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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第2章 蝕む闇
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第27話 救援要請

 

 夏休み明けの放課後、闘技場には鈍い音が響いていた。リアムとミサキが模擬戦を行なっている。


「ほら!そこ!」


「あっ!」


「まだ動きが甘い。もっと相手の動きを読まないと」


「はぁはぁ、分かりました」


 ミサキは自分の目指す『勇者』となるために日々努力していた。リアムに指導をしてもらい、終わった後も自主的に鍛錬をしている。そしてその成果は着実に出てきていた。


「まぁ、最初と比べたら随分良くなったな。勇者としての力もあるかもしれないけど、ミサキの飲み込みが早いんだろうな」


「そうですか?ありがとうございます」


 ミサキはそこで少しジト目になる。


「でも、相手がリアムさんだと強くなってるかが分かりませんけどね」


「はは、それは悪かったな。もう少しで実地訓練だろ?その時に実感できるさ」


 数日後には実地訓練が控えている。リアムは参加しないが、2人の勇者は参加する。


「そう言えば、コウキは修行とかしないのか?技術で考えたらミサキよりもコウキの方が問題だと思うんだけどな」


「あ〜コウキ君が稽古をしてるとこは見たこと無いですね。今は学園の方で女の子達と遊んでると思います……」


 コウキは勇者とだけあってモテている。リアムはそれ以上にモテているのだが、数年前からアリサとの噂が広がっていて誰も言い寄る事は無かった。


 ちなみにミサキも男子から人気があるのだが、本人が鍛錬ばかりで中々近づけない。


「そうか……。まぁ好きにしたらいいけど、あいつは戦いを甘く見てるからな……」


 コウキは覚悟が無い。死ぬ覚悟が。何かを殺すのなら自分も殺し返される覚悟が必要だ。リアムはそう考えている。だから、それはミサキにもよく言っていた。


「ミサキ、実地訓練の時はコウキに注意を払っておいてくれ。あいつは自分が強いと思い込んでるから何をしでかすか分からない。もし、何かあったらみんなを守ってやってくれないか?」


「わ、分かりました。出来る限りの事はします」


「ああ、頼む。一応俺からも言っておくけど、多分意味が無いだろうからな……」


 恐らくコウキのようなタイプは一度痛い目を見ないと分からない。もしもこのまま変わらないのなら、自分がその役目を背負うべきか、と考えている。


 リアムはなんだかんだで仲間を大切にする事に決めている。もう何も失いたくないから。だから、コウキの事もなんとかしたかった。


「確か、実地訓練では救援要請用の魔法も決められてるよな?」


「はい。打ち上げ式の魔法で、確か青と赤の色があって、赤の方は緊急性が高い時に使うと聞きました」


「そうか。なら、不測の事態が起きて自分達ではどうしようもなくなったら、すぐにそれを上げろ。俺も向かうから」


「え?でもその場合先生方が来て下さるのでは?」


「そうだけど、俺の方が早く移動出来るからな」


「そうなんですか?本当に凄いんですね。ではその時はお願いします。そんな事は無い方がいいんですけど」


「だな。でも……」


 そこでリアムは少し言葉を止める。そして闘技場の観客席の方を向いた。


「ま、あいつらもいるんだ。何とかなるだろ」


 リアムはそう言って指を差す。その先にはクラスメイトがいた。



 〜〜〜〜〜



「とか言いつつも、心配でたまらないと?」


「ちょっと前から思ってたんですけど、義姉さんってエスパーですか?」


「だからあなたはすぐ顔に出るのよ」


 実地訓練の日、不参加のリアムは同じく学園に残っているクレアの部屋にいた。


 実地訓練は帝国に隣接している"死の森"で行う。学年全体で森へ入り、クラスごとに決められた場所へ向かう。


「まぁ、あなたは一度全てを失っているからその心配も分かるけど、少しは信じてなさいよ」


「いや、別に心配なんてしてませんよ?」


 そう事を言うリアムは貧乏ゆすりが激しい。


「あなた隠す気ある?」


「もちろんですよ。……隠すって何のことですか?」


「あなた可愛いわね」


 クレアは少し呆れたように言う。だが、嘘をつけないのもリアムの美点だとも思っていた。


「義姉さんは心配じゃないんですか?」


「そりゃ心配よ。私の生徒だもの。でも、だからこそ信じないとね」


「……そうですね。俺も信じます」


 やっとリアムの貧乏ゆすりが止まった。


「そうしなさい。それに、今回は勇者が一緒なんだから」


「その勇者が不安要素なんですけどね……」


「そうなの?」


 クレアは気付いてないのだろうか。リアムは少し不思議に思った。


「ええ。ミサキは生物を殺せない。コウキは戦いを舐めている。特にコウキはチームの足並みを乱す可能性も大きいと思います」


「大丈夫なんじゃない?一応勇者なんだし」


「そうだといいんですけどね……」


 勇者というだけで理由になっている。恐らく、その認識が染みついているのだろう。勇者本人も含めて。


 確かに勇者の力は大きい。最初にミサキと手合わせした時も思った。動きは全然なってなくても、その力と速さである程度は戦える。


 ただそれはある程度だけだ。そしてそれが油断に繋がる。リアムはそう考えていた。


 そうやって雑談をしていると、突然部屋の扉が激しくノックされた。


「クレア先生!いらっしゃいますか!?」


 若い男の声だ。


「リアムはここで待ってて」


 生徒が教師の部屋にいる事がバレるとまずい。それも異性ともなれば尚更だ。


 呼ばれたクレアはそう言うと部屋の外へ出る。


 リアムは聴覚を強化させて、2人の会話を盗み聞く。


「実は先程、実地訓練をしているチームから救援要請の魔法が上がりまして。それがクレア先生のクラスの指定場所付近からなんですよ」


「……!それで?」


「救援要請の魔法にはレベルが存在します。そして今回上がったのは一番緊急性の高い赤色。つまり、勇者が2人いてもかなり危険だという事です」


「分かりました。私は今すぐ現場に向かいます」


「お願いします。既に救援部隊は編成しているのでそこに加わってください」


「承知しました」


 クレアはそう答えると会話を切り上げる。そして慌てて部屋に戻りリアムに事情を説明しようとした。


「リアムっ!」


 だが、部屋には既にリアムの姿は無く、開かれた窓から吹く風がカーテンを揺らしているだけだった。





フラグ回収。


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