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天使は謳い、悪魔は嗤う  作者: 剣玉
第1章 大切なもの
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第11話 初めての海

あまり海って感じはしないかもです。



 

「リアム。俺は今日ほどお前と出会えて良かったと思った日はないぜ」


「お前地の果てまで吹っ飛ばすぞ?」


 夏休み、海へ行くために馬車に乗っていると隣に座るルークがリアムに言った。


「だってお前、あのアリサ先輩と海に行けるんだぜ?夢みたいじゃないか」


「おいルーク、しつこい」


 さっきからルークはずっと浮かれている。そんな様子にリアムが呆れていると、


「いやいや、俺なんかまだ夢を見てるんじゃ無いかって思ってるぞ?」


 と、リアムの前に座るダニエルも続けた。


 今回海に行くに当たって大きな馬車を二代借りた。そして男子と女子で別れて乗り込んでいる。


 そしてその男子側の馬車ではずっと騒ぎっぱなしだ。そしてリアムは英雄扱いをされていた。


「よっしゃ、野郎共!リアムを胴上げだぁ!!」


「「「「「うぉ〜〜!!!」」」」」


 ルークが叫び出すとリアムは馬車の中で胴上げをされる。そしてついにリアムが切れた。


「お前ら……いい加減にしろぉ!!!」


 リアムは瞬時に10人ほどいる男子全員にスイ直伝のチョップを叩き込んで沈黙させた。その後海に着くまでの間、一言でも喋った者は例外なくチョップを受ける事になったのだった。



