表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第1章 大切なもの
16/111

第15話 進級試験

 

 月日は流れ、リアムは14歳になっていた。今は3年生で季節は冬を迎えている。


「それでどうするの?」


 目の前をアリサが宙で踊りながら聞いた。16歳を迎えたアリサはその綺麗な銀髪を少し伸ばし、その美しさには磨きがかかっている。


 8年生を目前に控えた彼女は既に空歩をマスターし、今もくるくる踊っている。アリサが空歩を覚えた時点で2人が会う理由も無くなったのだが、それでも変わらず図書館でよく会っていた。


「ん?なにが?」


「なにがって、進級試験だよ。相手はもう決めたの?」


 マグナ魔法学園では、4年生から選択授業になる。そこで3年から4年に上がる時が一つの区切りとされており、その間にだけ進級試験が存在した。


 内容は簡単だ。上級生か教師に果たし状を送り、闘技場で戦って勝つ、もしくは善戦すればいい。


「リアムは免除できるって聞いたけど、免除してもらうの?」


 そしてリアムは免除権を貰っていた。とりあえず生徒では太刀打ちできる者はおらず、教師もほとんどが敵わないからだ。


「ん〜アリサさんと戦ってみたいかな〜」


「やだよ、そんなの。瞬殺されちゃうよ」


 リアムが少し戯けると、アリサは凄い嫌そうな顔をする。


「冗談だって。でも結構果たし状届いてるんだろ?」


「そーなの。そんなに嫌われてるのかな?」


 アリサはすこし寂しそうに答える。


 それは少しでもアリサと関わりたいアホな男共の暴走故になのだが、アリサ本人は気付いていない。


 これは最近知った事なのだが、アリサは自分がアイドル扱いされていることに気付いてないらしい。


「アリサさんが可愛いからだよ」


「……え!?なんて!?もう一回言って!」


「いや、だから可愛いからだって」


「ほんと?」


「こんな嘘つく必要ないだろ?」


「そうだけど……えへへ」


 アリサが何やら顔を赤くする。


「それに俺ももう果たし状は出したからな」


「そーなの?誰に?」


「シャルロ・バラディール先生」


「!?ちょっ、何してんのリアム!流石にそれは無謀だって!進級出来なくていいの!?」


 リアムが果たし状を出した相手の名前を告げるとアリサが慌てる。


 シャルロ・バラディール。

 彼はリアムが3年に進級する時期に教師としてここへ来た。


 "剣神"の二つ名を持ち、人類最強の剣士と呼ばれ、剣において右に出るものはいない。リアムも一度だけ見かけた事があるが、一目見ただけで分かった。自分より強いと。


 いや、正確に言うと魔法もありならばリアムは負けないだろう。だが、剣の腕だけで言えば確実にシャルロの方が上だ。


 リアムはずっと戦いたかった。自分よりも上の存在を求めていたから。だが、この学園の決闘では5年生になるまで教師に仕掛ける事は出来ない。更にシャルロは帝国の騎士としての仕事もあり、あまり学園にいなかった。


 だが、今回は別だ。進級試験では果たし状を送られれば、教師でも、例え学園長でも断る事は出来ない。だからこそ、この機会にリアムはシャルロに挑む事にした。


「もし無謀だったなら、もう一回3年をやり直すさ」


「……はぁ。リアムって意外と戦闘狂だよね」


「その言い方はやめてくれ!強くなりたいだけなんだって!」


 試験は既に始まっている。進級の数ヶ月前から始まり、果たし状を送った生徒から順次闘技場で戦っていくのだ。観戦は自由参加。


 リアムの場合、シャルロがあまり学園にいない為、果たし状を送ったのは遅めになったのでもう少し先だ。



 〜〜〜〜〜



 数日後、リアムは観客席に座っていた。アリサの決闘を見るためだ。


 アリサの出番は全部見ているのだが、その数は既に20を超えている。それでもまだ半分ほどだと言うのだから恐ろしい。


 アリサは天才だ。この学園での飛び級は難しい。リアムの兄、アベルやその恋人でありリアムの担任でもあるクレアですら、飛び級は出来なかった。要するに、アリサはリアムがいなければ学園最強と言っても過言では無かったりする。


 アリサがリングに出てきた。相手の男子生徒は完全に厭らしい目でアリサを見ている。そして決闘が開始した瞬間に吹き飛ばされた。


(容赦無いな〜)


 決闘なので仕方がないのだが、瞬殺されるのを見ると少しだけ不憫に感じた。


「さて、行くか」


 そしてリアムはそう呟くとリングへ降りていった。



 〜〜〜〜〜



 リングに出ると、観客席はいっぱいだった。次の決闘を見るため、生徒だけでなく教師もほぼ全員集まっていた。そして目の前にはシャルロが立っている。


「君がリアム君かい?」


 シャルロはまだ若く、すらりとした長身だった。赤い髪を背中で纏めている。


「初めましてシャルロ先生。いえ、"剣神"シャルロ・バラディール」


「……君が戦いたいのは、"剣神"としての僕でいいってことだね?」


「はい。胸を借りさせてもらいますよ」


 それを聞きシャルロは面白そうに笑う。


「ハハハッ。いいね、君。正直、僕に挑んでくるなんてどんな命知らずかと思ってたけど……」


 そう言うとリアムの全身を眺める。


「まさか、この学園に君みたいな戦士と戦えるとは」


「戦士?」


「ああ。僕は誰だろうと、相応しいと思った相手には敬意を表す事にしてるんだ。君は今まで戦ってきたどんな相手よりも強い。そして僕の事もただの踏み台としか思っていない。だからあんなルールにしたんだろう?」


 決闘は内容が平等であれば送り手がルールを決める事ができる。


「やはり、無礼でしたでしょうか?」


「いやいや、そんな事は無いよ。確かに最初に内容を読んだ時は少し不快になったけど、君を見てそんな気持ちも消えた。本気でかかってきたまえ。僕も全力で迎え撃とう」


 そう言うとシャルロは木剣を構える。リアムも同じく木剣を構えた。


「では決闘内容を確認する!お互いに武器は木剣のみ!そして魔法の使用は禁止!どちらが場外、気絶もしくは降参する事によって決着とする!」


 審判の確認する声に会場が騒めく。この内容は剣だけで戦う事を意味している。つまり、"剣神"と呼ばれるシャルロに圧倒的に有利な決闘だ。


 流石にシャルロの圧勝だろう。誰もがそう思った。


 だが、2人はそんな雰囲気を気にしない。リアムは笑みを浮かべる。シャルロも笑みを浮かべ返す。


「始めっ!!」


 そして審判の合図が聞こえた瞬間、お互いの動きが止まった。




???「ザ・◯ールド!!」(違います)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