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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第1章 大切なもの
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第14話 平和

 

「あの〜アリサさん?なんか機嫌悪くない?」


「なに?なんの話?別に私、機嫌悪くなんか無いよ?全然、そんなこと無いよ?」


 そう言うアリサは頰を膨らましている。その姿はとても愛らしいのだが、本人はその事に気付いていないようだ。


 クレアと墓参りに行った次の日の放課後、図書館へ行くとアリサは既に機嫌が悪かった。だがリアムには原因が分からないため、どうしようも無い。


「その、せめてなんで機嫌が悪いのかだけでも……」


「だから機嫌悪く無いって。でも、リアムって私と会うの久しぶりよね。海行った次の日からは修行でどっか行っちゃったし、学校が始まってやっと会えると思ったら居残りさせられてるし、それでその次の日も大事な用事があるとか言って会えなかったし、しかもそれを自分からじゃなくて友達から伝えてくるし。もうリアムは私と会いたくないのかと思っちゃった」


 アリサの言う通り、リアムはこの2日間の事をルークから伝えてもらった。それは早く宿題を終わらせたかったのと、早くクレアを連れて行きたかったからなのだが、それを知らないアリサがそう思ってしまうのも仕方がないかもしれない。


「そんな訳ないだろ?俺も会いたかったって。ただ、色々と事情があっただけで」


「その事情って私に話せないこと?」


「そう……かな。前にさ、いつか話すって言ってた事覚えてる?」


「強くなりたい理由?」


「そ。それにちょっと関係あることだから、今は言えない」


「……分かった。じゃあその代わりに私に会いたかったって言って?」


「はい?さっき言わなかった?」


「もう一回聞きたいの」


「はぁ。俺もアリサさんに会いたかったよ」


 リアムがそう言うと嬉しそうにデレデレした。


「うふふ。よし、じゃあ許してあげる!」


「やっぱり機嫌悪かったのかよ……」


「何か言った?」


「いえ、なんでも」


 リアムは慌てて話題を逸らした。



 〜〜〜〜〜



 そんなこんなで夏休みからは日が経ち、辺りは少しずつ寒くなっていた。


 そんな中、リアムは図書館にて絶望していた。


 復讐を果たせない。そんな可能性が出てきたからだ。理由を説明するとなると少し時間が掛かる。


 まず魔剣。リアムも持っているそれは、上級以上の悪魔が顕現する事の出来る剣だ。その個体の強さによって剣の力も変わるとされている。


 それと同じく、天剣というものも存在する。文字通り天使にだけ使える剣。これも上級天使から使えるし、魔剣の天使版と考えて問題は無い。


 そして聖剣。これは異世界から召喚された勇者にだけ使える剣で、世界に3本だけ存在している。よって同時に呼べる勇者は3人までとなっている。


 さて、その三種の特殊な剣は、それぞれに独自の能力、そして利点がある。その利点がリアムを苦しめた。


 魔王・そしてアモンを含む最上級悪魔を殺すには、天剣と聖剣が必要なのだ。つまり、魔剣しか使えないリアムにはアモンを殺す事が出来ない。


 リアムはこれを知ると絶望した。


 最初は天使や勇者を見つけて手を組もうかと思ったが、リアムは天使が嫌いだし、30年ほど前に召喚された3人の勇者は戦死、または行方不明らしい。それに、そもそもこの手段では自分の手では殺せない。


 だからリアムはアモンが自ら死にたくなるまで痛めつけようと考えた。そのためには更に力が必要だ。


 リアムは少しずつ焦りを感じていた。



 〜〜〜〜〜



「リアム、あなた最近様子が変よ?」


 クレアがリアムの顔を見てそう言った。


 今、リアムはクレアの部屋で紅茶を飲んでいる。最近はよくこうしてアベルについて話している事が増えた。だが、数日前からリアムが目に見えて元気が無い。


「いえ……実は復讐の難易度が跳ね上がりまして」


 少し前までなら殺すだけでよかった。だが、今は相手に死にたいと思わせなければならない。そもそもそんな感情があるのかも怪しいぐらいなのに。


「……。ねぇリアム。私は別に復讐に反対したりはしないわ。でも、リアムは少し焦りすぎじゃないかしら。急ぎすぎても良いことは無いわよ?もっとゆっくりと進んでも良いと思うの。まだ13歳でしょう?分かってるとは思うけど、私はあなたに死んで欲しくないのよ?」


 クレアは言い聞かせるように言う。


(ゆっくり……か。そんな事、考えた事も無かったな……。確かに今まで焦りすぎてたかもしれない。もう少し成長してからなら鍛えられる幅も広がるし、それに義姉さんの心配も分かる……)


「確かに義姉さんの言う通りかもしれませんね。もう少しだけ、落ち着くことにします」


 リアムは少し考え込むとそう答えた。


「あら?意外と素直ね」


「俺ってそんなに頑固なイメージあります?」


「何でも自分で決めて自分で行動するタイプにしか見えないわね」


「まぁ……他の誰でも無い、義姉さんの言葉ですしね」


 少し照れてそう言うと、クレアはリアムに抱き着いた。


「キャー!可愛い事言うじゃないの!こんな義弟を持てて私は幸せよ!」


「ちょっ、落ち着いてください!義弟やめますよ!?」


「ダメよ!私の唯一の癒しなのに!それにあなたから義姉さんって呼んだんだから、責任は取りなさい!」


「うっ」


 それを言われると反論出来なかった。


 2人が義姉弟の関係になってからクレアはリアムを溺愛している。かつての婚約者であるアベルの弟なのだから仕方ないかもしれないが。ちなみにクレアはリアムに奇襲を仕掛ける事は無くなった。


 授業を受け、クラスメイトとじゃれ合い、放課後はアリサやクレアと会う。


 いつの間にか定着していた、そんな平和な日常をリアムは楽しんでいる。


(俺もここに来て少しは変わったのかな)


 そんな事を考えつつ、リアムはクレアを引き剥がしにかかるのだった。




悩みは即解決。



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