 〜〜〜〜〜



「でっけ〜〜!!」


 人間が住むグラム大陸と獣人が住むヴィリレタル大陸。その間に海が存在する。


 ブリル村もマグナ帝国も内陸地にあるため、リアムが海を見るのはこれが初めてだ。そしてその大きさについ叫んでしまった。


 そんなリアムを見てルークが少し嬉しそうに笑っていた。


「……なんだよ」


「いや、リアムにも年相応なところがあるんだな〜って思っただけさ」


「なに年上ぶってんだよ」


「実際年上だろ?」


「言っとくけど俺はもう13歳だぞ?誕生日は夏前だし」


「なにぃ!?生意気な!」


「なにがだよ」


 ちなみにリアムは誕生日にアリサからプレゼントを貰っている。何故かクマのぬいぐるみだった。ほんとに何故か分からないのだが、一応枕元に置いてある。


 そうしてリアムがクラスメイト達とくだらない話をしていると、水着に着替えた女子達がやってきた。男子は既に着替えている。


「おお、眼福だ!やはりアリサ先輩が1番輝いているが他の奴らも捨てがたい!俺は!楽園を見つけたぞぉ!」


 ルークが感動して涙を流しながら天を仰いでいた。


 だが、確かに楽園と言うのにふさわしい光景だった。元々A組は女子のレベルが高い。そしてそこに学園一と言われているアリサが加わっているのだから。


「ね、ねぇリアム。水着、似合ってるかな?」


 アリサはリアムに近付くとそう聞いた。アリサは白いビキニを着ている。いつもはあまり分からないが、胸はでかい方だ。


 ちなみにリアムは例によって無地の黒い海パンを履いている。


「ああ似合ってるぞ。てゆーか、一緒に買いに行ったのに聞く必要あるか?」


「もう、それでも言って欲しいのが女心ってやつなの!」


 アリサは少し膨れて言う。だが、リアムは聞いていなかった。いや、すぐ側で急に殺気が膨れ上がった事で聞く余裕が無かったのだ。


 リアムが振り向くと、そこにはリアムに向けて殺気を放つルークがいた。


「おい、リアムぅ。今のは聞き間違いかなぁ?アリサ先輩と一緒に水着を買いに行ったって聞こえたんだけどぉ?」


「怖っ!お前ら怖いわ!」


「うるさい!やっぱりそうなのか!?やっぱり2人はそういう関係なのかぁ!?」


 と、リアムに迫った。女子は女子で何やらキャーキャー騒いでいる。


「ちょっと待てって!お前らは何か勘違いしてるぞ!そもそもなんだ?そういう関係って!?」


「とぼけるな!お前アリサ先輩と付き合ってるんだろう!?」


「はぁ?付き合ってねぇよ。仲が良いだけだ」


「……ほんとだろうな?」


「ああ」


 リアムがそう言うと気が済んだのか、男子共は引いてくれた。だが、リアムが胸を撫で下ろして振り返ると今度はアリサが膨れていた。


「あ、あれ?アリサさんどーしたの?」


「別にぃ?なんでもないけど?」


 アリサはそれだけ言うと海へ歩いて行ってしまった。訳が分からずにリアムが突っ立っているとミラがリアムの隣に来て肩を叩き、


「今のはリアム君が悪い」


 と言って去っていった。その後も女子は同じような事をしていく。リアムは更に訳が分からなくなった。



 〜〜〜〜〜



「喰らえ!リアム!日頃の恨み!スーパーシュート!!!」


「何が日頃の恨みだよ!何もしてねぇだろ!ってゆーかそれは俺のセリフだ!唸れ!リアムシュート!!!」


「ぶべらっ!!?」


 飛んできたボールをリアムは打ち上げると、その場でジャンプをしてルークへ向けて叩きつける。ボールは見事腹に命中し、ルークは苦鳴を上げて吹き飛ばされていった。


「あ、リアム君それ反則だよ?一度ボールに触ったらまた相手が打ち返してくるまで触っちゃダメみたい」


「そーなの?」


 ガッツポーズを作るリアムにクラスメイトのジーナが言う。


「てゆーか、リアムシュートは無いわぁ。センス無さすぎ」


「うるせぇ!」


 続けてミラがからかうように言った。


 今、リアム達は全員で"びーちぼーる"という遊びをしている。何でも昔召喚された勇者が広めた異世界の遊びらしい。


 最初はリアムは興味が無かったのだが、ほとんど強制的に参加させられたところ、ルールは覚えられないものの楽しんでいる。


「ちくしょう!リアムにボールが当たらねぇ!」


 ルーク復活。


「これってそーゆー遊びじゃ無いよな?」


「仕方無い。あいつアホだから」


 リアムが呟くと、それを聞いていたダニエルが肩を竦めた。


「アリサさん、楽しんでる?」


「うん!これ結構しんどいけど楽しいよ」


 アリサも楽しんでくれているようで何よりだ。


「ねぇ、リアム。ちょっと飲み物買いに行きたいんだけどついて来てくれない?」


「あいよ」


 リアムはクラスメイトに一言告げてからアリサについて行く。背後から好奇と嫉妬の目線を感じたが無視した。


 2人は飲み物を買いに、これまた勇者が作ったと言われる"うみのいえ"に来た。


 リアムにはどう見ても普通の建物で"うみのちかくにたってるいえ"にしか見えないのだが違うらしい。


「はい。これでいい?」


 リアムはそこで2本のお茶を買うとその内の1本をアリサに差し出した。


「うん、ありがと。幾ら掛かった?」


「いいよ俺の奢りで。ここでお金受け取ったらなんかかっこ悪いだろ?」


「ふ〜ん。リアムにもかっこ悪いとかって感情があるんだ?」


「いや、普通にあるよ?」


「ふふっ。知ってる。ありがと」


 アリサはそう言うと素直に受け取った。


 だが、そこで終わらなかった。そのまま皆の元へ戻る途中、アリサが20歳ぐらいの男2人に絡まれたのだ。2人ともアホみたいな顔をしてアリサに言い寄る。


「ねぇ君、可愛いねぇ。俺達と一緒に遊ばない?」


「遊ぼうぜ?絶対楽しいからさぁ」


「そーそー。その男の子と遊ぶよりも絶対たのしいぜぇ?」


 リアムがこれが噂に聞くサブリミナル効果かと思いながら聞いていると、アリサはそんなリアムの背後に隠れる。そして、


「ごめんなさい」


 ただ一言だけ言った。だが男達は気にせず続ける。


「まーまーそう言わずに。な?」


「そーだよ。この男の子も遊んで来なって思ってるぜ?なぁ?」


 と、少し脅すようにリアムに言う。するとリアムも、


「いや、別に」


 と、ただ一言だけ言った。男達の額に青筋が浮かぶ。


「なぁガキ。女の前で格好つけたいのは分かるが相手は考えた方がいいぜ?」


「そーそー。痛い目見たく無いだろ?」


 ここら辺でリアムもイラついてくる。


「そろそろ黙らないと蹴り飛ばす。どけ」


「ぷっ!ぷははははは!!何言ってんだ!?お前面白いな!」


「ギャハハハハ!蹴り飛ばす?お前みたいなガキが俺達を?やれるもんならやってみろよ!!」


 リアムの堪忍袋の緒が切れた。


 リアムはまず最初に笑った男の股を足で蹴り上げた。男は20メートルほど吹っ飛び、そのまま海へ落ちる。確実に男の象徴は潰れただろう。


「俺の気分が良くて助かったな?もし俺が本気で蹴ってたら、股から頭にかけて裂けてたぞ?」


 と言いながらもう1人の男に近付く。男は真横にいた仲間が吹き飛ばされていくのを見て青ざめていた。


「ひ、まっ、待ってくれ!」


「ん?やれるもんならやって欲しいんだろ?ほら」


 そう言ってもう1人の股も蹴り上げた。リアムはその男の結末を最後まで見ずに、


「ふぅ。やっぱりゴミを掃除すると気持ちが良いな」


 と清々しい顔でそう言うと、アリサと共に立ち去った。


 そしてそれを見ていたギャラリー(男限定)は股間を押さえて震えていたのだった。



 〜〜〜〜〜



「ありがと、リアム。助けてくれて」


 アリサがリアムにくっつきながら感謝を伝える。


「まぁ流石に鬱陶しかったからな。気にしなくていいよ」


 だが、リアムの答えはあっさりしたものだった。


「もう、私は感謝してるんだから、どういたしまして、でいいのに」


「そーゆーもんか?……じゃあ、どういたしまして」


 そう答えるリアムは少しだけ照れている。そしてそんなリアムに気付いたアリサは、優しく微笑むのだった。





裂けたら面白かったのに。


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