矢理吐かせる!」


 リアムはそう言うと一歩でムシュルフの懐まで潜り込む。そしてファルシオンで横になぎ払おうとするが、


「っ!?」


 その刃は地面から伸びた影によって止められていた。その影は夜だというのにはっきりと分かるぐらい更に黒く、ムシュルフの足元を蠢いている。


 その影がリアムに襲いかかった。リアムは後ろに下がって全て斬り払うと、すぐにまた肉薄する。


 ムシュルフはその刃を鎌で受け止めると、その勢いに負けて少し後ずさった。そこにリアムは追撃を仕掛けるが、全て防がれる。


「はは、やっぱりお強いですねぇ。でも驚いてるんじゃないんですか?上級と中級の差に」


 その通りだった。リアムは別に本気で斬りかかった訳ではない。拘束するつもりだから殺すわけにはいかないからだ。


 それでも中級なら既に圧倒している。だがムシュルフは平然と立っていた。


「その程度では、あの方の元に辿り着くことも出来ませんよ?」


「……黙れ」


「復讐したいのでしょう?」


「黙れ!」


 リアムは胸がざわつくのが分かった。悪魔としての自分が、少し気を抜けば意識が持っていかれそうなほどに激しく暴れている。


「目の前で家族を殺され」


拘束バインド


 リアムは最後まで聞かずに唱える。すぐにムシュルフは光の縄に拘束された。


「これは……解けませんねぇ」


 ムシュルフは呑気に呟いている。リアムはファルシオンを構えた。


「質問に答えろ。あいつは今、どこにいる?」


 リアムはムシュルフの首筋に刃を当てて聞いた。だがそれをムシュルフはただ嗤った。


「また、面白い余興を楽しみにしてますよ。では、私はこれで」


「逃がすわけないだろう?」


「いえ、すいませんが逃してもらいますよ」


 そう言うと、突然影が溢れ出した。リアムが一瞬体を硬直させると、その間にそれはムシュルフを包み込み、地面にその体を沈めていく。


「ちっ!光柱シャインピラー!!」


 リアムが叫んだ途端、影に向けて天から光が落ちた。その光は夜を真っ白に染め上げた。


 光が収まると、リアムの目の前には大きな穴が空いていた。底は見えないほど深い。だが、


「逃した、か。……くそっ!」


 手応えが無かった。

 すぐに感知魔法を展開するが何も掛からない。リアムは遂に見つけた手掛かりを逃してしまった。


「……面白い余興?」


 リアムはムシュルフの言葉を思い出し疑問を感じる。しかし解決のしようもなく、もどかしさの中学園に向けて歩いていった。





第2章はあと3話ぐらいです。


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